2019年大会 2区について



・ 最近の2区


最近は2区で毎年似たようなパターンが繰り返されています。

14年大会以降、2区では67分切りが期待される選手が毎年います。

15年大会からは、期待されている4年生選手が67分切りならず→しかし3年生以下の新星が現れる、というパターンが続いています。

2区で67分切りが期待されるというのは、平地区間では箱根史上トップクラスの力があるという意味になります。

達成こそされていませんが、そういうレベルの選手が毎年2区を走っているというのは、近年の大学長距離のレベルアップの象徴と感じます。

14年大会〜18年大会の2区を振り返ると、



14年大会 駒大の3年生・村山選手は全日本4区で桁外れの強さを見せ、箱根でも2区での爆走も期待されていました。

しかし箱根では爆走はならず。



15年大会 4年生になった村山選手が2区に最後のチャレンジ→67分切り達成ならず。

しかし東洋大の3年生・服部勇馬選手が67分32秒を記録して区間賞を獲得。



16年大会 4年生になった服部選手が2区に最後のチャレンジ→67分切り達成ならず。

しかし青学大の3年生・一色選手が67分35秒を記録します。一色選手はこの前年も67分45秒の記録を出しており、非常にレベルの高い選手。翌年が期待されました。



17年大会 4年生になった一色選手が2区に最後のチャレンジ→67分切り達成ならず。

しかし神奈川大の3年生・鈴木選手が67分17秒で区間賞を獲得。



18年大会 4年生になった鈴木選手が2区に最後のチャレンジ→67分切り達成ならず。

しかし青学大の3年生・森田選手が67分15秒で区間賞を獲得。さらに東洋大の2年生・相澤選手も67分18秒で区間3位(日本人2位)の成績を残す。



惜しいところまでは行きますが、日本人が過去3人しか達成出来ていない66分台は、やはりそう簡単には出る記録ではないです。

しかし前回の18年大会がそれまでと違ったのは新星が2人出てきたという点です。

今大会では67分切りを達成して欲しいと思います。



・ 青学大・森田選手 東洋大・相澤選手

4連覇の青学大のエース森田選手と、3年連続2位の東洋大のエース相澤選手。

前回は67分切りまで十数秒に迫った、優勝候補トップ2のエース対決です。

1万mのタイムは、前回の箱根の時点では、両者とも28分44秒で互角。

相澤選手は今シーズンは28分17秒まで記録を伸ばし、前回の箱根の区間タイムに見合うレベルに近づいてきている気がしますが、森田選手はそのままです。

もちろん森田選手も28分44秒が真の実力ではないのは明らかですけど。



両者とも11月の全日本では終盤の重要区間に登場しましたが、森田選手が7区、相澤選手が8区で直接対決にはなりませんでした。

森田選手は7区17.6kmを51分36秒で走り区間2位、相澤選手は8区19.7kmを58分23秒で走り区間1位の成績を残しています。

今シーズンから新しくなった7区はまだ駅伝ファンに馴染みがなく、タイムの価値が判りづらいので、森田選手のタイムを8区19.7kmの距離に換算してみると57分45秒になります。

距離が長くなるとペースが落ちる事や、8区の終盤の上りも考慮すれば、両選手の全日本の区間タイムの価値は同じくらいかも知れません。

前シーズンまでの神奈川大のエースだった鈴木選手が、3年生箱根2区67分17秒→4年生全日本8区57分24秒→4年生箱根2区67分26秒という記録を残しており、前回の箱根では鈴木選手に勝っている両選手は、今シーズンではまだ真の実力は見せていないと感じます。



両選手とも元のレベルが高いので、特に今シーズンで走力を伸ばしたという気はしませんが、体調やレース展開が良い方に転べば、前回と同じ力でもタイムを十数秒伸ばす事は十分に考えられます。

ただし優勝候補のNo.1の青学大のエースと、No.2の東洋大のエースの対決なので、チームの優勝争いが何よりも大事な勝負です。

チーム力に勝る青学大のエースである森田選手にしてみれば、相澤選手と近い位置でスタートした場合は、とりあえず相澤選手について行って離されさえしなければ、東洋大の大駒を1枚潰す事が出来ます。それだけで青学大は優勝に1歩近づけます。

楽な気持ちで走れる森田選手の方が直接対決では有利でしょう。

しかし積極的に攻めなければいけない相澤選手の方が67分切りは期待できるかも知れません。



・ 順大・塩尻選手

1年生の時からチームを支え続けている順大の大エースも今年が最後の箱根です。

前回の箱根では1万m日本人学生歴代4位の27分47秒の走力を持って花の2区に挑んだ塩尻選手。

「2区史上最速」の日本人選手として期待されました。(歴代トップ3の選手はそのタイムを出した後2区を走っていない)

1、2年生の時は1万mの持ちタイム28分32秒で68分30秒、68分06秒のタイムを記録し、本番できっちりと力を出せる選手というイメージでしたが、1万m27分台のタイムを持って挑んだ前回では69分26秒という意外な走りに終わりました。

