2022年大会の感想 (2)
マニアックな感想です
目次
① シード変動ラインの動き(10位以内からは11位との差、11位以下からは10位との差、これの20チーム10区間の動き)
② 区間順位の謎
③ 順位別歴代タイム
④ 平均区間順位
・ シード変動ライン
シード圏内を走るチームにとっては11位、シード圏外を走るチームにとっては10位がシード変動ラインになります。
11位ラインと10位ラインの2つがあり、圏内のチームは11位ラインから逃げ、圏外のチームは10位ラインを追いかけます。
圏内と圏外では相手が違うというのはシード争いの重要なポイントです。
極端な話、10位ラインが区間賞相当のタイムで、11位ラインが区間20位相当のタイムだった場合、圏内のチームは区間19位でも後方の11位ラインを突き放す事ができ、圏外のチームは区間2位でも前方の10位ラインに差を広げられてしまいます。
まずは、11位ラインと10位ラインの動きです。
1区 | 2区 | 3区 | 4区 | 5区 | 6区 | 7区 | 8区 | 9区 | 10区 | |
11位ライン | 1:02:03 | 1:07:29 | 1:03:32 | 1:02:55 | 1:13:16 | 0:59:01 | 1:04:09 | 1:06:14 | 1:09:28 | 1:11:31 |
区間11位相当 | 区間11位相当 | 区間12位相当 | 区間10位相当 | 区間10位相当 | 区間8位相当 | 区間8位相当 | 区間13位相当 | 区間8位相当 | 区間18位相当 | |
10位ライン | 1:02:03 | 1:07:14 | 1:03:38 | 1:02:56 | 1:13:23 | 0:58:53 | 1:04:06 | 1:05:42 | 1:09:40 | 1:11:11 |
区間10位相当 | 区間11位相当 | 区間14位相当 | 区間10位相当 | 区間11位相当 | 区間6位相当 | 区間6位相当 | 区間7位相当 | 区間9位相当 | 区間18位相当 |
※今年の1区は10位と11位が同タイム
11位ラインのタイムは、シード圏内から見て、後方のシード変動ラインを離す事もなければ詰められる事もないタイムです。
10位ラインのタイムは、シード圏外から見て、前方のシード変動ラインに離される事もなければ詰める事もないタイムです。
2つのシード変動ラインは全部の区間で同じような動きでした。
8区は10位ラインが区間7位相当で、11位ラインは区間13位相当となっていますが、タイム差は32秒であり、それほど大きくはありません。
これが全区間で最大の差でした。
復路では6区、7区、9区で、区間一桁相当 VS 区間一桁相当の戦いになっていて、レベルの高いシード争いでした。
一転して最終区間はどちらも区間18位相当。
タイム差は20秒ありますが、どちらも区間17位(71分09秒)と区間18位(72分20秒)の間のタイムです。
双方が区間一桁相当の好走で攻防を繰り広げていた復路の戦いの最後にしては、やや物足りないですね。
タイムを見ると、2区は10位ラインと11位ラインの両方が67分台前半で動いていて、やはり他の区間とはレベルが違います。
3区以降のシード変動ラインのタイムは、2区と比べるとかなりレベルが下がります。
3区は今やエース区間と呼んでも良いほどレベルが高く、区間賞タイム(60分55秒)は2区の区間賞タイム(66分13秒)と比べても大きくは劣らない価値の記録でしょう。
しかしシード変動ラインとなると、一般的に3区以降は強豪チームの強豪選手はすでに上位を走っているケースが多くなりますから、シード争いに強豪選手ががっつり絡むケースが減ってくるため、レベルは落ち着いてくる傾向です。
今大会は順大・伊豫田選手が3区を61分19秒というスーパーエースクラスのタイムで走破して、17位から10位まで上げ、國學院大の1年生・山本選手も61分59秒のタイムで10位スタートしていますが、それでもシード変動ラインの高速化には繋がっていないのは、2人がラインを動かした距離にあると見ています。
10位スタートの山本選手は上位と僅差だったため藤沢の定点ではすでに5位に上がっていました。テレビに映っていませんが、おそらくは数秒前にいたチームをすぐに抜いて早い段階で9位以内に上がった可能性が高いです。
伊豫田選手は終盤に11位、10位と上がる展開だったので、11位ラインも10位ラインも動かした距離は僅かです。
出入りの激しい3区は流れも複雑です。
5区はシード変動ラインのタイムは2つとも73分台となっています。
若干向かい風があったようですが、それでもこのタイムは2区と比べると3分は落ちるレベルだと思います。
区間上位は70分台が3人も出るなどなかなかハイレベルであり、区間2位で走った東海大・吉田選手は17位から10位に上げ、2つのシード変動ラインの動きにも関わっていますが、終盤に11位ラインと10位ラインを少し動かしただけだったのでラインのスピードアップにはならず、3区と同じような傾向でした。
