2021年大会の感想 (2)
マニアックな感想です
目次
① シード変動ラインの動き(10位以内からは11位との差、11位以下からは10位との差、これの20チーム10区間の動き)
② 平均区間順位
・ シード変動ラインの動き
シード変動ラインとは私が勝手に作った造語です。
10位以内のチームにとっては11位が、11位以下のチームにとっては10位がシード変動ラインになります。
シード変動10位ラインとシード変動11位ラインの2つ存在します。
この2つのラインが近づき、重なり、踏み越えた時にシード圏内/圏外が入れ替わります。
20チーム10区間のシード変動ラインとの差を調べました。
1位駒大 | 1:03:47 | 2:11:14 | 3:13:36 | 4:17:45 | 5:30:29 | 6:28:05 | 7:32:00 | 8:36:48 | 9:46:52 | 10:56:04 |
11位ラインとの差 | -0:00:22 | -0:02:59 | -0:03:02 | -0:04:43 | -0:06:02 | -0:06:53 | -0:07:42 | -0:08:06 | -0:10:11 | |
10位ラインとの差 | 0:00:16 | |||||||||
2位創価大 | 1:03:15 | 2:10:33 | 3:13:14 | 4:16:03 | 5:28:08 | 6:26:57 | 7:30:09 | 8:35:19 | 9:43:33 | 10:56:56 |
11位ラインとの差 | -0:00:16 | -0:01:03 | -0:03:21 | -0:04:44 | -0:07:04 | -0:07:10 | -0:08:44 | -0:09:11 | -0:11:25 | -0:09:19 |
10位ラインとの差 | ||||||||||
3位東洋大 | 1:03:24 | 2:10:39 | 3:14:34 | 4:18:13 | 5:30:22 | 6:30:27 | 7:35:21 | 8:39:36 | 9:49:44 | 11:00:56 |
11位ラインとの差 | -0:00:07 | -0:00:57 | -0:02:01 | -0:02:34 | -0:04:50 | -0:03:40 | -0:03:32 | -0:04:54 | -0:05:14 | -0:05:19 |
10位ラインとの差 | ||||||||||
4位青学大 | 1:03:18 | 2:11:47 | 3:16:35 | 4:19:44 | 5:35:43 | 6:33:56 | 7:37:10 | 8:41:39 | 9:50:59 | 11:01:16 |
11位ラインとの差 | -0:00:13 | -0:01:03 | -0:00:11 | -0:01:43 | -0:02:51 | -0:03:59 | -0:04:59 | |||
10位ラインとの差 | 0:00:13 | 0:01:19 | 0:00:42 | |||||||
5位東海大 | 1:03:05 | 2:10:35 | 3:12:40 | 4:18:23 | 5:31:35 | 6:30:20 | 7:34:35 | 8:41:13 | 9:51:35 | 11:02:44 |
11位ラインとの差 | -0:00:26 | -0:01:01 | -0:03:55 | -0:02:24 | -0:03:37 | -0:03:47 | -0:04:18 | -0:03:17 | -0:03:23 | -0:03:31 |
10位ラインとの差 | ||||||||||
6位早大 | 1:03:17 | 2:11:34 | 3:15:03 | 4:18:06 | 5:35:12 | 6:34:07 | 7:38:29 | 8:43:24 | 9:52:52 | 11:03:59 |
11位ラインとの差 | -0:00:14 | -0:00:02 | -0:01:32 | -0:02:41 | -0:00:24 | -0:01:06 | -0:02:06 | -0:02:16 | ||
10位ラインとの差 | 0:00:11 | 0:00:11 | ||||||||
7位順大 | 1:03:31 | 2:11:36 | 3:15:01 | 4:18:36 | 5:33:31 | 6:31:37 | 7:36:57 | 8:42:29 | 9:53:06 | 11:04:03 |
11位ラインとの差 | 0:00:00 | -0:01:34 | -0:02:11 | -0:01:41 | -0:02:30 | -0:01:56 | -0:02:01 | -0:01:52 | -0:02:12 | |
