2019年大会の感想 (1)

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区間新記録と日本人最高記録を合わせて6区間で新記録が誕生し、2区と4区では20年間破られなかった記録を上回り、3区では「考え方によっては」日本人選手の箱根駅伝史上最速の走りが出ました。

史上初の2区66分台対決や、現行の距離では初の山下り58分切りの記録も誕生し、総合タイムでは11時間切りを最多の3チームが達成し、シード獲得の10位のラインが11時間10分切りにまで上昇し、通常の大会ならば最下位になる20位が11時間20分を切りました。

まさに空前絶後の記録ずくめの大会でした。

今回はいつもよりも増量して語りました。



まずは大会前に発表した駅伝SLGによるシミュレーションタイムとの比較です

上段 シミュレーション
下段 現実



東海大
11時間00分31秒
10時間52分09秒
−8分22秒



青学大
10時間55分43秒
10時間55分50秒
+7秒



東洋大
10時間58分07秒
10時間58分03秒
−4秒



駒大
10時間59分01秒
11時間01分05秒
+2分04秒



帝京大
11時間01分31秒
11時間03分10秒
+1分39秒



法大
11時間07分56秒
11時間03分57秒
−3分59秒



國學院大
11時間09分18秒
11時間05分32秒
−3分46秒



順大
11時間06分39秒
11時間08分35秒
+1分56秒



拓大
11時間07分52秒
11時間09分10秒
+1分18秒



中央学大
11時間12分11秒
11時間09分23秒
−2分48秒



中大
11時間11分12秒
11時間10分39秒
−33秒



早大
11時間09分18秒
11時間10分39秒
+1分21秒



日体大
11時間15分59秒
11時間12分17秒
−3分42秒



日大
11時間14分15秒
11時間13分25秒
−50秒



東京国際大
11時間16分05秒
11時間14分42秒
+1分23秒



神奈川大
11時間13分11秒
11時間15分51秒
+2分40秒



明大
11時間08分06秒
11時間16分42秒
+8分36秒



国士大
11時間16分56秒
11時間17分27秒
+31秒



大東大
11時間16分09秒
11時間19分48秒
+3分39秒



城西大
11時間10分06秒
11時間19分57秒
+9分51秒



山梨学大
11時間16分08秒
11時間24分49秒
+8分41秒



上武大
11時間24分38秒
11時間31分14秒
+6分36秒





10時間52分09秒のタイムで初優勝した東海大が凄かったですね。

タイムの伸び幅も全チームで最大の−8分22秒となっています。

東海大は至近3大会のシミュレーションと現実との差は+7分53秒、+9分20秒、+8分25秒となっていて、箱根駅伝仕様の調整をしたと報じられていた今大会では、これまでとは正反対の結果となりました。

11時間前後のハイレベルなタイムが予想されているチームが更にそこから8分もタイムを伸ばすとは本当に凄まじいです。



10時間55分切りは現在のコースと距離の近い別コースで過去4例あります。

12年大会 東洋大 10時間51分36秒 (3区からトップ) シミュレーション10時間58分59秒 −7分23秒

14年大会 東洋大 10時間52分51秒 (3区からトップ) シミュレーション11時間00分45秒 −7分54秒

15年大会 青学大 10時間49分27秒 (5区からトップ) シミュレーション11時間02分32秒 −13分05秒

16年大会 青学大 10時間53分25秒 (1区からトップ) シミュレーション10時間48分28秒 +4分57秒



16年大会の青学大のシミュレーションタイムは前年の実績が強く反映された影響がありますが、55分切りを達成するチームはシミュレーションから爆発的にタイムを伸ばすケースは多いです。

これらのケースは最低でも5区までには単独トップに立ち往路優勝をして、復路は独走しています。

駅伝では追いかける立場はつらく、早めにトップに立って「トップ効果」を得たいと考えるチームが多いです。

私はタイムを爆発的に伸ばし55分切りまで到達するには、最低でも復路をすべてトップ効果を受けながら走る事が条件だと思っていたので、今大会の東海大は衝撃的な結果でした。

東海大がトップに立ったのは8区の終盤からで、トップ効果は2区間ちょっとでしたから。

前方にいるライバルを粘り強く追い続けてこのタイムですから、尋常ではない強さでした。

速いけど脆い、的なイメージだった東海大がそれをやったというのが更に衝撃的でした。

箱根仕様の調整おそるべしです。



10時間55分切りも今大会の東海大を加えて5例目となり、それほど珍しい記録でもなくなってしまいました。

12年大会で東洋大が51分台を出した時には、5区を走った柏原選手が大きくタイムを稼いでいた事と、柏原選手並みの天才は今後数十年は現れないだろうと思い、10時間55分がこれからの箱根駅伝の限界タイムだと感じていました。

