２０１９年大会感想２

２０１９年大会の感想　（２）

普通の感想です

目次

①　東海大初優勝！

②　青学大と東洋大

 ③　史上最高レベルの戦い

 ④　２区について

 ⑤　２区の６７分切りと４年連続７０分切り

 ⑥　日大・ワンブィ選手

 ⑦　国士大・ヴィンセント選手

 ⑧　青学大・森田選手　史上最速の可能性

 ⑨　３区について

 ⑩　好記録続出！山上りの５区

 ⑪　青学大・竹石選手

 ⑫　７区について

 ⑬　８区について

 ⑭　１０区　全日本のシード争い

 ⑮　大東大の健闘　３区～７区の合計タイム

 ⑯　ＭＶＰについて

 ⑰　大手町観戦

 ・　東海大初優勝！

今大会では箱根仕様の調整をしたそうですが、それにしても極端に強かったです。

黄金世代と言われている現在の東海大の主力達が加入した前々回、黄金世代が２年生になった前回は一体なんだったのか。

箱根仕様のトレーニングをする事でここまで変わるのならば最初からやって欲しかったとも思いますが、２年間かけて牙を研いでいた（走力の基礎となるスピードを磨いていた）という事なのかも知れません。

今大会では青学大に４分弱、東洋大には６分弱の大差をつけての圧勝でしたが、東海大の前々回の成績は１０位で、前回は５位。

東海大はこれからも、青学大と東洋大の２校とはライバル関係が続いていくと思いますが、この５年間の成績が１位、１位、１位、１位、２位の青学大、１１年連続３位以内の東洋大と比べると、近年に積み上げた実績はまだまだ及びません。

東海大は０４年大会から数年間は優勝候補にあがるなど、強豪として認知されかけていたのに、本番ではなかなか上位の成績を残す事が出来ず、強豪校の座をキープ出来なかったという過去があります。

東海大には、黄金世代が最後の箱根を迎える来年の大会は当然、その後も実績を積み上げて、常に勝つ事を狙えるレベルの真の強豪になってもらいたいです。

今回の優勝タイム１０時間５２分０９秒は、現在とは少し違う別コースを含めても歴代３位相当の大記録です。

（現在と距離は同じだけど、小田原中継所の位置の違いで別コースとされている）１５年大会で青学大が出した１０時間４９分２７秒と比べると２分４２秒差。

（現在よりも約４０ｍ短いうえに、小田原中継所の位置も違う）１２年大会で東洋大が出した１０時間５１分３６秒と比べると２６秒くらいの差でしょうか。

１５年大会の青学大には神野選手、１２年大会の東洋大には柏原選手という、一流クライマーを相手にしても３分はタイムを稼げる山の神がいました。

今回の東海大のタイムは「山の神なし」の箱根史上最速記録ですね。

神の一発に頼るのではなく、高い総合力で大記録を出した東海大は来年以降も期待できそうです。

・　青学大と東洋大

前回大会まで４連覇をした青学大と、前回大会で３年連続２位の結果を残した東洋大は、今大会でも優勝候補Ｎｏ．１とＮｏ．２でした。

青学大は往路で、東洋大は復路でやや失敗気味の区間がありましたが、最終的には青学大が１０時間５５分５０秒、東洋大が１０時間５８分０３秒を記録し、両チームとも１１時間切りを達成。

青学大は史上最速の２位になり、東洋大は史上最速の３位にして史上初の３位での１１時間切りになりました。

東洋大は４区までを４時間１３分３９秒というとんでもないタイムで走破。

前回大会で自らが出した４時間１４分１３秒を上回り「往路平地最高記録」を更新。

今シーズンの東洋大は全日本ではまさかの後半型のオーダーを組んでいましたが、箱根ではいつもの出し惜しみをしない攻撃型のオーダーで魅せてくれました。

やはり東洋大には前半勝負の戦い方が似合っています。

それに対して、青学大は今大会では復路に有力選手を集めていて、往路で東洋大・東海大に対して遅れを取る形になっていました。

青学大は全日本で東洋大が後半型オーダーを見せた事によって「今回の東洋は復路にエース級を残す作戦もあるかも」と惑わされたのではないかと、ちょっと勘ぐってしまいます。

区間オーダーが発表された時には、東洋大は２区と４区に交代する可能性が高い選手が入っており、リザーブには大エース級の山本選手と相澤選手、ハーフ６２分台を持つ期待のルーキー鈴木選手が残っていました。

花の２区は大エースが務めるとしても、４区には鈴木選手を使って、もう一人の大エースを復路に残すという可能性も否定できない状態でした。

今大会では２位３位の成績でしたが、至近３大会では常に青学大、東洋大の順番でワンツーフィニッシュ。

１５年～１６年シーズンで東洋大が全日本で勝ったケースはあるものの、ほとんどのケースでは青学大の方がデータで勝り、その予想通りに箱根では青学大が勝利を量産。

今シーズンもデータでは青学大が東洋大を上回り、箱根でも総合順位ではやはり上を行きました。

データ通りになるという事は両チームとも本番でしっかりと力を発揮しているという事でもあります。

ならば持っている力の優劣で勝敗が決するのは仕方のないことです。

チームの持っている力は１万ｍやハーフマラソン、全日本の結果である程度は予想できるので、去年の感想でも書きましたが、大会が始まる前の段階で、データ上のチームの力をどれだけ高めることが出来るかで、ある程度は本番の勝負も決まっていたのかも知れません。

去年と違ったのは、データなんて知った事かと爆走した東海大に優勝をかっさらわれた事でしたが。

今大会での青学大と東洋大のタイム差は２分１３秒。

至近３大会のタイム差が７分１１秒、７分２１秒、４分５３秒だったので、その差は縮まってきています。

青学大の出した１０時間５５分台という総合タイムはかなりレベルの高い記録なので、今大会の東洋大は予想を覆すには至らなかったものの健闘をしたと考えられます。

全日本のタイム差の２倍は５分３２秒、

１万ｍの平均タイム差の２０倍は５分２５秒、

駅伝ＳＬＧの予想タイム差は２分２４秒、

現実はどれよりも差が小さかったですね。

両チームとも強力な４年生が卒業しますが、２区区間賞経験者の森田選手、山下り最強の小野田選手、７区最強の林選手が抜ける青学大の方が戦力がダウンしそうなので、来年は予想段階での戦力差は今年よりも小さくなりそうです。

