２０２１年大会感想１

２０２１年大会の感想　（１）

３／３０　ＵＰ

普通の感想です

目次

①　優勝争い

 ②　１区

 ③　東京国際大・ヴィンセント選手

 ④　駒大のＭＶＰ

 ⑤　東洋大　ＶＳ　青学大

 ⑥　東洋大　西山選手と吉川選手

 ⑦　東洋大・松山選手

 ⑧　１０区の距離

 ⑨　往路のゲスト

 ⑩　大会全体の感想

 ・　優勝争い

ゴールまで残り２ｋｍちょっとの地点での逆転劇。

今大会は、おそらくは今後数十年は見られないであろう、とんでもないレース展開となりました。

駒大は全日本に続いての逆転優勝となり、全日本では残り約１．２ｋｍでトップに立ち、距離が約２倍になる箱根では、ほぼ２倍弱の残り約２．１ｋｍ地点での逆転となり、狙ってやっているわけはありませんが、なんとも凄い偶然です。

結果的には全日本の王者が箱根でも優勝したわけですが、順当な勝利と呼ぶのも違和感がある、なんとも言いがたいレース展開だったと思います。

最終区間での駒大・石川選手は、戦意を失いそうな大差をつけられている状況でスタートしても、積極的に前を追い続けて、結果的に６９分１２秒のタイムで区間１位を記録して逆転優勝を達成し、箱根駅伝の新たな伝説を作りました。

しかし駒大は、１０区がスタートした時点で３分１９秒も差をつけられた事自体が大問題でした。

普通は相手チームに大ブレーキでも起きない限りは逆転は不可能な差だからです。（結果的には逆転したけど）

逆に創価大は、１０区に襷が渡った時点で２位に３分１９秒も差をつけていたレース展開自体が素晴らしかった。

普通は大ブレーキでも起こさない限りは逆転される事はないからです。（結果的には逆転されたけど）

総合優勝こそ最も大事なものですが、今大会に関しては、敗れた創価大の方が価値の高いレースをした印象でした。

諦めない気持ちが何より大事と、駒大の快走ばかりがクローズアップされていましたが、確かに石川選手は区間賞を取っているので見事な快走なのは事実ですが、区間２０位の７３分２３秒だった創価大・小野寺選手が、もしも区間１７位相当のタイムだったら逆転劇はなかった計算になるので、運の要素が強かった勝利と感じました。

これが、７０分３０秒で区間５位辺りで走った小野寺選手を、６７分そこそこの区間新記録を叩き出した石川選手が追い抜く、なんてレースだったら、間違いなく最高のアンカー決戦だったと手放しで喜べるのですが。

もちろん勝負事は、実力＋運で決まるので、駒大の勝ち方を悪く言うつもりはありませんが、それ以上に創価大の戦いが見事だったという印象のレースでした。

それと、陸上雑誌やネットの記事など色々な箱根駅伝関係の記事を見ても、相手のブレーキで勝った、運で勝ったという部分にはほとんど触れていないところに違和感があります。

大八木監督は９区を終えた時点で、２番だな、お手上げだな、と思っていたそうですし、優勝後には、不思議な勝ち方をしたとコメントしていました。

やはり運の要素はかなり大きかったでしょう。

前回大会で異常にタイムが伸びたヴェイパーフライ問題もそうでしたけど、指摘してはいけないような空気を感じるのは嫌ですね。

アンカーでの逆転優勝は箱根では２０年ぶりという事で貴重ですし、純粋に面白いレース展開だったと思います。

２０年前には逆転される立場だった駒大が、今回は抜く側となったのも爽快でした。

０１年大会で駒大のアンカーを走ったのは当時２年生の高橋選手でしたが、あの苦しそうな顔は、今でも覚えているほど印象的でしたから。

区間タイムを見ても、２０年前の高橋選手が７４分２１秒、今大会の小野寺選手が７３分２３秒であり、高反発シューズの効果を１分程度とすればほぼ同じパフォーマンスと言えそうです。

０１年大会の優勝争いに敗れた高橋選手は、その後２度と箱根を走る事はなかったわけで、なにか被る部分を感じる小野寺選手には、来年の最後の箱根でのリベンジを期待したいですね。

