2020年大会の感想 (2)
大会前に発表した駅伝SLGによるシミュレーションタイムとの比較です
上段 シミュレーションのタイム
下段 現実のタイム
青学大
11時間01分49秒
10時間45分23秒
−16分26秒
東海大
10時間51分07秒
10時間48分25秒
−2分42秒
國學院大
11時間01分57秒
10時間54分20秒
−7分37秒
帝京大
10時間59分44秒
10時間54分23秒
−5分21秒
東京国際大
11時間03分17秒
10時間54分27秒
−8分50秒
明大
11時間07分01秒
10時間54分46秒
−12分15秒
早大
11時間07分02秒
10時間57分43秒
−9分19秒
駒大
10時間57分14秒
10時間57分44秒
+30秒
創価大
11時間13分07秒
10時間58分17秒
−14分50秒
東洋大
10時間57分06秒
10時間59分11秒
+2分05秒
中央学大
11時間07分51秒
11時間01分10秒
−6分41秒
中大
11時間14分12秒
11時間03分39秒
−10分33秒
拓大
11時間14分08秒
11時間04分28秒
−9分40秒
順大
11時間04分58秒
11時間06分45秒
+1分47秒
法大
11時間10分55秒
11時間07分23秒
−3分32秒
神奈川大
11時間08分31秒
11時間07分26秒
−1分05秒
日体大
11時間10分39秒
11時間10分32秒
−7秒
日大
11時間13分08秒
11時間10分37秒
−2分31秒
国士大
11時間23分01秒
11時間13分33秒
−9分28秒
筑波大
11時間29分27秒
11時間16分13秒
−13分14秒
20チーム中、17チームが予想よりもタイムを伸ばしています。
特に12チームは5分以上、その内5チームは10分以上伸ばしていました。
シミュレーション予想のデータには、前シーズンの箱根の区間タイム、今シーズンの全日本の区間タイム、1万mとハーフのベストタイム、これらをメインの予想材料にしています。
前シーズンの箱根は、第2世代までのヴェイパーの着用率が40%程だったので、第3世代ヴェイパー着用率80%程だった今回とは違いすぎて、予想データとしては不適切だったようです。
19年に発売された第3世代ヴェイパーは、今シーズンの全日本の区間タイムや、1万m、ハーフのタイムにも影響を与えているでしょうけど、予想よりも現実の方が遥かにタイムを伸ばす結果になりました。
今年度はヴェイパー過渡期でしょうから、予想材料となるレースの段階と、箱根本番では、どうしてもヴェイパーの影響に違いが出てしまうのではないかと思います。
青学大が全日本まではアディダスのシューズを履き、箱根本番ではナイキのヴェイパーに履き替えていた事も話題になっていましたし。
これからはヴェイパーなどの高反発シューズを使用する選手の割合は、限りなく100%に近づくでしょう。
当然1万mやハーフのベストタイム、来シーズン以降の全日本の区間タイムは、高反発シューズを使ってのタイムになるはずです。
前シーズンの箱根、つまり2020年大会の箱根も、前述のとおり80%程の選手がヴェイパーを履いていますから、2021年大会を予想するデータとしては適切だと思います。
次回は、今回と比べて現実に近い予想が出来るのではないかと思っています。
しかし、世界陸連が高反発プレートの使用は1枚までで、ソールの厚さは40ミリ未満と決めた数日後に、ナイキは規制ギリギリの第4世代高反発シューズ、「アルファフライネクスト%」を発表しています。
元々準備していたとしか思えず、世界陸連はナイキの言いなりかと思ってしまいます。
1万mやハーフ、次の全日本は第4世代シューズのアルファフライで走る選手が多いでしょう。
しかし、前シーズンの箱根の記録は、第3世代シューズでの記録ですから、第3世代と第4世代でシューズの性能が大きく変わるとしたら、また予想するのが難しくなりそうです。
第3世代の異常な高性能ぶりを考えると、多分そこから更に大幅に進化する事はないんじゃないかな、と今のところは考えていますが。
ヴェイパーの話はこれくらいにして、優勝した青学大は強かったですね。
−16分26秒は全チーム中トップの伸び幅でした。
