２０１７年大会感想２

２０１７年大会の感想　（２）

普通の感想です

目次

①　優勝争いとタイム

 ②　１区と青学大

 ③　神奈川大・鈴木選手

 ④　青学大・一色選手

 ⑤　２区の１年生

 ⑥　４区について

 ⑦　５区の影響力の変化

 ⑧　５区の向かい風

 ⑨　山下り６区　快走する１、２年生

 ⑩　山梨学大について

 ⑪　連合チームについて

・　優勝争いとタイム

戦前に行った駅伝ＳＬＧでのシミュレーションでは１位タイムが１０時間５６分台、２位タイムが１１時間０３分台となり、去年の大会と比べてレベルの低下が予想されていた今大会ですが、現実の優勝タイムは１１時間０４分台、２位タイムにいたっては１１時間１１分台となり、予想よりもさらにレベルが下がってしまいました。

十数年前の駒大黄金時代の頃のレベルに戻ってしまったような大会でした。

１区では久々にスローペースになり有力選手がその力を発揮する事が出来ず、５区では終盤に向かい風が吹き、悪条件が重なった事もタイムの低下に拍車をかけています。

ただ、それらを考慮しても、青学大のタイムが１１時間０４分台ならば、早大等のライバルチームには付け入る隙があったと思うのですが。

青学大を追うと見られた山梨学大と早大。

山梨学大はインフルエンザの蔓延でチーム状況はガタガタだったそうで、有力選手が使えなかった１区で早々と上位から姿を消し、早大はスローペースになった１区に切り札の武田選手を使ってしまい、青学大と僅差で終わってしまったのが痛かったかと思います。

早大の相楽監督も、青学大の優勝タイムが１１時間０４分台にまで落ちるとは想定していなかったのではないでしょうか。

青学大が１１時間を切るタイムを出すと想定すると、高速レースになるのは必至。

一色選手を持つ青学大には２区で先行されて逃げ切られてしまう可能性が高いので、とにかく青学大の前に出て押さえ込む、２０１５年全日本で東洋大が行った作戦を取る必要があったでしょうから、早大が１区から武田選手を使って攻めようとしたのは当然と言えます。

結果論ですが、もし１１時間０４分をターゲットにする戦いならば、早大は戦い方を少し変えたのではないかと思います。

最終的には去年と同じ準優勝の結果を残した東洋大。

私は去年の大会の感想で、青学大と東洋大は強さは互角だった思うが速さに差があった、と書きましたが、今大会でも同じ事が言えます。

全日本のタイム差を２倍にすると約９分差に、１万ｍの平均タイム差を２０倍にすると約６分差になり、今大会でついた約７分という差は元々の両チームの走力の差が出ていたと言えます。

全日本で６位から箱根で準優勝を果たした東洋大には他の上位チームにはない強さ（安定感、実戦での強さ）が確かにありました。

しかし青学大との速さ（純粋な走力）の差は、約７分差で敗れた去年の箱根から変わる事はありませんでした。

青学大が最も警戒していた東海大。

東海大といえば、データでは戦力が高いのに実戦になるとちょっと弱くなる傾向のチーム。

しかし、２区の日本人１年生ランキングで１位と２位を占め、、現役の川端選手も５位に入り、さらには９９年と０３年では１年生で５区で区間賞を獲得した選手を排出するなど、１年生が大活躍する傾向のチームでもあります。