大学長距離の進化は速いですね。

今後は10時間45分くらいまでタイムが伸びるのではないかという予想もネットで見ました。

そこまでレベルが上がっていくと、駅伝SLGの予想ではついていけなくなるかも知れません。



駅伝SLGでは10時間55分〜11時間辺りのタイムは出やすいですが、それ以上のレベルとなると現実よりも出にくいと感じます。

私がHPで駅伝SLGでの予想タイムを公開し始めた11年大会以降、強風が吹いた13年大会を除いてカウントすると、11時間切りは現実で10例、駅伝SLGで15例あり、駅伝SLGの方が現実よりもタイムが出やすい傾向にあります。

しかし55分切りになると、13年大会を除いて数えると、現実が5例、駅伝SLGでは2例だけでした。



もしも本当に10時間45分あたりまで記録が伸びるとなると、駅伝SLGでそのタイムを出すためには1万m27分台ランナーが10人必要な計算になってしまうので、ちょっとこのソフトで予想するのは無理があるレベルです。

誰か新しいシミュレーションソフトを作って公開してくれないかなと思った今大会でした。





2位以下は、青学大、東洋大、駒大、帝京大と大方の予想通りのチームがトップ5入りで、タイムもシミュレーションと近いものでした。

優勝候補のトップ2の青学大と東洋大の差は大体データでの予想通りなんですが、爆走した東海大にすべて持って行かれてしまいました。

5連覇を狙っていた青学大は「ゴーゴー大作戦」を掲げていましが、シミュレーションタイムが55分台で現実も55分台、それも55分50秒でしたから、こんな所でゴーゴー状態でした。

6位、7位に食い込んだ法大、國學院大がタイムの伸びが大きかったです。

特に法大の強さは特筆するに値します。

至近3大会でシミュレーションと現実の平均タイム差(現実補正と呼んでいる数値)で、現実の方が早くなるチームは法大だけでした。

その法大は今年もシミュレーションよりも3分59秒も速く、今大会では東海大に次いでタイムを伸ばしたチームでした。



下位で大健闘したのは、やはり大東大ですね。

転倒のあった1区で致命的なタイム差を付けられてしまいましたが、最終的にはシミュレーション+3分39秒で抑えました。

本来の実力は11時間10分を切るレベルだったかも知れません。



シード獲得の10位タイムと、通常は最下位になる20位のタイムは、ついに大台を突破しました。



今大会のシミュレーション

10位 11時間09分18秒

20位 11時間16分09秒



現実

10位 11時間09分23秒

20位 11時間19分57秒



初めての10位の10分切り予想は16年大会、20位の20分切りも14年大会で予想されていましたが、3年遅れ、5年遅れでついに現実になりました。

今大会のシミュレーションで2例目となる10分切りと20分切りが同時に出ていましたが、両方が実現したのは嬉しいです。

ただ現実で20位になった城西大は、10分切りを狙う力があったチームだったのはちょっと残念なポイントですが。





現実補正について

至近3大会の現実とシミュレーションの平均タイム差を補正する現実補正を加えた予想タイムと現実との比較です。

対象になるのは16年大会〜18年大会を完走して今大会に出場しているチームです。

上段 現実補正後のシミュレーションタイム
下段 現実のタイム



青学大
10時間58分20秒
10時間55分50秒
−2分30秒



東洋大
10時間59分22秒
10時間58分03秒
−1分19秒



帝京大
11時間05分17秒
11時間03分10秒
−2分07秒



法大
11時間07分14秒
11時間03分57秒
−3分17秒



駒大
11時間07分56秒
11時間01分05秒
−6分51秒



順大
11時間08分29秒
11時間08分35秒
+6秒



東海大
11時間09分03秒
10時間52分09秒
−16分54秒



拓大
11時間12分18秒
11時間09分10秒
−3分08秒



早大
11時間14分54秒
11時間10分39秒
−4分15秒



日体大
11時間18分27秒
11時間12分17秒
−6分10秒



中央学大
11時間19分05秒
11時間09分23秒
−9分42秒



神奈川大
11時間20分10秒
11時間15分51秒
−4分19秒



大東大
11時間25分32秒
11時間19分48秒
−5分44秒



山梨学大
11時間30分56秒
11時間24分49秒
−6分07秒



上武大
11時間35分00秒
11時間31分14秒
−3分46秒



+−関係なく誤差の合計は、現実補正前が48分56秒(平均3分15秒73)。

現実補正後は1時間16分15秒(平均5分05秒00)。

約55%の
改悪になってしまいました。

前回、前々回は30%程度改善されていたのですが、あれはたまたまだったのでしょうか。

今大会では補正前の誤差が前回の半分程度だったのが現実補正で逆に悪化した原因みたいです。

とりあえずあと数回この現実補正をやってみて、役に立たなそうならばやめます。



順大が現実補正後のタイムよりも現実の方が僅かに遅く+6秒となっていますが、それ以外のチームはすべてタイムを伸ばしています。

至近3大会と比べて力を発揮したチームが多かった印象です。





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