最後の箱根で今度こそしっかりと力を出し尽くす走りを期待したいです。

塩尻選手が本来の力を発揮出来れば、67分切りは当然狙えるでしょう。



塩尻選手には、69分切り3回と4年連続70分切りの期待もかかります。

69分切り3回という記録は地味ですが、前回の塩尻選手のまさかの失速が示しているように、簡単そうに見えて決してそうではありません。

4年連続70分切りについては更に地味ですが、35年続く現在の2区の歴史の中でも日本人の達成者は07年大会〜10年大会で活躍した駒大・宇賀地選手だけです。

67分切りを1回以上達成した日本人選手は過去に3人いるので、実は67分切りよりも4年連続70分切りの方が日本人の達成者は少ないです。



・ 明大・阿部選手

今シーズンに1万m27分56秒を記録した阿部選手。

陸上雑誌の情報によると、2区以外を希望しているようですが、もし2区に出るならば走力的には67分切りが出来てもおかしくはありません。

1万mの日本人学生歴代記録を見ると、歴代の上位選手たちは、2区で快走を見せた後に27分台を出しその後は2区に出場しなかったり、27分台を出した後に2区に出場したが力を出し切れなかったり、4年間を通じて2区に出場しなかったりと、どうも1万m27分台ランナーは花の2区とは縁がないというか、相性が悪い気がします。

阿部選手と塩尻選手には、これが27分台の力だ!という所を見せて欲しいと思います。

それと、2区で塩尻選手と激突すれば、2区史上初の日本人学生による27分台対決になります。

2009年大会で、早大・竹澤選手と東海大・佐藤選手の27分台対決がありましたが、舞台は3区でした。



ただ阿部選手のこれまでの実績、「1万m27分台の記録を持ち、全日本のMVP獲得経験もある」というのは明大の先輩である横手選手と同じ。

その横手選手が1万m27分台を出した後に走ったのは1区でした。

そして、今シーズンの明大は全日本では1区で出遅れています。つまり箱根の1区が不安。

どうも阿部選手に横手選手がダブって、1区を走る姿を想像してしまいます。



・ 東海大・阪口選手

前回のシーズンでは、1万mやハーフマラソン、全日本出場経験など重要なデータがほとんどないのに、15kmレースで大爆走した経験を持つ謎のランナーとして2区に出場した阪口選手。

結果は68分55秒という意外と「普通の好記録」。

今年は故障が長引いていたそうで、去年に続いてまた、あまりデータのない選手という状態ですが、11月の上尾ハーフで62分32秒という好記録をマークして復活傾向。

今のところは普通のエース級選手。しかしこのまま小さくまとまっている選手ではないでしょう。

完全復活して今度こそベールを脱いで欲しいところです。



・ 山梨学大・ニャイロ選手

山梨学大の4年生・ニャイロ選手は前回青学大・森田選手と同タイムで区間賞を分けあった選手。

しかし2区の自己ベストタイムである67分15秒を記録した前回と比べて、今シーズンは不調で、前回よりもタイムを伸ばすのは厳しそうです。

1、2年時に全日本8区で56分台を連発したニャイロ選手は、箱根2区ならば66分30秒〜40秒くらいが出ても不思議ではないポテンシャルを持っていると感じましたが、コースとの相性なのか、67分切りは1度も達成出来ていませんでした。

ニャイロ選手と森田選手がどちらも2区に出場した場合、2区の区間賞獲得経験者同士が2区でぶつかり合うことになります。

35年の歴史を持つ現行の2区でも、過去には94年大会の山梨学大・マヤカ選手VS順大・本川選手、96年大会の早大・渡辺選手VS山梨学大・マヤカ選手、16年大会の東洋大・服部選手VS早大・高田選手の3例しかありません。

ニャイロ選手が万全ではなくとも注目の対決です。



・ 日大・ワンブィ選手

ワンブィ選手は全日本では7区を走り、区間2位の森田選手に1分以上の差をつける50分21秒の記録を出しています。

これは8区に換算すると56分21秒になります。

8区に上りがある事や、距離が長くなってペース落ちる分を考慮しても57分切りは狙えるタイムだと思います。

ワンブィ選手は今大会の2区区間賞候補筆頭と言って良いでしょう。

元々10km辺りまでのスピードは最強の選手でしたが、20km級の距離でも力を発揮してきました。

ただ20kmから2kmちょっと短い17.6kmの全日本7区と、3kmあまり長い23.1kmの箱根2区では、一見距離が近いようで結構違うとも言えます。

スタミナ面がちょっと心配ではありますが。



・ ペース配分

ペース配分については去年の2区の記事に詳しく書きましたが、67分切りや日本人最高記録を狙うペースは、

67分ペース
横浜駅前 23分12秒
権太坂 43分50秒 (横浜駅前から20分38秒)
戸塚中継所 67分00秒 (権太坂から23分10秒)

日本人最高記録ペース
横浜駅前 23分07秒
権太坂 43分41秒 (横浜駅前から20分34秒)
戸塚中継所 66分46秒 (権太坂から23分05秒)

大体こんな感じだと思います。

ポイントは横浜駅前までの序盤のペースだと思います。

中盤や終盤に極端なペースアップが出来る選手はそうはいないでしょうから、上記のペースから10秒も遅れたら取り戻すのは厳しいと思います。





森田選手VS相澤選手の優勝候補トップ2のエース対決

塩尻選手VS阿部選手の1万m27分台対決

森田選手VSニャイロ選手の2区区間賞獲得経験者同士の対決

今大会のエース区間は注目対決が目白押しになりそうです。

区間上位5人の平均タイム最高記録は、前回の67分25秒40です。

たった1年で更新される可能性もありそうですね。





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