２区と５区を中心に大物ルーキーを多数起用して、期待された今大会では、残念ながら悪い方の傾向が強く出てしまいました。

今大会では１０位の成績に終わりましたが、チームの潜在能力が凄まじいのは言うまでもない事。お世辞抜きで来年以降が本当に楽しみなチームですね。

・　１区と青学大

今年は１区である程度勝負がついてしまいましたね。

１万ｍのタイムは中々（２８分５２秒）だけど実績のない梶谷選手を使った青学大に対して、ライバルの早大はチーム内でも１、２を争う実力者である武田選手を投入。

武田選手はハーフマラソン６１分台ランナーであり、これは１万ｍならば２８分３０秒を切ってもおかしくない実力です。

しかし、流石の武田選手も１区で自らが先頭を引き続けてペースメイクする事は出来ませんでした。

基本的に前を引くのは不利であり、誰も損な役割はしたくない。

また、早大と上位を争う他チームの１区には東洋大のエース服部選手がいた為、服部選手を意識して前を引き辛かった、という事情もあったかも知れません。

その服部選手もハイペースで押していくよりは、ラストスパートで仕留めるタイプ。

選手のタイプ、実力差、チーム事情が複雑に絡んで、集団はスローペースのまま進まざるを得ない状態に。

結局１区は終盤までペースは上がらず、タイム差のつきにくい展開となり、切り札を投入した早大は、青学大に対して１秒のリードを稼ぐだけに終わりました。

青学大にしてみれば、スローペースを利用して、格上の選手を相手にほぼ引き分けに持ち込む事が出来ました。

優勝候補筆頭の青学大が、全日本２位の最大のライバルである早大に対して１区でさらに優位に立つ事が出来、更に全日本３位の山梨学大が予定していたエース格の佐藤選手を使う事が出来ず、代役の選手がブレーキを起こした事もあり、今大会の優勝争いは事実上ここで決まってしまった感があります。

去年は青学大・久保田選手が１区で強烈なスパートでライバル達を沈めるという、攻めの走りを見せましたが、今大会では守りの走りで優位に立つという結果でした。

今回と似たようなレース展開は過去にもありました。

もう１５年も前ですが、０２年大会で、「１強」と言われた駒大に１区に予定していたエース級の内田選手（１万ｍ２８分３５秒）を使えないという事態が発生しました。

代わりに出場したのは内田選手と比べれば走力の劣る北浦選手（１万ｍ２９分０３秒）。

打倒駒大を目指すチームは、王者が見せた隙を突いて全力で攻めると思いきや、誰も集団を引かず、スローペースに陥ります。

結局、駒大の１区は区間１３位の成績だったものの、スローペースの影響でトップとのタイム差はわずか２８秒。

その後、往路２位につけた駒大は復路でライバルたちをあっさり突き放し、軽々と総合優勝を達成しました。

今大会でも０２年大会でも、集団のペースが上がった方が得をするチームがあったのは明らかですが、それでもペースが上がらなかったというのがポイントです。

それだけ自らが先頭を引き続けるのはリスクが高いし、攻めどころの少ない１区では勝負をかけるのは難しい。

だからといってそこそこの選手を使って無難に行こうとすると強力な選手に逃げられる危険性があるのが１区です。

今大会の梶谷選手と前回大会の久保田選手の結果には１区の難しさが現れている気がします。

そんな難しい１区で２大会連続の大成功という結果を残した原監督はやはり凄いとしか言いようがありません。

また、青学大の１区、２区、３区は、テレビで見た時のパッと見の印象と、実際にレースに与えた影響の順位が逆になっている気がするのが面白いです。

３区でトップを奪った青学大・秋山選手が優勝の最大の立役者のように見えますが、抜いた神奈川大は優勝候補ではないので、２区で神奈川大とのトップ争いに敗れたものの早大や東洋大を大きく引き離した一色選手の方が優勝への貢献度は上かと思います。

そして１区でひたすら守りの走りに徹した梶谷選手の方がもっと優勝争いに大きな影響を与えた気がするからです。

・　神奈川大・鈴木選手

私がたまにやるマニアックな駅伝の鑑賞方法を紹介します。

注目選手がスタートすると同時に過去の名選手の録画を再生し、同時スタートをさせて比較しながら鑑賞するのです。

今大会の２区では、青学大・一色選手と去年の大会で６７分０４秒を出した東洋大・服部勇馬選手を対決させました。

しかし、一色選手の引く先頭集団はペースがそれほど上がらず、後半には鈴木選手が一色選手を引き離し、予想外に比較対象が鈴木選手になってしまいました。

テレビ画面上の距離では、先行する去年の服部選手と、その後方の今年の一色選手等のトップグループとの差は、４ｋｍ過ぎで約５０ｍ、７ｋｍ過ぎで約１００ｍ、１４ｋｍ過ぎで約２２０ｍと、どんどん開いていきましたが、比較対象が鈴木選手にチェンジしてからは、１８ｋｍ過ぎで約１６０ｍ、２２ｋｍ過ぎで約８０ｍと逆に詰まっていきました。