10位ラインとの差 | 0:00:02 | |||||||||
8位帝京大 | 1:03:35 | 2:11:51 | 3:14:47 | 4:18:47 | 5:30:39 | 6:33:50 | 7:38:18 | 8:43:24 | 9:52:49 | 11:04:08 |
11位ラインとの差 | -0:01:48 | -0:02:00 | -0:04:33 | -0:00:17 | -0:00:35 | -0:01:06 | -0:02:09 | -0:02:07 | ||
10位ラインとの差 | 0:00:04 | 0:00:17 | ||||||||
9位國學院大 | 1:03:32 | 2:12:46 | 3:16:40 | 4:21:27 | 5:34:52 | 6:33:31 | 7:37:48 | 8:43:07 | 9:54:07 | 11:04:22 |
11位ラインとの差 | -0:00:20 | -0:00:36 | -0:01:05 | -0:01:23 | -0:00:51 | -0:01:53 | ||||
10位ラインとの差 | 0:00:01 | 0:01:12 | 0:01:24 | 0:01:43 | ||||||
10位東京国際大 | 1:03:45 | 2:09:34 | 3:13:40 | 4:18:10 | 5:32:06 | 6:33:15 | 7:36:25 | 8:42:53 | 9:54:20 | 11:05:49 |
11位ラインとの差 | -0:02:02 | -0:02:55 | -0:02:37 | -0:03:06 | -0:00:52 | -0:02:28 | -0:01:37 | -0:00:38 | -0:00:26 | |
10位ラインとの差 | 0:00:14 | |||||||||
11位明大 | 1:04:06 | 2:13:54 | 3:18:37 | 4:22:29 | 5:36:03 | 6:35:49 | 7:40:33 | 8:44:32 | 9:54:58 | 11:06:15 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:00:35 | 0:02:20 | 0:03:21 | 0:02:45 | 0:01:02 | 0:01:53 | 0:02:04 | 0:01:08 | 0:00:38 | 0:00:26 |
12位中大 | 1:04:17 | 2:13:55 | 3:18:57 | 4:22:51 | 5:39:17 | 6:38:02 | 7:42:09 | 8:47:17 | 9:57:25 | 11:07:56 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:00:46 | 0:02:21 | 0:03:41 | 0:03:07 | 0:04:16 | 0:04:06 | 0:03:40 | 0:03:53 | 0:03:05 | 0:02:07 |
13位神奈川大 | 1:03:16 | 2:10:49 | 3:15:14 | 4:19:21 | 5:33:40 | 6:33:06 | 7:38:53 | 8:44:30 | 9:58:57 | 11:08:55 |
11位ラインとの差 | -0:00:15 | -0:00:47 | -0:01:21 | -0:01:26 | -0:01:32 | -0:01:01 | ||||
10位ラインとの差 | 0:00:24 | 0:01:06 | 0:04:37 | 0:03:06 | ||||||
14位日体大 | 1:03:22 | 2:10:36 | 3:15:16 | 4:20:47 | 5:36:38 | 6:37:00 | 7:41:25 | 8:48:31 | 9:58:20 | 11:10:24 |
11位ラインとの差 | -0:00:09 | -0:01:00 | -0:01:19 | |||||||
10位ラインとの差 | 0:01:03 | 0:01:37 | 0:03:04 | 0:02:56 | 0:05:07 | 0:04:00 | 0:04:35 | |||
15位拓大 | 1:03:31 | 2:10:48 | 3:16:53 | 4:22:11 | 5:35:01 | 6:36:05 | 7:41:26 | 8:47:43 | 9:59:14 | 11:10:47 |
11位ラインとの差 | -0:00:48 | -0:00:11 | ||||||||
10位ラインとの差 | 0:00:00 | 0:01:37 | 0:02:27 | 0:02:09 | 0:02:57 | 0:04:19 | 0:04:54 | 0:04:58 | ||