予想の段階で１分位の差だと本番の戦いが面白くなりそうです。

優勝こそ逃しましたが、青学大と東洋大の戦いは優勝争いとは別の意味でこれからも注目していきたいです。

近年の箱根駅伝でこの２校が残してきた実績は、完全に別格ですから。

・　史上最高レベルの戦い

東海大の優勝タイムは歴代３位、山の神なしでの史上最速記録となり、２位の青学大と３位の東洋大も２位と３位の史上最速記録。

駒大の１１時間０１分０５秒も４位としては史上最速でした。往路鶴見中継所での襷渡しミスがなければ１１時間００分台が出ていたでしょう。

１０位が１１時間１０分を切ったのも、２０位が１１時間２０分を切ったのも史上初であり、もちろん史上最速記録です。

こうなると、全順位の記録も気になってしまいました。

現在と近い距離と参加チーム数になった０３年大会以降で調べました。

１位　歴代３位　１０時間５２分０９秒（東海大）　歴代１位は１５年大会の１０時間４９分２７秒（青学大）

２位　歴代１位　１０時間５５分５０秒（青学大）　これまでは１４年大会の１０時間５７分２５秒（駒大）

３位　歴代１位　１０時間５８分０３秒（東洋大）　これまでは１５年大会の１１時間０１分２２秒（東洋大）

４位　歴代１位　１１時間０１分０５秒（駒大）　これまでは１５年大会の１１時間０１分５７秒（明大）

５位　歴代２位　１１時間０３分１０秒（帝京大）　歴代１位は１５年大会の１１時間０２分１５秒（早大）

６位　歴代１位　１１時間０３分５７秒（法大）　これまでは１５年大会の１１時間０７分０８秒（東海大）

７位　歴代１位　１１時間０５分３２秒（國學院大）　これまでは１５年大会の１１時間０８分１５秒（城西大）

８位　歴代１位　１１時間０８分３５秒（順大）　これまでは１５年大会の１１時間０９分１８秒（中央学大）

９位　歴代１位　１１時間０９分１０秒（拓大）　これまでは１５年大会の１１時間１０分４３秒（山梨学大）

１０位　歴代１位　１１時間０９分２３秒（中央学大）　これまでは１５年大会の１１時間１１分１５秒（大東大）

１１位　歴代１位　１１時間１０分３９秒（中大）　これまでは１１年大会の１１時間１３分２６秒（城西大）※１

１２位　歴代１位　１１時間１０分３９秒（早大）　これまでは１５年大会の１１時間１３分３２秒（順大）

１３位　歴代１位　１１時間１２分１７秒（日体大）　これまでは１１年大会の１１時間１４分２１秒（帝京大）

１４位　歴代１位　１１時間１３分２５秒（日大）　これまでは１１年大会の１１時間１５分４３秒（東農大）

１５位　歴代１位　１１時間１４分４２秒（東京国際大）　これまでは１１年大会の１１時間１６分３７秒（神奈川大）

１６位　歴代１位　１１時間１５分５１秒（神奈川大）　これまでは１５年大会の１１時間１８分２４秒（拓大）

１７位　歴代１位　１１時間１６分４２秒（明大）　これまでは１５年大会の１１時間１８分４７秒（神奈川大）

１８位　歴代１位　１１時間１６分５６秒（国士大）　これまでは１５年大会の１１時間１８分５３秒（上武大）

１９位　歴代１位　１１時間１９分４８秒（大東大）　これまでは１５年大会の１１時間２０分５１秒（中大）

２０位　歴代１位　１１時間１９分５７秒（城西大）　これまでは１４年大会の１１時間２５分５６秒（上武大）

２１位以下は記念大会でしかありえない順位だけど一応記載

２１位　歴代１位　１１時間２４分４９秒（山梨学大）　これまでは１４年大会の１１時間２８分３９秒（専大）

２２位　歴代２位　１１時間３１分１４秒（上武大）　歴代１位は０９年大会の１１時間２９分００秒（青学大）

※１　
事実上は１５年大会帝京大の１１時間１３分３０秒。１１年大会よりも約４０ｍ長く７秒程度余計にかかるコースで記録。

１位、５位、２２位を除いてすべて順位別の歴代最速記録でした。

空前の記録ラッシュに沸いた１９年大会は歴史に残るハイレベルな大会でした。

ハイレベルの煽りを食ったのが２位青学大と１１位中大でしたね。

優勝争いとシード争いにおける史上最速の敗者となってしまいました。

例年ならば余裕で優勝、シード獲得出来たでしょう。

箱根駅伝は１１年大会を境にして急激にタイムのレベルが上がりますが、２２位最速記録だけはそれ以前の記録です。

０９年大会で近年では初めての出場となった青学大は完走チーム中最下位の２２位。

その後とてつもない強豪校に成長したのは誰もが知る通りですが、１０年経っても破られない２２位最速記録を打ち立てていたあたり、最初からただ者じゃないチームだったようです。

・　２区について

大会前に注目していた、青学大・森田選手ＶＳ東洋大・相澤選手、順大・塩尻選手ＶＳ明大・阿部選手、森田選手ＶＳ山梨学大・ニャイロ選手といったエース対決は実現しませんでしたが、日大・ワンブィ選手が６６分１８秒、順大・塩尻選手が６６分４５秒を記録し、これまで出そうで出なかった同じ大会での２名以上の６７分切りを達成しました。

日本人選手同士ではもちろん、留学生を交えても達成例はありませんでした。

００年代後半には山梨学大・モグス選手と日大・ダニエル選手という、走力と爆発力が非常に優れた留学生が同時に２区に出場した年もありますが、留学生同士ですらも実現していませんでした。

０９年大会のモグス選手（６６分０４秒）とダニエル選手（６７分０４秒）、１１年大会の東海大・村澤選手（６６分５２秒）と日大・ベンジャミン選手（６７分０９秒）、惜しいところまでは行きますが、中々見ることの出来なかった６６分台対決。