しかし、今回は盛り上がったアンカー決戦ですが、こういう勝ち方は、面白くはあってもあまり良い勝ち方とは言えないと思います。

私自身、駅伝に興味を持ったきっかけが、９５年の全日本でのアンカー逆転優勝でしたので、駅伝のゴール間際での逆転劇の興奮は、他のスポーツを見ていても中々味わえない貴重な物だとわかります。

９５年全日本の逆転劇は、学生長距離の伝説の一つとして有名です。

しかし当時その伝説のアンカー勝負に勝った早大で、コーチを務めていた遠藤司氏が「勝ち方が悪かった」とレースを評していたのはあまり知られていません。

私は駅伝を長く見ていくうちに、本当に良い勝ち方とは１区や２区でトップに立ち、ライバルに影を踏ませないで、出来れば背中すら見せない位置に突き放して、最後まで逃げ切る勝ち方ではないかと思うようになりました。

見ている人間がつまらなく感じるほどの、他を圧倒する横綱相撲こそ最高の勝ち方だと思います。

最低でも、総合優勝をするチームには、往路を制してそのまま逃げ切って欲しいところです。

混戦になるにしても、実力のあるチームが力を発揮した上での勝負になって欲しいです。

最終盤までトップを独走し続けた創価大にしても、有力チームの多くに誤算があって力を発揮できなかった結果の首位独走だったと思います。

優勝争いを演じた駒大と創価大の総合タイムは共に１０時間５６分台。

５６分台というタイムは、前回の２０年大会ならば７位相当ですが、往路は向かい風や１区のスローペースでタイムが落ちたでしょうから、その影響を考慮すればあと数分は価値が上のタイム、おそらくは前回の３位（５４分台）と同等か、少し上くらいの価値かと思います。

前回大会から箱根駅伝は高反発シューズ時代に突入したため、１９年大会以前との比較は難しいですが、高反発シューズで１０区間の合計タイムが１０分くらい伸びるとすれば、１９年大会以前の大台だった１１時間切りが、現在の１０時間５０分切りに相当します。

せめて向かい風と１区前半のスローペースがなければ、１０時間５０分を切れたと思えるレベルのタイムは出して欲しかったです。

流石にタイムロスが６分や７分と言う事はなかったでしょうから。

高反発シューズが存在しなかった時代に、青学大は１０時間４９分台と５３分台、東洋大は１０時間５１分台と５２分台を出しており、これに高反発シューズによるタイムの伸びを加えると、１０時間３９分～４３分くらいが予想できる事になり、これらの記録はおそらくは箱根駅伝の歴史上で１番～４番に価値のある総合タイムだと思います。