16位城西大 | 1:03:21 | 2:11:33 | 3:17:01 | 4:22:41 | 5:35:44 | 6:34:55 | 7:39:57 | 8:47:15 | 9:58:18 | 11:11:20 |
11位ラインとの差 | -0:00:10 | -0:00:03 | ||||||||
10位ラインとの差 | 0:01:45 | 0:02:57 | 0:00:43 | 0:00:59 | 0:01:28 | 0:03:51 | 0:03:58 | 0:05:31 | ||
17位法大 | 1:03:00 | 2:13:39 | 3:18:22 | 4:22:31 | 5:37:14 | 6:37:29 | 7:43:23 | 8:49:32 | 10:01:52 | 11:13:30 |
11位ラインとの差 | -0:00:31 | |||||||||
10位ラインとの差 | 0:02:05 | 0:03:06 | 0:02:47 | 0:02:13 | 0:03:33 | 0:04:54 | 0:06:08 | 0:07:32 | 0:07:41 | |
18位国士大 | 1:04:34 | 2:11:43 | 3:18:05 | 4:22:43 | 5:37:48 | 6:36:48 | 7:42:07 | 8:49:02 | 10:02:13 | 11:14:07 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:01:03 | 0:00:09 | 0:02:49 | 0:02:59 | 0:02:47 | 0:02:52 | 0:03:38 | 0:05:38 | 0:07:53 | 0:08:18 |
19位山梨学大 | 1:05:04 | 2:15:23 | 3:20:36 | 4:22:51 | 5:38:38 | 6:37:44 | 7:43:59 | 8:51:57 | 10:04:54 | 11:17:36 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:01:33 | 0:03:49 | 0:05:20 | 0:03:07 | 0:03:37 | 0:03:48 | 0:05:30 | 0:08:33 | 0:10:34 | 0:11:47 |
20位専大 | 1:04:59 | 2:16:29 | 3:23:11 | 4:30:41 | 5:49:56 | 6:50:13 | 7:57:20 | 9:04:33 | 10:16:51 | 11:28:26 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:01:28 | 0:04:55 | 0:07:55 | 0:10:57 | 0:14:55 | 0:16:17 | 0:18:51 | 0:21:09 | 0:22:31 | 0:22:37 |
上位5校の中で、優勝した駒大と4位青学大はシード圏外で終えた区間がありますが、2位創価大、3位東洋大、5位東海大はずっとシード圏内をキープする走りをしています。
特に創価大は9区までは一貫してリードを増やし続ける走りをしていて、リードを減らした区間が2つある東洋大、東海大と比べても、安定感が全く違いました。
最後の最後でドカッと吐き出すわけですが、9区までならばパーフェクト。
箱根のアンカー区間は、9区までの勢いで「はずみ」で好走したりブレーキしたりをしやすい区間なのですが、この創価大が最後に区間最下位に沈んでしまったのは、残念というか、不思議としか言いようがないです。
1位駒大と5位東海大の3区は、約2分半~約3分のメリットをチームにもたらしていて、区間2位の駒大・小林選手と、区間賞の東海大・石原選手は、このハイレベルな区間で出色の活躍を見せていました。
これにはシード変動11位ラインの動きが鈍かった事も理由ですが、ここで稼いだリードに東海大は救われる事になります。
東海大は、3区終了時のリードとほとんど変わらない差でゴールしているので、3区以降はずっと石原選手の作ったリードに守られてレースを進めていました。
4位青学大は、5区のブレーキで優勝争いから脱落しましたが、シード争いにおいてはまだ致命傷ではありませんでした。
3位東洋大や5位東海大が、復路ではシード変動11位ラインと同じ程度のスピードで走っているのに対して、青学大の復路は流石は優勝候補という走りを見せて、復路優勝を達成しています。
9位國學院大は、4区を終えて10位ライン+1分43秒から、5区の殿地選手が1人で2分03秒のメリットをもたらす走りで、一気にシード圏内に入りました。