２区史上最高レベルの戦いが実現しましたが、出来れば肩を並べての戦いが見たかったです。

ワンブィ選手の１６秒後方で塩尻選手がスタートしていましたが、これが逆だったらもっと凄い名勝負になっていたでしょう。

留学生２人を含めるとはいえ、区間上位５人の平均タイムは史上最高の６７分０７秒２０。

前回に出された最高記録６７分２５秒４０を大幅に上回りました。

ワンブィ選手と塩尻選手だけではなく、多くの選手が好走しました。

７０分切りは１６人、そのうち６９分切りも１１人と、区間中位から区間下位まで好タイムが続出しました。

７０分切り１６人は１１年大会と同じ史上最多。６９分切り１１人は１１年大会の１４人に次ぐ記録でした。

これだけの数の選手がレベルの高い走りをすると、好タイムで走っても順位を落とす選手は必ず出てきます。

２区の６８分台は、４区で言えば６２分台がそれに近い記録ですが、その４区で今大会の６３分切りは２人だけでした。

テレビ的には弱く見えてしまった選手もいたでしょうけど、それは２区のレベルが高いからであり、２区を６８分台で走れる選手は他区間ならば活躍出来るレベルの選手だということを、テレビ放送内で伝えて欲しかったと思いました。

・　２区の６７分切りと４年連続７０分切り

２区で６７分切りの偉業を達成した塩尻選手は、他にも過去３回に出したタイム、６８分３０秒、６８分０６秒、６９分２６秒と合わせて６９分切り３回と４年連続７０分切りも達成しています。

どちらも地味な記録ですが達成者は少なく、特に４年連続７０分切りは、日本人の達成者は０７年大会～１０年大会で活躍した駒大・宇賀地選手以来２人目で、留学生を含めても６人目です。

近年の２区はレベルが高く、６９分台では上位は当然、中位の流れにもついていけない事があります。

６９分台は好記録と呼ぶには少し物足りないですが、以前ならば年によっては区間上位に入るケースもあり、悪くはない記録ではあります。

山下りの５９分台と同じくらいの価値の記録だと感じます。

難コースの２区に１年時から出場し続け、常に７０分を切って走り続ける為には、高いレベルの安定感が求められます。

２区に出場するというだけでも、チーム内で実力を認められる存在にならなければいけないので、年間を通じての安定感も必要です。

４年連続７０分切りと、６７分切りというタイプの違う２つの偉業は、塩尻選手とワンブィ選手が６７分切りを達成し、塩尻選手は４年連続７０分切りも達成した事により、歴代の６７分切りの達成者と４年連続７０分切りの達成者の人数が、一時的に並びました。

塩尻選手が走り終わった時点では、６７分切り達成者と４年連続７０分切り達成者の人数がちょうど６対６になっていました。

歴代６７分切り達成者　日本人４人＋留学生２人

渡辺（早大）　６６分４８秒、６６分５４秒、６８分４８秒

三代（順大）　６６分４６秒、６８分１８秒、７３分２３秒

モグス（山梨学大）　６６分０４秒、６６分２３秒、６７分２９秒、６８分５３秒　

村澤（東海大）　６６分５２秒、６８分０８秒、６８分１４秒

ワンブィ（日大）　６６分１８秒、６８分１６秒

塩尻（順大）　６６分４５秒、６８分０６秒、６８分３０秒、６９分２６秒

歴代４年連続７０分切り達成者　日本人２人＋留学生４人

オツオリ（山梨学大）　６８分１８秒、６８分２３秒、６８分４０秒、６９分１１秒

マヤカ（山梨学大）　６７分２０秒、６７分３４秒、６８分２６秒、６９分２６秒

モカンバ（山梨学大）　６７分４７秒、６８分０２秒、６８分３５秒、６９分１２秒

モグス（山梨学大）　６６分０４秒、６６分２３秒、６７分２９秒、６８分５３秒　

宇賀地（駒大）　６８分３８秒、６８分４８秒、６９分２２秒、６９分５６秒

塩尻（順大）　６６分４５秒、６８分０６秒、６８分３０秒、６９分２６秒

ちょうど日本人と留学生の比率が逆になっているのが面白いと感じました。

意外にも６７分切りは日本人の方が圧倒的に多く、逆に４年連続７０分切りは留学生の方が多いです。

コツコツ好走を重ねる日本人、ドカンと大爆走する留学生、というイメージだったのですが、意外とデータ上では逆になっています。

塩尻選手の後に戸塚中継所に到着した拓大のエチオピア人留学生・デレセ選手が７人目の４年連続７０分切りを達成し、日本人と留学生の比率が崩れましたが、４８秒間だけ不思議な状態になっていました。

・　日大・ワンブィ選手

ワンブィ選手は間違いなく今大会でもっとも優秀な走りをしたランナーでした。

２区６６分１８秒は凄まじいの一言です。

１万ｍとハーフマラソンで２７分２７秒＆５９分４８秒の学生記録を保持し、箱根駅伝史上最強と言われた山梨学大・モグス選手の区間記録まで１４秒に迫る２区歴代２位の記録を出し、区間２位の塩尻選手に２７秒差をつけて格の違いを見せつけました。