こういったとてつもないレベルの過去のタイムと比べると、今大会の優勝争いは、面白くはあったけれど、迫力はなかったと言わざるを得ないです。

平均区間順位でも、優勝した駒大は５．５であり、過去１０大会の優勝チームの中ではダントツに悪い数値です。

下から２番目が３．８ですから、この１０年の中では４どころか５まで超えてしまった唯一の例となってしまいました。

総合タイムが伸び悩んだのは気象条件の問題もあるでしょうけど、区間順位から見ても、力でもぎ取った優勝というよりは、相手が崩れた結果の優勝という気がしてしまいます。

アンカー勝負も、実力差があり過ぎて、名勝負という感じではありませんでした。

大きな実力差のあるアンカー対決と言えば、０９年の全日本を思い出します。

この大会でも、有力チームが実力を発揮できず、予想外なチームがトップを独走。

首位を走っていた明大は、アンカー区間でブレーキを起こして、日大にトップを奪われました。

日大は切り札の留学生をアンカーに配置していた事もあり、相手のブレーキもあって、拍子抜けするくらいに両者に差のある「熱くないアンカー決戦」でした。

この０９年全日本については、泥仕合との声もあったそうです。

今回の箱根の大荒れのレース展開には、申し訳ないけど、０９年全日本に近い物を少し感じてしまいました。

それにしても、出場４回で準優勝した創価大の躍進は見事でした。

１区～３区は強力な選手で固めても、４区は手薄になるチームもある中、エース格の嶋津選手を４区に使い、しっかりと往路から勝負したのが良かったと思います。

・　１区

１ｋｍ通過が３分３３秒という衝撃のスローペースで幕を開けた１区は、５００ｍ～６００ｍ辺りでは１００ｍのタイムが約２７秒となり、１ｋｍだと約４分３０秒のペース。

選手達の動きは、ブレーキを起こした選手を除けば今まで見たことのないレベルに遅かったです。

大人数の集団なので、なおさら異常な動きに見えました。

この１区はスローペースに飲まれて、チームでも１、２を争う実力者を使った東海大や青学大は、ちょっともったいなかったですね。

１区は実力者が集まっても、誰が前を引くという損な役割をやるのかという問題があるので、勝負を仕掛けづらい区間です。

１区のレース展開には流行のような物があるので、これで次回の１区は、今回と比べると登場する選手のレベルは少し下がるかも知れません。

しかし裏を読んで、逆に強力な選手を投入して勝負をかけるチームもあるかも知れません。

裏の裏まで読んで、強力な選手が集まっても、また前を引く選手がいなくてスローになる、と考えるチームもあるかも知れません。

１区の予想はどうしても堂々巡りになってしまうので、もう全チームが中堅選手を使って、エース級は２区～５区に使ってくれないかなと思ってしまいます。

１区の区間タイムはレース展開による影響が大きいので、タイムを楽しみにしているタイプの駅伝ファンとしては、１区以外の往路に有力選手を使って欲しいです。

・　東京国際大・ヴィンセント選手

前回３区で５９分台前半の超区間新記録を出したヴィンセント選手は、今年は２区で区間新記録。

区間新は走力的には当然と言えますが、前回の３区の走りは、２区ならば６５分を切ってもおかしくないレベルだと思います。

今回は向かい風の中での区間新記録ですが、ヴィンセント選手の出した６５分４９秒は、２区の難コースで力を発揮できなかった結果のような気がしました。

今年は沿道にのぼりがないので、テレビの映像から風の影響を判断しにくいです。

前回区間２位の拓大・ラジニ選手（去年の登録名はレメティキ選手だったけど）が、前回と比べて５９秒タイムを落としていますが、区間順位も落としており、こちらも前回と比べると力を発揮できなかった結果ではないかと思います。

前回と今回で、２区の同じ区間順位でタイムを比べると、区間５位同士では今回の方が＋１４秒、区間１０位同士ならば＋１３秒、区間１５位同士だとちょっと開いて＋４９秒。

前回と比べて気象条件は悪かったと思いますが、１分とかの大きな違いはなかったと思います。

近年の２区と３区で大活躍した選手といえば、青学大・森田選手が、１８年大会の２区と１９年大会の３区で区間賞を獲得していましたが、その時のタイムが２区では６７分１５秒、３区では６１分２６秒。

ヴィンセント選手は森田選手と比べると、２区で１分２６秒、３区で２分０１秒速いタイムを残しましたが、距離が長くコースも厳しい２区では通常は差がつきやすいはずですが、破壊力が落ちたような印象を受けます。

他にも、古い例を出すと、９０年代、早大の主力選手に山崎選手というランナーがいました。

抜群の安定感を持ち、堅実な走りを連発し、サラリーマンランナーという異名を持っていました。

この山崎選手が９８年大会の３区を区間３位で走った時のタイムが６４分０５秒。

翌年はエースとして花の２区を走り、６９分２３秒で区間４位の成績をおさめています。

私はこのタイムを大体の基準として、２区の６９分３０秒前後のタイムと、３区の６４分前後のタイムは、ほぼ同価値と考えるようになり、その後２０年以上いろいろな選手のタイムを見てきましたけど、この基準は変わることはありませんでした。

ヴィンセント選手と山崎選手のタイム差は、２区で３分３４秒、３区で４分４０秒もあり、ちょっとレベル差が大き過ぎますが、ここでもやはり２区の方が差が縮まっています。

ヴィンセント選手は来年は４区を走りたいとコメントしていたので、往路の平地区間では２区に次いで難しいとされる４区で鍛えて、再来年にまた２区に帰ってきて欲しいですね。

その時こそ６４分台を期待しています。

ヴィンセント選手は、留学生初のＭＶＰの受賞となりましたが、これについてＹａｈｏｏのコメント欄で、外国人差別と言われそうだから今回は留学生にあげたのではないか、他にも留学生が受賞するべき大会はあった、と的を得たコメントを残した方がいましたが、↑よりも↓の評価が多くついていたのが残念でした。