その後は圏内をずっとキープしてシードを獲得しています。
大活躍した殿地選手ですが、区間上位の成績ではなく、区間8位。
駅伝の流れは複雑です。
シード争いの10位東京国際大と11位明大は、2区の影響が何より大きいでしょう。
2区を終えて11位ライン-2分02秒の1位東京国際大と、10位ライン+2分20秒の17位明大は、ほぼ真逆の位置。
その後この2チームは近づいていき、最終的に10位ライン、11位ラインそのものとなり、26秒差まで接近したものの、ラインが重なる事はなくゴールを迎えました。
12位と13位の中大と神奈川大も面白い動きをしています。
中大は往路を終えて10位ライン+4分16秒という、シードが絶望的な苦しい位置でしたが、復路では2分以上も差を詰める猛追を見せて、復路3位の成績を残しました。
神奈川大は6区までシード圏内をキープする好走を見せ、圏外に落ちた7区と8区もまだシードを狙える位置でしたが、9区のブレーキで望みは潰えました。
しかし、10区では区間2位の快走で1分半も差を詰めて、最後の意地を見せています。
15位拓大は4区を終えて10位ライン+2分27秒から、5区の快走で一気にシード圏内に飛び込みました。
しかし、11位ライン-11秒でスタートした復路は、6区であっさりシード圏外に後退する結果になっています。
大きな動きではありませんが、個人的には、7位順大の4年生で6区を走った清水選手が、11位ライン-1分41秒から-2分30秒にリードを増やす活躍を見せたのが印象的でした。
清水選手は3年前には7区を走り、区間18位のブレーキを起こして圏内から11位へと転落。
スピードの上がらない清水選手は、11位ライン自体も大きく後退させてしまいました。
順大がシードを逃しただけではなく、他のチームが11位ラインの動きが鈍った7区でリードを稼ぎ、逃げ切るという、他チームにシード権をプレゼントしてしまうような走りでした。
その後は箱根では山下りの専門選手となったものの、区間成績はずっと二桁ばかりでしたが、最後の最後で区間2位の快走でチームに借りを返しました。
こういうシーンを見れるのが学生スポーツの醍醐味という気がします。
箱根駅伝のロマンを感じました。
シード変動11位ラインの動き
これはシード圏内から見て、後方のシード変動11位ラインを離す事もなければ詰められる事もない、引き分けタイムになります。
2区 68分05秒 区間10位相当
3区 64分59秒 区間15位相当
4区 64分12秒 区間13位相当
5区 74分25秒 区間12位相当
6区 58分55秒 区間8位相当
7区 64分46秒 区間12位相当
8区 65分37秒 区間11位相当
9区 70分28秒 区間11位相当
10区 71分17秒 区間10位相当
圏内から見た11位ラインの動きは、普通は勝負どころになる3区~5区で、区間15位相当、区間13位相当、区間12位相当となっています。
グチャグチャの乱戦という印象です。
特に3区は後述する10位ラインの動きと比べると1分17秒も遅く、東海大・石原選手や駒大・小林選手が、ここで2分半~3分弱も、ドカっと大差を稼ぐ事が出来たのは、11位ラインの動きが鈍かった事も理由です。
11位ラインと10位ラインで1分以上タイム差があるのは3区だけでした。
最もレベルの高かった区間は6区で、早大の1年生北村選手のタイムがそのまま11位ラインのタイムとなっています。
レース展開は複雑そのもので、途中で青学大・高橋選手に並ばれ、その後青学大を突き放し、拓大を抜いて10位に上がり、その後、青学大に抜かれて11位に戻るレース展開だったので、北村選手のタイムが11位ラインのタイムではあっても、北村選手の動きが11位ラインの動きというわけではありません。
11位を走っていた青学大を、城西大・野村選手が一時的に抜く場面もあったので、11位ラインは、早大→早大と青学大→早大→拓大→青学大→城西大→青学大と何度も入れ替わっています。
最終的には早大が11位に戻ったため、11位でスタートして11位で次の区間につないだ北村選手の区間タイムである58分55秒が、そのまま11位ラインのタイムになりました。
めちゃくちゃ複雑なレース展開なのに、わかりやすいシンプルな結果になりました。
シード変動10位ラインの動き
これはシード圏外から見て、前方のシード変動10位ラインに離される事もなければ詰める事もない、引き分けタイムになります。
2区 68分03秒 区間10位相当
3区 63分42秒 区間7位相当
4区 64分28秒 区間13位相当
5区 75分17秒 区間15位相当
6区 58分55秒 区間8位相当
7区 64分33秒 区間11位相当