なかなか見ごたえのある時空を超えた対決でした。

鈴木選手は箱根予選会のタイムから、６７分４０秒～５０秒台くらいは狙えるかもしれないと思っていましたが、それよりもワンランク上のタイムを叩き出して、一色選手と他に留学生４人をまとめて撃破。

区間タイム６７分１７秒は、これはもはや６７分前後というくくりで考えられるレベルで、過去の６７分切りのレジェンド達とも互角に近い記録です。

このレベルに到達した選手に来シーズンがあるのはとてもワクワクします。

６６分４８秒を３年生の時に出した早大・渡辺選手や、６６分５２秒を２年生の時に出した東海大・村澤選手以来の大物の登場ではないでしょうか。

かつて同じようなレベルの選手を大量に揃えて総合力で勝負するチームカラーだった神奈川大は、どこ切っても同じ顔の金太郎飴チームと言われていましたが、その神奈川大にこれほど飛び抜けたスーパーエースが登場してきたのは面白いです。

来シーズンの大学長距離界の主役としての期待がかかる鈴木選手。

２８分３０秒という控えめな１万ｍのベストタイムの更新や、まだ出場が確定していないけど全日本大学駅伝ではどこの区間をどれくらいのタイムで走ってくれるのか、来年の箱根２区では日本人最高記録６６分４６秒にどこまで迫れるのか、そして超えられるのか、１年を通じて今後の鈴木選手の動向に注目していきたいと思います。

・　青学大・一色選手

今大会日本人選手では最強と目されていた青学大・一色選手。

前年よりもタイムを落として、今年も区間３位に終わり、２区で３年連続区間３位でしたが、区間タイムは６７分５６秒を記録し、３年連続の６８分切りを達成しました。

過去２年６８分を切り続けた一色選手ならば今年も６８分切りは余裕かと思ったのですが、かなり苦しみながらの達成で、６８分を切り続ける事の難しさを改めて感じました。

過去に６７分切りを達成した日本人選手は３人、６８分切り２回を達成した日本人選手は一色選手本人を除けば４人います。

６７分切り１回と、６８分切り２回は記録の難度で言えば近いものがあります。

そして６８分切り３回ともなると達成した日本人選手は過去には１人もいません。

つまり６７分を１回切るよりも、６８分を３回切る方が記録の難度は上と言えます。

一色選手は箱根駅伝の歴史に残るレベルの「区間賞のない名選手」でした。

・　２区の１年生

創価大・ムイル選手が１年生歴代５位の６８分０５秒で走破。

「ケニア出身の我々の使命は与えられた区間で１秒でも早く走る事が大事なんだ」と、プロフェッショナルなコメントが紹介されていたムイル選手ですが、この選手は他の留学生とはちょっと違う印象を持ちました。

箱根予選会でも他の留学生が前半から飛ばしたのに対して、ムイル選手だけは前半はじっくりとレースを進めて、後半に勝負をかける１年生らしからぬ渋い走りを見せていました。

初挑戦した２区の難コースでもそのクレバーさは健在で、しっかりと前半は抑えて、権太坂～戸塚中継所の間を２３分１７秒で駆け抜け、これは４人の留学生の中で最速のペースでした。

ちなみに、０９年大会で日大・ダニエル選手が６７分０４秒で走った時の権太坂～戸塚中継所のタイムが２３分１３秒。１１年大会で日大・ベンジャミン選手が６７分０９秒を出した時は２３分０７秒でした。

今大会のムイル選手は、権太坂以降に目標となる選手が多くてペースを維持しやすかった影響もあったとは思いますが、権太坂以降だけを見れば６７分一桁の過去の超強豪留学生選手ともほぼ互角のペースでした。