箱根駅伝好きの人たちには、箱根のＭＶＰというものが、結構いい加減な物である事を知って欲しいと思います。

今大会では明らかに１番レベルの高い選手が受賞したという事と、留学生の初受賞という前例が出来たのが良かったです。

しかし、優勝したチームで優勝に大きな貢献をした選手、今大会で言えば駒大６区の花崎選手や１０区の石川選手が選ばれなかった事に不満な人も多かったと思います。

特に石川選手はド派手な活躍でしたから。

最もレベルの高い走りをした選手を選ぶ「大会ＭＶＰ」と、優勝チームの中から最も優勝に貢献した選手を選ぶ「優勝チームＭＶＰ」は別々の賞として作った方が良いと思うのですが。

１つしかないと、どっちのタイプのＭＶＰを選んでもカドが立ちますから。

・　駒大のＭＶＰ

優勝した駒大のチーム内のＭＶＰは誰か？ときかれれば、おそらくはほとんどの人がアンカーの石川選手の名前を挙げるでしょう。

３分以上の差を逆転する走りは、多くの人に衝撃を与えた事でしょう。

しかし区間タイムの６９分１２秒は、高反発シューズであるヴェイパーフライを使っている事を考慮すれば、そこまでレベルの高い記録とは言えません。

個人的には２区を６７分２７秒で走った田澤選手と、６区を５７分３６秒で走った花崎選手が、駒大の優勝に貢献した選手のトップ２かと思います。

これらの記録も最新の高反発シューズであるアルファフライを使ってのタイムですが、それでも２区の６７分半や６区の５７分半という記録は、１０区ならば６７分台～６８分そこそこに相当すると思います。

もちろん他の区間から正確な予想を出す事は出来ませんし、特に特殊区間の６区から平地区間のタイムは予想出来ません。

花崎選手が１０区を走ったら６８分ジャストが出るというわけではありませんが、しかしタイムの価値という点ではそれくらいのレベルに相当してもおかしくはないと思います。

今回不完全燃焼だった田澤選手には来年は２区の６６分３０秒を目標にして欲しい所です。

そして来年も花崎選手が走ると思われる６区は、高反発シューズ普及以前は、５７分台が山下りの神の領域の記録でした。

高反発シューズで１分伸びるとすれば、その領域は現在ならば５６分台になります。

今回初登場で５７分台中盤を出した花崎選手にはその一番乗りを期待したいです。

・　東洋大　ＶＳ　青学大

１５年大会～２０年大会の間で優勝５回、準優勝１回の成績を残した青学大と、０９年大会～１９年大会で１１大会連続３位以内を記録した東洋大。

近年の箱根駅伝で超強豪校と呼べる実績を持つのはこの２校だけだと思いますが、１５年大会の青学大初優勝以降は、常に青学大が上を行っていました。

東洋大は１５年大会以降も準優勝３回を含めて３位以内５回を記録しているにもかかわらず、一度も勝てなかった青学大に、７年ぶりに勝利したというのは感慨深いです。

今大会では戦いの舞台が３位争いだったというのは少し寂しいところですが、この２校の１０区での競り合いは、近年の箱根駅伝における合計実績トップ２の一騎打ちという感じがして熱かったですね。

前回大会まで行っていた駅伝ＳＬＧでのタイム予想は、今大会では行いませんでしたが、やっていたらどんな予想になっていたのか。

１６年大会～１９年大会では常に青学大が上と予想され、現実でも青学大が勝利。

２０年大会では、ついに東洋大が青学大に４分以上の差をつけて勝つと予想されました。

しかし、現実では１４分近い大差で青学大が勝ち、予想は大外れとなっています。

現実で東洋大が勝った今大会は、もし駅伝ＳＬＧで予想タイムを出していたら、どんな感じになったのか。

今更ながらに気になります。

こういう意味でも、予想が難しくなった要因である厚底高反発シューズや、普段とは違うイレギュラーなシーズンになってしまった原因であるコロナウィルスの存在が憎いです。

・　東洋大　西山選手と吉川選手

３年前の大会では、１区で１年生歴代２位のタイムで区間賞を取った東洋大・西山選手と、４区を１年生歴代最高記録で区間２位で走った同じく東洋大の吉川選手。

準エースや、時にはエースすら出場するハイレベルな区間で、快走を見せた３年前のダブルスーパールーキーが、今大会で最後の箱根を走ったわけですが、吉川選手は４区６位、西山選手は７区１２位に終わり、去年も含めて３年生以降の成績は思わしくなかったですね。