8区 64分55秒 区間5位相当
9区 70分56秒 区間12位相当
10区 71分29秒 区間12位相当
11位ラインとの一番の大きな違いは3区です。
3区では11位ラインが区間15位相当の64分59秒に対して、10位ラインは区間7位相当の63分42秒となっています。
10位ラインの少し後方でスタートした帝京大・遠藤選手、順大・伊豫田選手がシード圏外から圏内に順位を上げていますが、15位スタートの國學院大・臼井選手は63分54秒の区間7位の好成績でも、前方の10位ラインには12秒引き離されています。
ちなみに3区を圏内で走っていた東洋大・前田選手は63分55秒区間8位の成績でも、後方の11位ラインを1分以上突き放す大活躍でした。
10位でスタートした早大・中谷選手が63分29秒で走り、11位スタートの伊豫田選手と14位スタートの遠藤選手が、それぞれ63分25秒、62分56秒の好タイムを出してシード圏内に飛び込んだ事により、10位ラインが高速化しました。
シード圏外でスタートしたチームの多くは、10位ラインを追いかけるのが大変だったことでしょう。
6区は10位ラインと11位ラインが共に58分55秒で動くという珍しい現象が発生していました。
11位ラインは、11位でスタートして11位で次につないだ早大・北村選手のタイムそのままですが、10位ラインは特定の選手の区間タイムではなく、10位スタートで61分04秒の拓大・佐々木選手→11位スタートで58分55秒の北村選手→12位スタートで58分13秒の青学大・高橋選手と入れ替わり、最終的な10位ラインのタイムは58分55秒となっています。
区間タイムが58分55秒の北村選手が、約13kmに渡って10位を走っていた影響もあったかも知れませんが、10位ラインと11位ラインがぴったり同じというのも面白い偶然です。
8区は10位ラインでは最高成績の区間5位相当となっています。
8区の10位ラインを動かしたのはほぼ早大・千明選手です。
千明選手は10位でスタートして、9位の帝京大に追いついて次の区間につなぎました。同タイム9位なのでここは9位ラインです。正確には、千明選手のほうが僅かに前だったので、10位ラインの位置は帝京大に移っていましたが。
シード争いの終盤に差し掛かる8区で、10位ラインにこの速さで逃げられると、11位以下のチームにとっては苦しくなるだろう、というのが一般的な見方ですが、今大会の8区をシード圏外でスタートしたチームの中にはしぶとい走りで抵抗した選手もいます。
11位スタートの神奈川大・安田選手が10位ラインとの差を24秒→1分06秒に広げられたものの、まだシード獲得に望みをつなげる差で粘り、17位スタートの中大・三浦選手は10位ラインに僅か13秒の遅れを取るだけで走り切っています。
13位スタートの明大・大保選手に至っては、区間賞を獲得して2分04秒→1分08秒まで差を詰めて、チーム順位も12位に上げました。
最終的に明大、中大、神奈川大はシード権を逃しますが、10位に入った東京国際大を、平均区間順位で上回る健闘を見せました。
8区の3チームの走りに、その一端を垣間見た気がします。
・ 平均区間順位
公式参加20チームの平均区間順位を調べました。
総合成績の順に並べました。()内は平均区間順位の順番です。
1位 駒大 5.5 (2)
2位 創価大 5.4 (1)
3位 東洋大 7.4 (4)
4位 青学大 7.0 (3)
5位 東海大 8.0 (6)
6位 早大 7.8 (5)
7位 順大 8.7 (7)
8位 帝京大 8.9 (8)
9位 國學院大 9.2 (9)
10位 東京国際大 10.7 (13)
11位 明大 10.6 (11)
12位 中大 10.3 (10)
13位 神奈川大 10.6 (11)
14位 日体大 12.0 (14)
15位 拓大 13.0 (15)
16位 城西大 13.4 (17)
17位 法大 13.2 (16)
18位 国士大 14.1 (18)
19位 山梨学大 15.5 (19)
20位 専大 18.3 (20)
大荒れだった今大会は、平均区間順位からもその傾向が見て取れます。
優勝争いを繰り広げた駒大と創価大、3位争いの東洋大と青学大、5位と6位に入った東海大と早大。
いずれも、総合順位で負けたチームが平均区間順位の順番では勝つという、ねじれ現象が発生しています。
創価大は優勝は逃したものの、平均区間順位5.4は、駒大を0.1抑えてトップになりました。
しかも9区終えた時点で、創価大の合計区間順位は34であり、54の駒大に対して20以上の差をつけているため、最終区間を残して10区間の平均区間順位で駒大を上回る事を確定させてしまいました。
9区までに限定すれば、2位以下とは格の違う強さを見せた創価大の走りはまさに横綱相撲でした。