最終的な区間タイムでも格上と思われた山梨学大・ニャイロ選手と日大・ワンブィ選手を上回り、６８分０５秒というタイム以上に、走りの上手さが印象的でした。

これだけしっかりとレースを組み立てられる選手ならば、５区を走っても面白そうですね。

ペース配分を間違えやすいニャイロ選手、ロードにいまいち弱いワンブィ選手が最難関区間の５区を走ったら撃沈するイメージが強いですが、ムイル選手ならばスイスイ走り切ってしまうような気がします。

上りが苦手でなくて、他に前半区間をしっかりと走れる選手を揃える事が出来れば、という条件付きですが。

ムイル選手には大きなタイム差をつけられましたが日本人１年生も好走していました。

東海大・關選手が６９分３３秒、中央学大・高砂選手が６９分５０秒を出し、同じ年の大会での日本人１年生２人による２区７０分切りを達成しています。これは史上初でした。

１位　伊達（東海大）　６８分０４秒　２００５年

２位　村澤（東海大）　６８分０８秒　２０１０年

３位　設楽（東洋大）　６８分０９秒　２０１１年　

４位　塩尻（順大）　６８分３０秒　２０１６年

５位　川端（東海大）　６８分３２秒　２０１５年

６位　渡辺（早大）　６８分４８秒　１９９３年

７位　村山（駒大）　６９分０４秒　２０１２年

８位　關（東海大）　６９分３３秒　２０１７年

９位　高砂（中央学大）６９分５０秒　２０１７年

10位　松田（中大）　６９分５３秒　１９９４年

11位　竹澤（早大）　６９分５５秒　２００６年

12位　宇賀地（駒大）　６９分５６秒　２００７年

日本人１年生記録の上位には現在は６８分一桁の記録を出した選手が３人もおり、６９分台では好記録と認識されていない傾向を感じます。

關選手と高砂選手を褒めている記事はネットでも雑誌でもほとんど見ませんでした。唯一褒めていたのは陸上競技マガジンだけでしょうか。

確かに、レベルの高い最近の２区では６９分台では区間下位になってしまうケースも多く、実際に今大会の關選手は上位争いから脱落し、チームがシード争いに巻き込まれる原因になってしまいました。

全日本の４区を４１分ジャストで走った高砂選手ならば６９分前後、そして世代ナンバーワンと言われる關選手ならばさらに上のレベルの記録を狙っていたと思います。

力を出し切れず、チーム順位を下げたのは事実でしょうけど、しかしそれは周囲のレベルが高かったというだけで、６９分台の記録のレベルが低いからではないと思います。

今年の４区の区間賞は６３分台でしたが、私は長年箱根駅伝を見ていますが、２区の６９分台は４区の６３分台と同じくらいのレベルの記録と感じています。

關選手と高砂選手は、もしも走った区間が４区だったら区間賞争いをしていた可能性もあったでしょう。

過去の日本人１年生６９分台ランナー達がその後、竹澤選手が在学中にオリンピック代表選出、村山選手と宇賀地選手が卒業後に世界陸上代表選出、松田選手が卒業後にマラソンでサブテン達成と、例外なく全員が日本トップクラスに成長したという事実もあります。

關選手と高砂選手は十分に胸を張って良い記録だと思います。

・　４区について

今大会で最も注目を集めたポイントは４区５区の延長／短縮だと思いますが、準エース区間とされていた当時と同じコースに復活を果たした４区には、去年と比べればレベルの高い選手が出場したものの、チーム事情もあってか、思った程のレベルではありませんでした。

区間賞のタイムは６２分前後を期待していたのですが。

０５年大会前には区間賞は６３分切りのタイムが当たり前でしたが、今大会では区間賞のタイムは６３分オーバーとなり、先頭を独走し区間２位の青学大・森田選手も、１ｋｍ３分のイーブンペースを維持して淡々と走ったという感じで、気象条件があまり良くなかった影響もあるとは思いますが、今大会の４区は「第２の勝負どころ」と言われていた以前のような迫力はありませんでした。

区間上位と下位でかなりのタイム差が開いていましたが、これは４区が大差のつきやすい区間だからというよりは、有力選手を配置できたチームと出来なかったチームの差と言えます。

それでも１区、３区よりは差がつきやすいのは確実ですから、出来れば４区に有力選手を置きたいと考えるチームは多いでしょうけど、４区を重視すると、今度は手薄になった１区、３区で抜け出そうとするチームが出てくるのも確実です。