ワンブィ選手の１万ｍのベストは２７分４９秒ですが、実際の力はそんなものじゃないでしょう。

ペース配分もかつてのモグス選手と同じく、鶴見から横浜駅前までと権太坂から戸塚までの、序盤と終盤を両方２２分台で走っているのが驚異的です。

横浜駅前　２２分５２秒
権太坂　４３分２５秒　（横浜駅前から２０分３３秒）
戸塚中継所　６６分１８秒　（権太坂から２２分５３秒）

驚異的な走りを見せてくれたワンブィ選手ですが、４年生なので今回が最後の箱根です。

驚異的な力を持つ選手が来年の箱根は２区でどれくらいのタイムを出すのだろうか？

奇襲で１区もあり？

まさかの５区？

全日本では何区でどれくらいのタイムを？

こんな事を考えて楽しむ事が出来ないので、ワンブィ選手にはもう少し早くこのレベルの力に目覚めて欲しかったですね。

去年の２区の記事にも書きましたが、２区を６７分前後で走った日本人選手の、５例のタイムの中から各定点区間の最高タイムを合わせると６６分１４秒になります。

横浜駅前　２３分０１秒
権太坂　４３分３１秒　（横浜駅前から２０分３０秒）
戸塚中継所　６６分１４秒　（権太坂から２２分４３秒）

早大・渡辺選手の序盤、東洋大・服部選手の中盤、順大・三代選手の終盤のタイムの合計です。（中盤は今年の塩尻選手が２０分２４秒を記録していますが）

６６分一桁や１０秒台は、日本人オールスターが協力しないと出ないレベルのタイムですから、現在の日本人学生選手の走力では対抗するのはちょっと難しいレベルと感じます。

１万ｍで２７分３０秒前後、ハーフマラソンで６０分そこそこくらいの走力を持つ日本人選手の登場を期待したいですね。

・　国士大・ヴィンセント選手

トップの東洋大と１９秒差でスタートし、一気に逆転するのではなく２２ｋｍ以上もかけてジリジリと本当にじわじわ差を詰めて、トップを奪った国士大の新留学生ヴィンセント選手。

区間タイム６７分１２秒は、ニャイロ選手が３年前に作った２区の１年生最高記録を塗り替える物でした。

ヴィンセント選手は横浜駅前は２３分０７秒というケニア人留学生にしては比較的落ち着いたペースで通過するクレバーな走りを見せました。

過去の１年生最高記録、ニャイロ選手やモグス選手の時は、横浜駅前までを２２分台で飛ばして終盤に失速しています。

普通ならば一番苦しくなるラスト１ｋｍの坂で、トップの東洋大を抜き去る走りは見事でした。

今シーズンはハーフマラソンで高いレベルの走りを連発していましたが、初めての箱根２区で快走を見せたヴィンセント選手は、距離が長くなるほど強くなるタイプかも知れません。

将来的に２区の区間記録を塗り替える可能性を持った逸材だと思います。

今年は予選落ちした創価大のエースのムイル選手とタイプ的には近い気がします。

来年は直接対決で見てみたいですね。

それと単純な話ですが、ヴィンセント選手は名前がいい。

私が箱根駅伝を初めて見たのは９３年大会でしたが、駅伝の事を全く知らなかった当時の私には選手のタイムがどうとかの事はわからず、山梨学大の「ステファン・マヤカ」選手の名前がかっこよくて印象的でした。

こんな単純な事でも、テレビを見た人たちが駅伝に興味を持つきっかけにはなると思います。

ケニア人選手の名前は、日本人にはあまり馴染みのない響きも多いですが、欧米風のヴィンセント選手の響きは間違いなくかっこいいです。

・　青学大・森田選手　史上最速の可能性

３区にまわった青学大の大エース・森田選手。

山梨学大・コスマス選手の６１分３８秒を１２秒も塗り替える６１分２６秒の区間新記録を樹立しました。

早大・竹澤選手の日本人最高記録からは１４秒も早い記録です。

私は留学生賛成派で、箱根２区で活躍したモグス選手や、箱根３区や全日本２区でハイレベルなタイムを出したコスマス選手は好きですが、一度留学生に奪われた区間記録を日本人が奪還するというシチュエーションはやはり燃えます。

東洋大の次期エース格である吉川選手を相手にして、約１分後方からぐんぐん迫って来る走りの迫力は凄かったです。

２区を走っていたら６７分を切ったんじゃないかと思うほどレベルの高い走りでした。

新たに誕生した３区の区間記録を、１区の東海大・佐藤選手の区間記録と比較すると、森田選手は２１．４ｋｍの３区を６１分２６秒で走りましたが、１区の距離２１．３ｋｍに換算すると６１分０８秒７７・・・になり、１区区間記録の６１分０６秒には僅かに届きません。

もしも１区の記録よりも早かった場合は、山下りを除いた日本人選手における箱根駅伝史上最速の走りになります。

３区は下り基調のコースなので、平坦な１区よりもスピードが上がりやすいでしょうけど、それでも数字上とはいえ史上最速にあと少しだったのは惜しかったと思いました。

ちなみにですが、１区と３区の距離表示は現在は２１．３ｋｍと２１．４ｋｍですが、０５年大会～１４年大会では２１．４ｋｍと２１．５ｋｍと表示されていました。

０５年大会～１４年大会の区間距離は０．０１ｋｍ単位のデータも公開されています。

それによると１区は２１．３７ｋｍ、３区は２１．４９ｋｍだったそうです。

６１分２６秒÷２１．４９×２１．３７＝６１分０５秒４１・・・。

考え方によっては森田選手は日本人としては佐藤選手以上の、史上最速のスピードで今大会の箱根駅伝の１区間を駆け抜けたのかも知れません。

・　３区について

森田選手の爆走のインパクトが余りにも強かった３区ですが、１万ｍ２７分台ランナーの明大・阿部選手も力を発揮して６２分０７秒の好記録で走り、帝京大のスーパールーキー・遠藤選手も６２分３２秒で走破。

特に遠藤選手は、あの伝説の佐藤悠基選手の１年時のタイムにあと２０秒差の１年生歴代２位の記録でした。

１万ｍのタイムでは佐藤選手２８分０７秒に対して遠藤選手２８分３４秒で結構差がありますから、真の走力がタイムに表れていないのかも知れません。

それか実戦に強いタイプなのか。

森田選手もそうですが、強い選手には走りやすい３区よりは難度の高い２区か４区を走って欲しかったです。

遠藤選手が２区ならば、２区の１年生最高記録に迫る、６８分台前半くらいのタイムは狙えたんじゃないでしょうか。

・　好記録続出！山上りの５区

國學院大・浦野選手、東海大・西田選手、法大・青木選手が現行コースの区間新を出した５区。

青木選手は前回区間賞の実績があり、今大会では７０分ジャストのタイムを目標にしている事が雑誌の記事になるなど山上りの主役と言える存在でしたが、國學院大のエースである浦野選手はまさか５区に出てくるとは思いませんでした。

ネット上や陸上雑誌で浦野選手や国士大・住吉選手、帝京大・畔上選手、東洋大・山本選手と言ったエースの５区出場説がありましたが、噂レベルだと思っていました。可能性があるとすれば住吉選手だけかなと。