ダブルスーパールーキーが、ダブルスーパーエースへと成長する事はありませんでした。

力を維持し続ける事は難しく、成長し続ける事は更に難しい。

１年時から最終学年まで成長し続けた、かつての東洋大のエース柏原選手や服部勇馬選手の偉大さを、今になって感じてしまいます。

西山選手と吉川選手のマスコミの扱いの差には少し疑問を感じてしまいました。

どうも東洋大のエースは西山選手で、吉川選手は何人もいる主力選手の１人としか扱われていなかったような気がします。

２人が快走を連発した２年生までの箱根の実績は

１年生

西山選手　１区区間１位　６２分１６秒

吉川選手　４区区間２位　６２分２２秒

２年生

西山選手　１区区間１位　６２分３５秒

吉川選手　３区区間４位　６２分３３秒

となっています。

１区と４区は同じレベルの選手が力を発揮した場合は、似たようなタイムになる傾向にあるので、１年時はまさに互角。

２年時は、１区の西山選手はレース展開の影響もあってタイムの評価が難しいですが、３区の吉川選手は前年と同等かそれ以上のパフォーマンスを発揮していると思います。

３区のタイムは、同じレベルの選手が１区や４区で力を発揮した時よりも、すこし余計にかかる印象ですから。

２年時までの実績はほぼ互角。少なくとも吉川選手が西山選手に大きく劣るという事はないでしょう。

３年時に区間二桁の失敗をしてしまうのも共通点。

区間賞の獲得経験の有無なのか、吉川選手が２年時に、青学大・森田選手に力の差を見せつけられて抜かれてしまった印象が強いからなのか、理由はわかりませんが、どうもマスコミの吉川選手の評価が低いのが気になってしまいました。

吉川選手は、全日本８区の日本人１年生最高記録を出した事もある選手ですし、もう少し大きく扱ってくれても良かったと思うのですが。

・　東洋大・松山選手

松山選手は２区で６７分１５秒を記録し、前回で青学大・岸本選手が残した日本人１年生最高記録に１２秒差に迫る走りを見せました。

前回と比べると気象条件の悪い中での快走ですから、岸本選手の記録に並ぶか、あるいは超えた可能性すらあったでしょう。

前回の岸本選手は拓大・ラジニ選手に４５秒負けていましたが、今大会の松山選手はラジニ選手に２秒勝っています。

ラジニ選手が前回と同等のパフォーマンスを発揮していたとは流石に思えませんが、１年生で６６分１０秒台を記録した事もある怪物に、日本人１年生が勝利したのは見事でした。

・　１０区の距離

１９９９年大会から１０区は現行の２３ｋｍのコースとなりましたが、これまでは優勝争いにおいては１０区の距離が２３ｋｍであろうとも、旧コースと同じ２１．３ｋｍであろうとも、大きな違いはなかった事でしょう。

しかしコース変更から２２年が経った今大会では、距離の違いは優勝争いにも大きな影響を与えていたと思います。

石川選手が小野寺選手を捕らえたのは２０．９ｋｍ手前。

ということは、１０区の距離が２１．３ｋｍでも計算上は追いついていた事になります。

しかし、小野寺選手のペースを見ると、

４１分１８秒（１ｋｍ平均約３分０６秒）　１３．３ｋｍ　八ツ山橋

４６分３１秒（１ｋｍ平均約３分０６秒）　１５ｋｍ

５１分２１秒（１ｋｍ平均約３分０６秒）　１６．５ｋｍ　田町

５６分５５秒（１ｋｍ平均約３分０８秒）　１８．１ｋｍ　御成門

７３分２３秒（１ｋｍ平均約３分１１秒）　１０区区間タイム

田町以降の終盤に大きく落ちているので、残りの距離の長さに心が折れていたようにも見えました。

田町～御成門は１．６ｋｍに５分３４秒を要し、１ｋｍ平均で約３分２８秒のペースです。

２１．３ｋｍと２３ｋｍでは８％程度の差ですが、１６ｋｍ以降だけで比べた場合、５．３ｋｍと７ｋｍでは３２％も距離が違います。

通常ならば２１．３ｋｍでも２３ｋｍでもそう大きな違いはなく、実際にこれまでは、シード争いはともかく、優勝争いではこの距離の差は問題にはなりませんでしたが、今大会では、１０区がもしも２１．３ｋｍだったら、創価大がギリギリ逃げ切っていた可能性もあったのではないかと思います。