層の厚いチーム以外は４区重視への転換は難しいかも知れない、と今大会の１区～４区を見て感じました。

序盤での主導権の奪い合いが年々激しくなる現在の箱根駅伝においては、４区よりも１区、３区の方が大事なのかも知れません。

１区のスローペースが確実視されている大会ではこの限りではありませんが。

・　５区の影響力の変化

今大会から短縮された５区ですが、新たな山の神こそ出現しませんでしたが、今大会を見た限りでは影響力は去年までと同じくらいだったかと思います。

その根拠になるのが、過去５大会と今大会の区間３位と区間１０位の差です。

今大会　２分２６秒差

１６年　３分０７秒差
１５年　１分５８秒差
１４年　１分５７秒差
１３年　２分１１秒差
１２年　２分３８秒差

２３ｋｍ超だった去年までと比べて差のつきやすさに目立った変化はありませんでした。

なぜ区間１位や区間下位を含めないのかについては、区間下位を含めると体調不良などで大ブレーキを起こした選手も入ってしまうし、区間１位を含めると、大差がついたケースが、山の神がいたから大差がついたのか、コースが２３ｋｍ超だから大差がついたのか、判断できません。

去年と一昨年の大会では区間２位以内にケニア人留学生が入っていたので、公平に比較するためには区間３位と１０位の差で行うのが良いかと思います。

・　５区の向かい風

前回と同じく、今大会でも５区で部分的な向かい風が吹いていました。

１５ｋｍ過ぎの芦之湯辺りでかなりの風が吹いている様子がテレビを通じてわかりますが、タイムに影響を与えるほどの強さで吹いたのは、１５ｋｍ～１９ｋｍ辺りと、芦ノ湖のゴール付近でしょうか。

コース中盤まではテレビではそれほど強い風には見えず、風がどれだけタイムに影響を与えたのかがわかりづらいです。

区間タイムのレベルはやや低く、区間賞の駒大・大塚選手の走力と７２分４６秒という区間タイムを考えると、１分くらいは風の影響がありそうな気がしますが、芦之湯周辺だけの数ｋｍの間だけ風が吹いただけで１分の影響はないでしょうから、テレビで見えていない部分でも風を受けながら走っていたのかも知れません。

区間中位辺りの選手のタイムを見ても、やはりレベルの低下を感じます。

区間２位で８人抜きの大活躍を見せた上武大・森田選手は７２分４９秒で走破。

上武大の近藤監督は現役時代に神奈川大の選手として５区を走り、ベストタイムは９６年大会の７１分５９秒でした。

森田選手は向かい風さえなければ恩師のベストタイムを超えたかも知れません。

また、近藤監督のベストランは区間賞を獲得した９７年大会の走りと言えます。

この時には区間２位には中大の実力者である尾方選手が入ったのでタイム差は４４秒差でしたが、区間３位には２分４７秒差がついています。９０年代の山の神と呼べそうな走りでした。

しかし強い向かい風の影響でタイムは７３分３１秒に留まっています。

箱根山の自然はこの師弟に厳しいようです。

余談ですが、今シーズンは全日本大学駅伝でも５区だけ区間タイムのレベルが低下していました。

呪われた５区のシーズンでしょうか。

・　山下り６区　快走する１、２年生

山下りの主役、日体大・秋山選手についてはマニアック編に書いてあります。

青学大・小野田選手、去年よりはタイムを少し落としたものの、２年連続５９分切りを達成。

前人未到の４年連続５９分切りにまた一歩近づきました。

来年は、秋山選手も達成できなかった夢の５８分切りに期待したいです。

昨年、小野田選手と共に１年生５９分切りを記録した中央学大・樋口選手は今年は１分以上タイムを落としましたが、それでも６０分切りは達成。

４年連続５９分切りは達成できずも、４年連続６０分切りはまだ狙えます。

そして、今大会最大のサプライズと言えるのが、５８分５２秒を記録した法大・佐藤選手。

去年、小野田選手と樋口選手により１年生としては初めて５９分の壁が破られましたが、佐藤選手は早くも３例目の１年生５８分台を記録しました。

小野田選手が今シーズンの全日本では区間賞を獲得し、樋口選手は去年のシーズンの全日本ではエース区間を任されるなど、１例目、２例目の２人は平地でも優秀なのに対して、佐藤選手は１万ｍの持ちタイムは３０分オーバー、ハーフマラソンの持ちタイムはなし、箱根予選会にはメンバーにすら選ばれずと、平地での実績はほぼゼロです。