西田選手も１万ｍ２８分台ランナーとはいえ、スター揃いの東海大では地味な持ちタイム。

走力の高さから７２分台は狙えるでしょうけど、ここまでの爆走は予想できませんでした。

浦野選手を筆頭に３選手とも序盤から物凄いペースで飛ばしました。

３選手の大平台までのペースは、浦野選手が２２分３１秒、西田選手が２２分３８秒、青木選手が２２分３３秒という突っ込みを見せています。

現在の５区とそれに近いコースで行われた過去のコースを含めても７１分を切ったのは２例だけで、０５年大会の順大・今井選手が６９分台、９６年大会の早大・小林選手が７０分台を記録していますが、大平台までのペースは今井選手が２２分２８秒、小林選手が２２分４０秒でした。

今井選手が走った０５年大会よりもコース序盤が約２０ｍ延長されているので３秒ほど余計にかかる事を考慮すると、浦野選手は山の神・今井選手と並ぶか、もしかしたら神を超えるほどの速さで大平台を通過した事になります。

中盤以降は流石にペースが落ちましたが、それでも浦野選手は７０分５４秒を記録し、堂々の史上３人目の７１分切りを達成し、西田選手も７１分１８秒の快記録で走って先頭の東洋大との差を大きく詰めて総合優勝に貢献し、青木選手の７１分２９秒も前年の自分の記録を上回る快走でした。

９６年大会の小林選手の７０分２７秒と比較すると、当時は今よりも約２４ｍ短いコースで、現在のコースだと４秒程度余計にかかる事を考慮すれば今大会の上位３人は小林選手のタイムから１分未満の差で走った事になります。

５区が２３ｋｍ超だった０６年大会～１６年大会を除くと、小林選手が記録を出した翌年以降の７１分台の記録は７例あります。

（）内は複数あるコースの距離の違いを考慮しての小林選手とのタイム差

９８年大会　神奈川大・勝間選手　７１分２８秒　（＋１分０１秒）

９８年大会　山梨学大・横田選手　７１分２５秒　（＋５８秒）

００年大会　東海大・柴田選手　７１分３６秒　（＋約１分０８秒）

００年大会　中大・藤原選手　７１分３６秒　（＋約１分０８秒）

００年大会　日大・渡辺選手　７１分４４秒　（＋約１分１６秒）

０３年大会　東海大・中井選手　７１分２９秒　（＋約１分０１秒）

１８年大会　法大・青木選手　７１分４４秒　（＋約１分１３秒）

７１分台を出す選手は多いのに、小林選手から１分未満の差に限定すると、小林選手と同じコースで７１分２５秒を出した９８年大会の横田選手の１例があるだけでした。

また０５年大会で今井選手が小林選手の記録を１分１５秒、距離の違いを考慮すると約１分１６秒も超えてしまった事もあり、どうもプラスでもマイナスでも「小林選手から１分未満」は近づきがたいというジンクスのような物がありました。

しかし今大会で３人も一気にこのジンクスを破ってくれました。

３人とも堅実なペースで出したタイムではなく、序盤から攻めまくった結果のタイムというところに更なる可能性を感じます。

上記の７１分台で走った７例の中で、大平台最速タイムは１８年大会の青木選手の２３分０３秒であり、２２分台で突っ込んだ選手はいませんでした。

来年は区間タイムの更に大幅更新もあり得るのではないでしょうか。

・　青学大・竹石選手

５区では浦野選手たちの華々しい活躍がありましたが、その逆の結果になった選手も当然います。

今大会でもっとも意外な光景と感じたのは、「もっとも失敗しないチーム」青学大の４区と５区のブレーキ連発でした。

４区の選手はまだ、初出場の上にライバルチームのエースに抜かれてダメージを受けたという感じでしたし、タイムもそこまで悪くはなかったと思いますが、５区の竹石選手は前年の区間タイムから２分０３秒も落としていて、あの青学大が一体どうしてしまったのか？と衝撃的でした。

竹石選手は前回は追いかける展開の中で好走をしていたので、今回のレース展開が前回と極端に違うというわけではなかったはずですが。

大会終了後、原監督は現状維持は退化だと語っていました。

竹石選手も、前回以上の走りをするために色々な練習をした事を語っていました。

竹石選手のブレーキは、飛躍的に進化するために色々とチャレンジした結果の失敗だったのかなと思いました。

優勝候補の大本命だった青学大。

高い戦力を持つ青学大ならば、失敗すると致命傷になりかねない５区は、前回と同じくらいのタイムで無難に走れば良いと普通ならば思う所ですが、青学大はそうは考えなかったのでしょう。

現実には青学大は東海大に３分４１秒差をつけられて敗れているので、レースの流れもあるでしょうけど、仮に竹石選手が２分０３秒早い前回と同じタイムで走ったとしても、今年の進化した東海大には届かなかった計算です。

まだ３年生の竹石選手には来年こそ５区で進化した姿を見せて欲しいですね。

・　７区について

東海大・阪口選手の追撃と、青学大・林選手の２年連続区間賞に沸いた７区。

トップでスタートした東洋大・小笹選手が、前回大会の区間２位タイムよりも１分以上早い６３分４５秒で走ったのにも関わらず、１分０８秒も後方から小笹選手の背後まで迫ってきた阪口選手。