優勝した駒大に１０区の距離が味方をしていたのは間違いないでしょう。

ちなみに１０区が現在のコースになった１９９９年大会は、駒大が優勝候補の絶対的な大本命でした。

１０区の新コースは駒大初優勝のビクトリーロードになる予定でしたが、結果は２位。

１０区逆転優勝も２０年ぶりでしたが、２２年前の屈辱も同時に晴らした今大会の駒大は、リベンジを達成した感が凄かったですね。

あとは相手が創価大ではなく順大だったら、更に燃える展開だったのですが。

・　往路のゲスト

テレビ放送の往路のゲストといえば、元学生長距離界の大エースが登場する、華のポジションです。

今年往路のテレビ放送のゲスト２人は東洋大・相澤選手と國學院大・浦野選手。

相澤選手のゲスト出演は当然ですが、もう１人がなぜ東京国際大・伊藤選手ではなかったのか。

浦野選手も優秀な実績を残した選手ですが、前回２区で相澤選手と名勝負を繰り広げた伊藤選手こそ、もう１人のゲストに誰よりも相応しかったはずです。

１２月の日本選手権１万ｍでは、相澤選手と伊藤選手は、両者共に日本新記録で優勝を争っていましたが、その走りを見た時には、往路のゲスト２人は間違いなく１００％、相澤選手と伊藤選手だと思いました。

かつて２０００年大会でも、前年に大活躍した順大・三代選手と、駒大・藤田選手が間違いなく往路のゲストだろうと予想したけど、藤田選手はなぜか走った事のない復路のゲストとして登場していました。

こういう変わった例はあるものの、伊藤選手は復路にすら出なかったのは意外でした。

前回大会で一番熱い走りをした選手だと思ったのですが。

・　大会全体の感想

持ちタイムでは史上最速だった今大会の参加チームですが、総合優勝タイムも、シードラインのタイムもそれほどは伸びず、データ上の戦力と比べると、向かい風の影響を考慮しても、どうも物足りない結果となりました。

今シーズンはコロナ禍という特殊な状況ですから、表面上の個人データは伸ばせても、チームとしての真の強さを身に着けるのは難しかったのかも知れません。

そこに気象条件の悪化も重なってしまったのは不運でした。

タイムのレベル以外にも、明大の１１位は衝撃的な結果でした。

前回大会まで１万ｍ平均順位や、全日本順位から、箱根でシードを獲得できる確率を計算していましたが、ここ２０年で、全日本チャンピオンが箱根でシード落ちした例は３例もありますが、１万ｍ平均１位がシード落ちした例はありませんでした。（げつりく付録観戦ガイドのチームエントリー前のデータ）

つまり１万ｍ平均順位は、時には全日本順位以上に箱根の予想の役に立つ物でした。

しかし今大会では、１万ｍ平均１位（チームエントリー後は２位だけど）の明大が１１位となり、ついに１万ｍ平均順位のトップチームがシード落ち。

逆に、１万ｍ平均タイム順位では１０位（チームエントリー後は１３位）の創価大が準優勝する結果になっています。

これらは箱根の常識が通用しない大会であった事を意味しています。

今大会では、２０２０年大会以降の新しい時代の箱根を学び、今後の予想のための新しい基準を作ろうと、選手の走力と、区間タイムを照らし合わせながら鑑賞していましたが、気象条件の悪さもあってタイムの価値が良くわからず　あまり勉強にならない大会でした。

来年は、しっかりとしたチーム作りをし、気象条件の良い中で、思いっきり力を発揮する選手達の走りを見てみたいです。

そういった走りをしてもらわないと、高反発シューズの効果が良くわからないという問題もあります。

今のところ、アバウトに１区間１分くらいと考えていますが、もうちょっと詳しくシューズの効果を知りたいところです。

今大会では気象条件の悪さや、有力チームが失速する中で間隙を縫う形でトップを走り続けた創価大の真価は、来年以降の通常の気象条件の中でどれくらいのタイムを出せるかでわかるでしょう。

１９９６年大会の中大を応援するところから私の箱根オタク人生は始まっているので、個人的に榎木監督のファンです。

次は１０時間５０分を切れるチームを作って、大会をまた沸かせて欲しいですね。

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