2017年大会 エース区間2区、4区、9区について



・2区 ニャイロ選手VS一色選手


今大会の2区の区間賞候補は、山梨学大・ニャイロ選手、そして青学大・一色選手。

前シーズンの箱根、今シーズンの出雲、全日本と3回の対決はいずれもニャイロ選手が勝利しており、普通に考えれば次の箱根もニャイロ選手が区間賞を取るでしょう。



注目ポイントは、区間タイムです。

2区でレジェンドとして語り継がれる為には67分切りのタイムが必要です。

両選手の実績を見ると、

前回の2区のタイムは、ニャイロ選手67分20秒に対して一色選手67分35秒。

今シーズンの全日本8区のタイムは、ニャイロ選手56分43秒に対して一色選手57分48秒。

1万mベストタイムは、ニャイロ選手27分56秒に対して一色選手28分23秒。

すべてニャイロ選手が上回っており、特に全日本8区のタイムを見ると箱根2区の67分切りの可能性も高そうです。



以前、全日本8区と箱根2区を同シーズン内に走った選手の平均タイムから、全日本8区のタイムに1.167をかけると箱根2区のタイムを予想出来ると書きました。

このやり方で予想すると、ニャイロ選手が66分11秒、一色選手が67分27秒になります。

ただし、最近はこのやり方の問題点も感じていて、全日本8区のタイムが58分台〜59分台くらいならばそれらしいタイムが予想されるのですが、55分台〜56分台だと非現実的なほどのハイレベルな記録が予想されてしまいますが。

その辺りを考慮しても、ニャイロ選手ならば前回の経験を活かして67分を切る区間タイムは狙えそうです。



一色選手はデータ的に67分切りはやや厳しそうです。

しかし、現実の駅伝は良くも悪くもデータ通りに行かないことが多々あるので、まだわかりません。

私は、全日本8区の両選手の区間タイム、56分43秒と57分48秒の数字を見た時に、2010年の全日本8区を56分42秒で走った日大・ベンジャミン選手と、57分47秒で走った東海大・村澤選手の事が頭を過ぎりました。

このシーズンの箱根2区でこの2選手は区間賞争いを展開し、67分09秒で走ったベンジャミン選手を、66分52秒で走った村澤選手が上回り、区間賞を手にしています。

この例もあるので、ニャイロ選手が必ず勝つとは言い切れません。

過去の一色選手のペースを見ると、スタートから中盤の権太坂あたりまでをかなり抑え目に走る傾向なので、全日本8区で見せた前半から思い切り飛ばす走りで最後まで攻め続けることが出来れば、あるいは67分切り、そしてニャイロ選手のタイム次第では区間賞も狙えるかも知れません。

一色選手には村澤選手の再現を期待したいところです。





2区 68分切り3回

一色選手には67分切りとは別に、もう一つ大記録の期待がかかります。

一色選手は過去2回2区を走り、前々回は67分45秒、前回は67分35秒でした。

前半を抑え目に走る選手なので派手さはありませんが、スーパーエースクラスの68分切りをすでに2回も達成しています。



過去に68分切りを3回達成した選手は、箱根駅伝史上最強のランナーと言われたモグス選手と、20人抜きで有名なダニエル選手の2人だけです。

モグス(山梨学大) 66分04秒、66分23秒、67分29秒、68分53秒 

ダニエル(日大) 67分04秒、67分27秒、67分37秒 



日本人では、90年代に渡辺選手、00年代に伊達選手、10年代に出岐選手と服部選手が、68分切り2回を記録しています。

渡辺(早大) 66分48秒、66分54秒、68分48秒

伊達(東海大) 67分50秒、67分59秒、68分04秒

出岐(青学大) 67分26秒、67分50秒

服部(東洋大) 67分04秒、67分32秒、68分43秒



他にも順大・三代選手のベスト記録が66分46秒、セカンド記録が68分18秒、東海大・村澤選手のベスト記録が66分52秒、セカンド記録が68分08秒となっており、67分切りのベスト記録を持つ選手でもセカンド記録では68分切りが出来ないケースがあり、68分切りを複数回出す事の難しさが表れています。



チーム事情などの理由もありますが、各時代の大学長距離界の大エース達でも達成出来なかった68分切り3回の偉業。

一色選手は普通に走れば達成出来そうですので、出来れば67分切りで偉業に花を添えて欲しいです。





・4区について

前回のコース変更から12年の時を経て、今大会から4区が準エース区間とされていた頃とほぼ同じコースに戻ります。

かつてと同じようにハイレベルな区間となるのか、先行逃げ切りの考え方が強まっている現代では、1区や3区の方を重視する作戦を取るのか、各チームの動きは読めませんが、かつて駒大・藤田選手が残した60分56秒という記録に迫る選手が現れるのかを注目したいと思います。

ちなみにこの藤田選手が記録を出した年は、ライバルの順大・三代選手が2区で66分46秒を出した年であり、三代選手の大記録に発奮されていたのは間違いないところです。

実力が当時の大学長距離界の双璧だった事を考えても、4区の61分切りは2区の67分切りに匹敵する記録と言えます。

今大会からの4区は、たすきを渡す小田原中継所の中継ポイントが、2005年までと比べて微妙に違うとの情報が、陸上雑誌に載っていました。

藤田選手の記録は、正式な区間記録にはなりませんが、選手達にはこの記録に挑んで欲しいと思います。

2005年までの4区で62分切りを達成した選手は3人。

その3人の定点タイムです。



歴代1位 藤田(駒大)

二宮25分54秒

市民会館(小田原本町)51分06秒  

小田原中継所60分56秒



歴代2位 カリウキ(山梨学大)

二宮25分47秒

小田原本町51分31秒

小田原中継所61分32秒



歴代3位 小林(早大)

二宮25分47秒

市民会館(小田原本町)51分34秒

小田原中継所61分35秒



コースが短縮された2006年以降は小田原本町の定点はなくなり、今大会から復活するのかもわかりませんが、小田原本町の左に直角に曲がるポイントから、50秒を引くと以前の定点と大体同じ場所のタイムになります。

ちなみに小林選手の定点タイムは99年のテレビ放送で語られているものです。





・9区について

復路のエース区間9区ですが、今回から4区が重要区間になった為、往路に大駒が1枚多く必要になりました。

最近の箱根駅伝は先行逃げ切りの考え方が強まっているので、よほど層が厚いチーム以外は、9区まで強力な選手を温存できるチームはないかと思います。

9区に有力選手を残せるかどうかは、復路よりもむしろ往路の1区と3区にあります。

集団走になりやすい1区、コース難度が低い3区に、走力はそれ程ではなくても上手く「適材」を当てる事で大駒の使用を節約し、強力な選手を9区に使って逆転優勝や逆転トップ3入り、逆転シード圏内入りを果たす、そんな戦術を見せてくれるチームがあると面白くなるのですが。

個人的には順大、中央学大、拓大に期待しています。





「箱根駅伝の話」に戻る