阪口選手は区間タイム６２分４１秒を記録して、トップとの差を僅か４秒にまで詰めて東洋大から流れを奪いました。

後方ではトップと５分以上の差という優勝が絶望的な状況で区間記録保持者の林選手がスタートし、区間タイム６２分１８秒の爆走を見せました。

林選手は本当に強かったですね。区間２位の阪口選手とは２３秒差ですが、実際の力の差はそれ以上と感じました。

もしも二人が逆の位置でスタートしていたら、林選手は６２分を切ったかも知れません。

これほど強い選手が何で７区なのか不思議です。

もしも出場区間が４区だったら、東洋大・相澤選手との箱根駅伝史上最高レベルのトップ争いが見れたかもしれません。

今大会の７区はトップ２の他もレベルが高く、区間１４位までが６５分を切りました。

オープン参加の連合チームも含めれば１５人が６５分切りでした。

前回大会の７区は区間賞は６２分台でしたが、区間２位と３位は６４分５０秒台で、６５分切りは上位３人だけでした。

前回の区間２位タイムで走っても今年では区間１２位相当になってしまうほどに急激なレベルアップでした。

総合１２位争いを繰り広げたグループは、一斉スタート組やオープン参加チームを含めて８チームの大集団になり、そのうち７人が６５分切りで走っています。

普通ならば単独走になりがちな復路ですが、集団で走れた事がタイムの向上に繋がったのでしょう。

この８人の集団の中で、もっとも後ろから追いついたのが東京国際大１年生の芳賀選手。

６４分２８秒の好タイムで区間６位の成績を残しています。

林選手と同様に、芳賀選手も７区ではもったいなかったと思います。

１２位争いのグループはあまりテレビに映りませんでしたが、この集団の戦いは見ごたえがありそうでした。

もっとテレビに映して欲しかったです。

８人の集団のチームの過去の優勝回数が合計で４１回とテレビで語られていましたが、数えてみると実際の数とは違いました。

５チームが優勝経験校で、中大１４回、早大１３回、日大１２回、日体大１０回、大東大４回、神奈川大２回で合計５５回。

過去９４回の大会で５５回ですから、とんでもなく豪華な集団でした。

７区の６５分という記録は４区の距離に換算すると６３分４６秒ですから、コース難度の違いを考慮しても４区だと６４分くらいの価値の記録だと思います。

１５人も６５分を切った今大会の７区は、ある意味３区や４区を凌いで、２区に次ぐハイレベルな区間だったかも知れません。

今大会の急激過ぎる７区の記録のレベルアップは、将来箱根駅伝ファンになった人が過去の記録表を見た時に、１９年大会の復路は追い風でもあったのだろうか？しかし区間賞の林って選手は前年と変わらないし・・・と悩む人が出ないか心配です。

・　８区について

優勝争いに決着がついた８区では、東海大・小松選手と東洋大・鈴木選手が見ごたえたっぷりの名勝負を演じました。

１万ｍ２８分３５秒のタイムを持つ３年生の小松選手に対して、ハーフ６２分５６秒を持っているとはいえまだ１年生の鈴木選手。

どちらも高い走力を持ち、箱根出場経験がないのも共通点ですが、やっぱり小松選手の方が格上でしょう。

しかし格上の小松選手は相手の後ろにつき、鈴木選手にプレッシャーをかけ続けます。

まさに勝利のみを狙った真剣勝負です。

真剣勝負は負けたら死ぬくらいの気持ちで行う絶対に負けられない戦い。

思いっきりエグい戦い方をした小松選手には本気が感じられて良かったです。

小松選手は、９７年大会で強い追い風の中で出された山梨学大・古田選手の区間記録６４分０５秒を上回る、６３分４９秒の区間新記録を出しました。

追い風の中で出た記録を塗り替えたのは価値が高く、更に８区初の６４分切りを達成し、記録の面でも素晴らしかったですね。

１５ｋｍ近くに渡って前を引き続けた、鈴木選手も堂々たる走りでした。

私は１年生が前を引く展開に、勝負のみにこだわったスローペースの戦いかと思ってしまったのですが、鈴木選手の引くペースはかなりの速さだった事を知って驚きました。

６４分台を狙えるペースで引いた鈴木選手。

もしも小松選手が１万ｍ２９分前後の走力の選手だったら、２８分３０秒台の力を持っていても実戦では出しきれない速くて脆いタイプの選手だったら、とても鈴木選手にはついていけなかったのではないかと思います。

そしてもしもそうなった場合は、相手が離れてくれると、今度は前を引いていた選手が元気になるものですから、区間新記録は鈴木選手だったかも知れませんね。

勝負の流れも大きく変わったかも知れません。

鈴木選手が前を引き続けたのには、９区１０区に不安が有る自チームの層の薄さ、逆に東海大の層の厚さ、数分後ろから最強の層の厚さを誇る青学大の追撃、といった要因もあったと思いますが、気温が高くコース難度も高い８区で見せた１年生の積極的な走りは価値が高いと思います。

区間タイム６４分４４秒は、走り終わった時点では８区の１年生歴代２位。

最終的には古田選手と青学大・飯田選手に次いで１年生歴代３位でした。

小松選手が古田選手の区間記録を２２年ぶりに破った事が大きく報じられていましたが、本当に古田選手と比較するべきは同じ１年生で６４分４４秒と６４分３４秒を出した鈴木選手と飯田選手ではないかと思いました。

逆に小松選手と比較するべきは、前述の通り古田選手の走った年は強い追い風が吹いた大会なので、風のアドバンテージがない中で８区歴代２位の６４分１２秒を出した１２年大会の東洋大・大津選手ではないかと。

箱根駅伝１０区間の中でも８区の区間記録はとても特殊です。

何の雑誌だったかは忘れましたが、山梨学大・上田監督が古田選手の区間記録について、追い風参考記録だと発言していたと思います。

８区歴代最速はタイムの上では間違いなく古田選手ですが、事実上は大津選手じゃないかなと私は思っていました。

他の区間と違い特殊な８区では、区間記録保持者＝その区間の史上最高の選手、とは言いづらいので、大津選手やトップから大きく遅れている位置で６４分２６秒を出した０５年大会の中大・奥田選手について、ほとんど触れられていなかったのはちょっと残念でしたね。

・　１０区　全日本のシード争い

全日本でシードを逃しても、箱根で３位以内に入れば次のシーズンの全日本に出場できる事は有名ですが、今大会では全日本でシードを獲得できていない上位２校に次回の全日本推薦枠が与えられる事になっていたそうです。

今回の箱根で優勝した東海大～７位の國學院大までは全日本のシード校ですから、８位の順大と９位の拓大が推薦枠を獲得したようです。

９位の拓大は中央学大との接戦でしたし、その後方からは中大と早大も迫っていました。

次回の箱根のシードをかけた１０位争いと、次回の全日本のシードをかけた９位争いが並行して行われていたようです。

このダブルシード争いについては大会終了後に陸上雑誌を読んで初めて知りました。

中央学大が９位から１０位に落ちた後、いいかシードだぞ！なんとか守るんだろ！と、監督から中央学大・石綿選手に激が飛んだそうですが、ゴールまで１ｋｍもなく、後ろの１１位までは１分以上の差というシチュエーションですから、これはもしかして全日本のシードの事だったのではないでしょうか。