まさに下りの適性だけで走り切ったようです。

他には、東海大・中島選手が５９分５６秒で走り切り、見事に１年生６０分切りを達成。

これで、４年連続５９分切りに挑む資格を持つのが小野田選手と佐藤選手、４年連続６０分切りに挑む資格を持つのが前述の２人に加えて樋口選手と中島選手。

４年連続５９分切りを達成した選手は箱根駅伝の歴史上１人もなく、４年連続６０分切りでも達成者は過去２人だけです。

同じレベルを維持するのは簡単な事ではありませんが、この２大会の尋常ではないレベルの１、２年生達には、２、３年後の偉業達成に期待してしまいます。

他にも、拓大の２年生馬場選手が５９分５５秒、帝京大の２年生横井選手が６０分ジャスト、順大の１年生橋本選手が６０分１３秒で走っており、現在の６区の１、２年生は下りの才能の百科繚乱です。

去年の大会、今大会と急激に熱くなってきた山下りの６区は、主役の秋山選手の卒業後もハイレベルな戦いが期待できそうです。

・　山梨学大について

山梨学大の大失速は、去年の明大以上に衝撃的でした。

上田監督は１区がスローペースになる事が予想される大会でも有力選手を投入する作戦を過去に取っていたので、無名の伊藤選手が１区を走る事が決まった時には、かなりまずいのではないかと思ったのですが、それが的中してしまいました。

超スローペースで始まった１区の展開に、伊藤選手を使ったのはむしろ当たりだったのではと思った矢先、集団のペースアップが始まり伊藤選手はあっさり遅れてしまいました。

序盤で最下位に落ちたことと、元々良くなかったチーム状態が重なり、２区以降も負の連鎖に巻き込まれてしまいました。

青学大を倒せるとしたら山梨学大だけだと思っていたので、大手町のゴールに最終ランナーとしてたどり着く姿には、切ない物を感じました。

大会１週間前から部内でインフルエンザが蔓延していたとの事で、戦う以前の問題だったのでしょう。

体調管理も勝負のうちとはいえ、運が悪かったのも事実かと思います。

ニャイロ選手、上田選手ら有力選手は来年も残るので、次回こそは万全の体調で挑み、箱根路の前半を引っ掻き回すいつもの山梨学大の走りを見せて欲しいと思います。

・　連合チーム

いつか起こると思った悲劇がついに起きてしまいました。

出場３回目の関東学生連合チーム。１０区を走った照井選手がついに区間最速の走りを披露。幻の区間賞となりました。

区間１位相当なのに区間賞をもらえないなんて、悲劇としか言いようがないです。

チームが途中棄権後の幻の区間賞ならば、そのチームの責任ですから（選手は納得いかないでしょうけど）まだ仕方ないと言えますが、スタートラインにつく前から決められているのはどうなんでしょうかね。

今大会の３区で最下位２０位の２分近い後方で２１番目にスタートし、区間２位相当の走りをする「強さ」を見せた平賀選手といい、レベルの高い走りが公式の参加ではないというのはもったいないと思います。

だからと言って、チームがオープン参加のまま、区間順位だけ公式に認めるのは大反対です。

選手にとって栄光の箱根駅伝区間賞が、公式に参加していないチームの選手によって阻まれるなんてあってはならない事だと思います。

０４年大会で東海大の中井選手が、５区でオープン参加ながら区間順位は公式に認められる日本学連選抜の鐘ヶ江選手に敗れて区間２位になるという出来事がありました。

０７年大会～１３年大会まで参加していた学連選抜チームはチーム順位も区間順位も公式に認められていたので、現在の学生連合チームもその形にすれば良いだけだと思うのですが。

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