そして最後は駒大に敗れ、ほぼ横綱相撲をしたチームが準優勝、という不思議な結果を残す事になりました。
シード争いにおいては、総合10位の東京国際大を、シードを逃した総合11位の明大が上回り、更に総合12位の中大はその明大をも上回りました。
総合13位の神奈川大も明大と並んでいます。
東京国際大は総合順位は10位でも平均区間順位の順番は13番です。
2区で区間新記録を出して区間賞を取ったヴィンセント選手は、区間2位に1分20秒の大差をつけました。
2区はエースが集まるだけに、差はあまりつかないケースが多いですが、1分20秒という差は、区間2位から区間14位までの差と全く同じです。
エースがここでタイムを稼いだ影響は大きいでしょう。
2区だけがすべてではありませんが、ヴィンセント選手の区間順位を区間マイナス4位(?)とした場合、東京国際大の平均区間順位の順番を10番にする事ができます。
単なる区間1位以上の働きをしていたのは間違いないでしょう。
余談ですが、専門学生時代の先生が、「99点で満足するな!100点を取りなさい。なぜなら99点は99点の価値しかないが、100点を取れる生徒は150点、200点のポテンシャルがあるのかも知れないのだから」と熱く語っていたのを思い出しました。
ヴィンセント選手の走りはそれに通じる物がありますね。
東京国際大の他に、総合順位と平均区間順位の順番が2つ以上離れているチームは、総合12位で平均区間順位の順番10番の中大と、総合13位で平均区間順位の順番11番の神奈川大です。
中大と東京国際大の関係は、5区と6区の影響が大きそうです。
5区では東京国際大が2分30秒勝ち、逆に6区では中大が2分24秒勝ち、山の2区間はタイムの上ではほぼ互角でしたが、区間順位の差は、5区では東京国際大が8、6区では中大が14勝っており、ここで両校のタイム差はほぼ変わっていないのに区間順位だけは中大が差し引き6つも勝ってしまいました。
山上りは差がつきやすく、山下りは差がつきにくいというのが箱根の常識ですが、そのまま影響した感じです。
神奈川大は9区の失敗が大きいと思います。
区間20位ですが、区間19位にも1分16秒も離されるタイムに終わり、ここで東京国際大との差は、区間順位では6つの差ですが、タイムは3分も開かれています。
ねじれてこじれて大混乱の今大会の上位争いは、確かに面白いといえば面白かったですが、個人的には絶対的な王者が他を圧倒するような走りが好みです。
優勝した駒大の平均区間順位5.5は、過去10大会の中で最下位です。
次に悪いのが2013年大会の日体大と、2017年大会の青学大の3.8なので、ぶっちぎりです。
11大会前の2010年大会で優勝した東洋大が5.9でしたので、11大会ぶりに優勝チームの平均区間順位が5台にまで下がってしまいました。
過去20大会まで広げてみても、2006年大会の亜大の優勝時の6.9、東洋大初優勝の2009年大会の6.1、東洋大2連覇の2010年大会の5.9についで、下から数えて4番目のレベルです。
亜大の優勝は世紀の大番狂わせの年ですし、東洋大初優勝の時も優勝候補とは言われていませんでした。
東洋大2連覇の時も、そこまで戦力は高くはありません。東洋大が超強豪校と呼べる戦力を持ったのはその翌年からです。
しかし今年の優勝チームが、過去の平均区間順位5台後半~6台で優勝したチームと大きく違ったのは、駒大が全日本の優勝チームであり、1万m平均タイムで1位(公式ガイドブックのチームエントリー後のデータ)だったという事です。
箱根を予想する上で、全日本チャンピオンであると同時に1万m平均1位でもあるチームは、優勝候補筆頭と考えるのが普通です。
今大会は番狂わせではなく、優勝候補筆頭が優勝したのに、平均区間順位が5.5というレベルだったというのが過去とは違うところです。
本当に不思議な大会でした。
かつて青学大と東洋大が、高反発シューズがなかった時代に10時間49分台~53分台を記録して圧勝した年がありましたが、その時の平均区間順位は、
51分台を出した2012年大会の東洋大が2.0
52分台を出した2014年大会の東洋大が2.2
49分台を出した2015年大会の青学大が1.9
53分台を出した2016年大会の青学大が2.0
となっています。
ちなみにこの上記4例を含む過去10大会の中で、5番目に良かったのは2011年大会の早大で3.3なので、東洋大と青学大が残した記録は、タイムもさる事ながら、区間順位も尋常ではないレベルです。
平均区間順位で2前後を記録する王者の走りをまた見てみたいですね。
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