１０位争いが大注目の箱根駅伝なので、普通は９位争いは盛り上がりませんが、全日本の出場権がかかっていると知っていたらもっと注目したのですけど。

日本テレビの放送で、テレビ朝日で放送される全日本の宣伝をするわけにもいかないでしょうけど。

マニアックな情報を載せるげつりくの観戦ガイドにも、今大会で全日本の推薦枠争いがある事は書かれていませんでした。

大会前に知りたかったですね。

・　大東大の健闘　３区～７区の合計タイム

１区でスタート直後の転倒というアクシデントに見舞われた大東大。

１区は、前回の１区を６３分１２秒の好タイムで走り、１万ｍも２８分台を持つ実力者の新井選手でしたが、痛めた足ではスピードは上がらず、なんとか完走はしたものの、タイムは７１分１５秒かかり、２１位に４分４２秒の大差をつけられて、最下位の２２位に沈みました。

２区でも焦りによる負の連鎖が起きたのか、エース川澄選手が区間最下位となり、２１位との差は６分１秒に広がります。

この時点で大東大が最下位を脱出するのはまず無理と思ったのですが、３区から見事な反撃を見せました。

結論から言うと、大東大の３区～７区の５区間の合計タイムは、一昔前ならば優勝を争っていてもおかしくない程のタイムでした。

３区は６４分３４秒の区間１５位の成績でしたが、激戦区の３区なので順位はあまり良くないですが、タイムは中々のものです。

個人的には３区の６４分３０秒は２区の７０分や４区の６４分と同じくらいの価値だと思います。

３区を終えて２１位との差は３分３９秒にまで急激に縮まります。

４区の奈良選手が６３分１４秒区間５位で準エース区間を攻略し、２１位との差は１分５０秒に。

５区を７２分４２秒区間７位で走り最下位を脱出すると、６区も区間１０位ながら６０分を切る５９分５６秒で走り順位を２０位へと上げました。

そして７区では６４分３３秒区間８位の成績で更に順位を１９位に上げています。この６４分３３秒という区間タイムは前回大会ならば区間２位相当の好走でした。

ダントツの最下位から好走５連発を見せた大東大の３区～７区の５区間合計タイムは５時間２４分５９秒。

このタイムを過去２０年、強風が吹いた０１年大会と１３年大会を除いた１８大会の優勝チームの３区～７区のタイムと比較してみました。

９９年大会
５時間２８分５１秒　順大

００年大会
５時間２３分４０秒　駒大

０２年大会
５時間２５分３５秒　駒大

０３年大会
５時間２６分３７秒　駒大

０４年大会
５時間２６分５７秒　駒大

０５年大会
５時間２４分１９秒　駒大

０６年大会
５時間２６分３９秒　亜大

０７年大会
５時間２３分５４秒　順大

０８年大会
５時間２６分２０秒　駒大

０９年大会
５時間２３分１３秒　東洋大

１０年大会
５時間２５分０２秒　東洋大

１１年大会
５時間２３分０１秒　早大

１２年大会
５時間１５分５５秒　東洋大

１４年大会
５時間１９分１５秒　東洋大

１５年大会
５時間１６分０３秒　青学大　

１６年大会
５時間１８分３７秒　青学大

１７年大会
５時間２６分１７秒　青学大

１８年大会
５時間１９分２８秒　青学大

年によっては若干の距離の違いや、強風でタイムがめちゃくちゃになった０１年大会と１３年大会以外にも、気象コンディションがあまり良くない年もありますが、過去の優勝チームの中には今年の大東大のペースと互角くらいだったり、下回るケースも結構ありました。

０７年大会の順大、０９年大会と１０年大会の東洋大は５区を山の神が走っていますし、１１年大会の早大は総合タイムで１１時間切りを達成したチームですが、今年の大東大はこれらのチームとも僅差でした。

００年代前半に黄金時代を迎えていた駒大とも互角以上でした。

流石に東洋大が１０時間５１分台で優勝した１２年大会以降は通じない年が多いようですが、１１年大会以前だったら華々しく優勝を争っていてもおかしくないペースで走っていました。

今大会の大東大の３区～７区を走った５人は大健闘だったと思います。

そして大東大が見せたこの意地の走りが参考記録ではなく公式記録として残ったのは、１区の新井選手が最後まで走り切ったからでした。

最終的には１９位でしたが、新井選手の頑張りは無駄にはならなかったと思います。

・　ＭＶＰについて

私はＭＶＰというものが基本的に嫌いでした。

何を基準に選んでいるのか良くわからなかったからです。

以前このＨＰでＭＶＰにはもう触れないと書いてしまいましたが、今大会では選考に納得出来るものもあったので、久しぶりに語りたいと思います。

ＭＶＰには問題点が多いです。

まず、事実上留学生が受賞出来ません。

今大会の２区区間賞獲得者の日大・ワンブィ選手や、０８年大会で２区区間新記録を出した山梨学大・モグス選手は、明らかに大会ナンバーワンの選手でしたが、受賞出来ませんでした。

区間賞獲得選手が選考対象になるケースがほとんどなのも問題でした。

一見これは正しいようですが、素晴らしい走りをしたのに留学生には負けてしまった、というケースが選考対象になりません。

今大会では順大・塩尻選手がこのパターンですね。

留学生に与えない事が規定に明文化されていて、１０区間の日本人選手の区間最上位から選考されれば、塩尻選手が受賞していた可能性は高かったと思います。

留学生からは選ばない、区間賞獲得者から選ぶ、この２つが重なるとおかしい事になります。

そもそもＭＶＰとは、

①個人の成績がもっとも優れていた選手に与える物

②優勝したチームの中でもっともチーム成績に貢献した選手に与える物

この①か②のどちらかでしょう。

これまでの受賞歴を見ると、箱根駅伝のＭＶＰは優勝したチーム以外から選ばれるケースも多いので①だという事がわかります。

しかし、①はとても難しい。

違う区間を走った選手同士を比較するのですから、本来ならば区間タイム、レース展開、コース難度、気象条件などを考慮して比較しないといけないはずですが、そこまで時間をかけてもいられないのでしょう。