これほどのチームがなぜ、予想段階で11時間01分台だったのか、悩んでしまいます。
逆に最もタイムを落としたのが+2分05秒の東洋大。
東洋大は近年の実績の合計で、青学大に対抗できる唯一の大学と考えていました。
過去4大会では、1位1位1位2位の青学大に対して、2位2位2位3位の東洋大。
この4大会ではシミュレーション予想でも常に青学大が上を行き、そのタイム差は
16年大会 予想9分43秒 現実7分11秒
17年大会 予想10分28秒 現実7分21秒
18年大会 予想3分06秒 現実4分53秒
19年大会 予想2分24秒 現実2分13秒
となっていました。
予想に近いケースが多く、両チームともきっちりと力を発揮できる強さを持ったチームだと感じていました。
今大会では、予想段階で東洋大が青学大の上を行き、そのタイム差は4分43秒。
ついに今年は東洋大が勝つかと思ったのですが、結果は10位に終わり、青学大に14分弱の大差をつけられての完敗でした。
東洋大は前々回からヴェイパーを使用し、大学長距離界における厚底シューズの先駆者といえる存在ですが、前回までの第2世代ヴェイパーと、今年度から多くの選手が使っている第3世代ヴェイパーでは性能が違うでしょうから、単純にライバルチームがヴェイパーを履いたから相対的に順位を落とした、というだけではないと思います。
今大会の東洋大に一体なにがあったんでしょうかね。
その東洋大が記録した10位記録は10時間59分11秒。
前回はシミュレーション上での10位タイムは11時間09分台が予想され、そして現実の大会でも09分台が出て、ついにシードライン11時間10分切りが達成されました。
一昔前には考えられない夢の記録でした。
今大会では、10位のシミュレーションタイムは11時間07分台にまで伸び、現実でも好記録を期待したのですが、まさかの11時間切りには、笑うしかなかったです。
20位のタイムも、前回初めて11時間20分切りを達成したと思ったら、今大会では11時間16分台にまで伸びました。
20位の筑波大は1994年大会以来の出場だったそうですが、26年ぶりに出場するチームの走りじゃなかったですね。
素晴らしいと思う反面、やっぱりヴェイパーの威力はここでも炸裂していたと感じました。
・現実補正について
過去3大会の現実とシミュレーションの平均タイム差を補正する現実補正を加えた予想タイムと現実との比較です。
対象になるのは17年大会〜19年大会を完走して今大会に出場しているチームです。
上段 現実補正後のシミュレーションタイム
下段 現実のタイム
青学大
11時間02分44秒
10時間45分23秒
−17分21秒
東海大
10時間54分14秒
10時間48分25秒
−5分49秒
國學院大
11時間07分01分
10時間54分20秒
−12分41秒
帝京大
11時間03分46秒
10時間54分23秒
−9分23秒
早大
11時間09分56秒
10時間57分43秒
−12分13秒
駒大
11時間04分39秒
10時間57分44秒
−6分55秒
東洋大
10時間57分31秒
10時間59分11秒
+1分40秒
中央学大
11時間11分45秒
11時間01分10秒
−10分35秒
拓大
11時間17分19秒
11時間04分28秒
−12分51秒
順大
11時間06分48秒
11時間06分45秒
−3秒
法大
11時間06分23秒
11時間07分23秒
+1分00秒
神奈川大
11時間14分51分
11時間07分26秒
−7分25秒
日体大
11時間11分18秒
11時間10分32秒
−46秒
国士大
11時間35分56分
11時間13分33秒
−22分23秒
+−関係なく誤差の合計は、現実補正前が76分20秒(平均5分27秒14)。
現実補正後は121分05秒(平均8分38秒93)。
約63%の改悪になってしまいました。
17年大会から導入したこの現実補正は、今回で4大会目になりますが、最初の2大会こそ30%程度改善されたものの、3大会目になる前回では50%以上の改悪となっていました。
そして今回は、前回を更に上回る60%以上の改悪。
この現実補正は今回で最後にしておきます。やる意味はありませんでした。
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