復路のゴール後、結構すぐにＭＶＰ受賞が発表されたりします。

前回は青学大・林選手が選ばれましたが、選考委員会を開くまでもなく決まった、という事が明かされています。

今大会でＭＶＰを受賞した東海大・小松選手。

８区で逆転劇を見せ、チームを優勝に導く走りは②の視点で選べば間違いなくＭＶＰ候補筆頭です。受賞は当然です。

しかし①の視点だと、２区６６分１８秒で区間賞を取ったワンブィ選手、２区６６分４５秒で区間２位の塩尻選手、４区６０分５４秒で区間賞を取った東洋大・相澤選手に勝るという事はないと思います。

小松選手が出した史上初の８区６４分切りの記録、６３分４９秒。

２１．４ｋｍの８区から、２３．１ｋｍの２区に記録を換算すると約６８分５３秒です。

８区は上り坂がきついコースですが、２区だって８区以上の難コースです。

８区の方が気温が高くペースが上がりづらいという要因はあると思いますが、それでも８区の６３分台が２区の６６分台よりも記録の価値が上という事は絶対にありえません。

有識者たちが集まってたっぷりと時間をかけて①の最優秀選手を決めて欲しいと思っていますが、現実的にそれが難しいのならば②で良いのではないかと思います。

箱根駅伝で何より大事なのはチームの総合優勝なのは間違いありません。

だったらその優勝にもっとも貢献した選手を選ぶというのは、それはそれで筋が通っていると思いますので。

今シーズンの全日本大学駅伝のＭＶＰは、優勝争いに決着をつけた青学大・森田選手が受賞していました。

区間２位の成績でしたが、チームの優勝にもっとも貢献していたのは明らかでした。

全日本のＭＶＰ選考方針は、今シーズンは間違いなく②だったわけです。

①は、留学生が選ばれない、区間賞獲得者しか選ばれないという暗黙のルールや、違う区間の選手を比較する難しさもあるので、今後は箱根も②で続けていった方が今までよりもずっとわかりやすくて良いと思います。

今大会のＭＶＰ候補には、小松選手の他に、東海大４区の舘澤選手、東海大５区の西田選手も入っていたそうです。

舘澤選手も西田選手も区間２位の成績でしたから、今大会の箱根駅伝のＭＶＰ選考方針は、全日本大学駅伝と同様に②だったわけです。

前々回の箱根のＭＶＰは優勝チーム以外から出ていたので、前々回は間違いなく①でした。

前回は優勝チームの選手でしたが、個人成績が非常に優れていた選手だったので、①なのか②なのかわかりませんでした。

②にシフトしたのが今回からなのか、前回からなのかはわかりませんが、これからは②で統一して欲しいと思います。

しかしいつか留学生を持つチームが、その留学生の活躍で優勝した場合はどうなるのか・・・今から気になってしまいます。

ここ最近の箱根では留学生を持つチームが、優勝を狙える戦力を持っているというケースは希ですが。

・　大手町観戦

久しぶりに大手町のゴール付近に観戦に行ってきました。

復路大手町に来るのは２０年ぶりです。

前日の往路で、２区と４区で２０年ぶりに記録が塗り替えられて、急に懐かしくなったのでした。

９９年大会からゴール地点は現在の場所になりました。

２０年前は新しいゴール地点や雰囲気を見るために行ったのですが、駒大の３冠の瞬間が見れるかと思っていたら、まさかの順大が総合優勝をした大会でした。

私は選手が来る１時間程度前にゴール付近についたら、運が良かったのか意外と見やすい場所を確保できた記憶があります。

たった１時間前でそこそこの場所が取れたのは運が良かったのもあるでしょうけど、現在ほどは盛り上がっていなかった時代のおかげでしたね。

今年は車で行きました。

八丁堀付近のパーキングメーター（時間外や正月３日まではフリーのところ）に車を停め、京橋まで歩いて駅伝コースに入ります。

この時点で選手が来る１時間くらい前でした。

ゴール付近は２０年前とは違いこの時間ではとても無理だろうと思い、京橋からゴールまで２ｋｍくらいの距離を歩きながら見やすそうなポイントを探す予定でした。

しかし、人が多くてとても見やすそうな場所は見つからず、ゴール付近のガードまでついてしまいました。

ここまでは人は多いものの進むことは普通に出来ていましたが、ゴール前のガードをくぐった辺りから急激に人ごみが凄まじくなりました。

押し合いへし合い、将棋倒し寸前の恐ろしさ、どっかの男が「止まるなあー！進めえー！」と怒鳴り散らす。

ちょうど東海大の応援団の前で、付近のテンションも凄まじいです。

これはやばい。恐怖を感じて隙をみてＵターン。

人の流れがガード→ゴールよりも、ゴール→ガードの方が多かった事もあって、逆流の流れに紛れ込んで逃げました。

結局ガードの付近にある通りで観戦しました。

近くで選手を見る事は出来なかったけど、コースからちょっと離れると意外と空いていました。

選手が走る道路からは１０ｍ～２０ｍくらい離れるけど、結構穴場かも知れません。

ゴール付近の雰囲気を味わう事は出来ました。

写真の中央にある交差点を、選手は右から左に走ります

久しぶりのゴール付近の観戦は疲れました。

生で見に行くのは地元の鶴見くらいがちょうど良いかと。

以前は戸塚や小田原、芦ノ湖に行った事もあったけど、最近はテレビとネットの記録速報と自分の予想やら１１時間１０分切りペースやら２０分切りペースやらを照らし合わせながら観戦するスタイルに慣れてしまい、やっぱり自宅が一番かなと思いました。

でも箱根駅伝の持つ熱量というか雰囲気に触れることが出来たのは良かったです。

箱根駅伝はお祭りなんだと改めて実感しました。

～２０年前の思い出～

９９年大会のゴール付近。

私の隣にはカップルがいました。

二人の会話が聞こえてきて、女の子の方がワチーラがどうとかと結構その大会の濃い話をしていて、私は駅伝好きの女なんて世の中にいたのかと驚愕した覚えがあります。

今だったら、駅伝が好きな女性だっているだろうと思うけど、２０年前の私には衝撃的でした。

いつか駅伝好きの彼女とか出来るんだろうかと思った当時１９歳の氷川優気でした。今も出来ていませんが。

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