山上りの5区は考え方によっては最重要区間ですが、今大会ではこの区間でシード変動ラインの動きにやや隙があった印象です。
復路では6区の10位ライン、7区の11位ライン、8区の10位ラインは、それぞれ6区東海大・川上選手、7区法大・中園選手、8区國學院大・石川選手のタイムがそのままシード変動ラインのタイムになっています。
3選手ともその順位を守って走り切ったので、選手の区間タイムがそのままシード変動ラインのタイムになった訳ですが、実際のレース展開は順位変動があった後に元の順位に戻った結果だったので、ラインの動き自体はもっと複雑でした。
特に6区の川上選手は一時13位まで下がり、早大・柳本選手、神奈川大・横澤選手、法大・武田選手がラインを動かした後に、最終的には10位スタートで10位で次につないだ川上選手のタイムがそのまま10位ラインのタイムになっています。
他の選手の飛び出しに惑わされない冷静な走りを見せた川上選手でした。
続いて各チームの動きです。
1位青学大 | 1:01:25 | 2:08:34 | 3:09:34 | 4:11:20 | 5:22:06 | 6:21:09 | 7:23:48 | 8:28:37 | 9:35:52 | 10:43:42 |
11位ラインとの差 | -0:00:38 | -0:00:58 | -0:03:30 | -0:04:39 | -0:07:09 | -0:07:07 | -0:08:37 | -0:10:02 | -0:12:15 | -0:15:56 |
10位ラインとの差 | ||||||||||
2位順大 | 1:03:52 | 2:11:36 | 3:12:55 | 4:14:26 | 5:26:10 | 6:24:32 | 7:28:40 | 8:33:09 | 9:43:48 | 10:54:33 |
11位ラインとの差 | -0:00:09 | -0:01:33 | -0:03:05 | -0:03:44 | -0:03:45 | -0:05:30 | -0:04:19 | -0:05:05 | ||
10位ラインとの差 | 0:01:49 | 0:02:19 | ||||||||
3位駒大 | 1:01:19 | 2:07:32 | 3:11:33 | 4:14:15 | 5:25:34 | 6:24:27 | 7:28:39 | 8:36:26 | 9:45:13 | 10:54:57 |
11位ラインとの差 | -0:00:44 | -0:02:00 | -0:01:31 | -0:01:44 | -0:03:41 | -0:03:49 | -0:03:46 | -0:02:13 | -0:02:54 | -0:04:41 |
10位ラインとの差 | ||||||||||
4位東洋大 | 1:02:07 | 2:09:09 | 3:11:55 | 4:16:12 | 5:28:34 | 6:27:53 | 7:32:06 | 8:37:10 | 9:46:09 | 10:54:59 |
11位ラインとの差 | -0:00:23 | -0:01:09 | -0:00:41 | -0:00:23 | -0:00:19 | -0:01:29 | -0:01:58 | -0:04:39 | ||
10位ラインとの差 | 0:00:04 | 0:00:21 | ||||||||
5位東京国際大 | 1:01:49 | 2:08:51 | 3:09:46 | 4:12:57 | 5:26:55 | 6:26:28 | 7:30:34 | 8:36:11 | 9:46:08 | 10:55:14 |
11位ラインとの差 | -0:00:14 | -0:00:41 | -0:03:18 | -0:03:02 | -0:02:20 | -0:01:48 | -0:01:51 | -0:02:28 | -0:01:59 | -0:04:24 |
10位ラインとの差 | ||||||||||
6位中大 | 1:00:40 | 2:09:32 | 3:12:10 | 4:14:27 | 5:26:25 | 6:25:13 | 7:31:02 | 8:36:04 | 9:44:35 | 10:55:44 |
11位ラインとの差 | -0:01:23 | -0:00:54 | -0:01:32 | -0:02:50 | -0:03:03 | -0:01:23 | -0:02:35 | -0:03:32 | -0:03:54 | |
10位ラインとの差 | 0:00:15 | |||||||||
7位創価大 | 1:02:21 | 2:09:02 | 3:13:04 | 4:14:12 | 5:27:44 | 6:26:48 | 7:30:30 | 8:36:16 | 9:47:03 | 10:56:30 |
11位ラインとの差 | -0:00:30 | -0:01:47 | -0:01:31 | -0:01:28 | -0:01:55 | -0:02:23 | -0:01:04 | -0:03:08 | ||
10位ラインとの差 | 0:00:18 | 0:00:09 | ||||||||
8位國學院大 | 1:01:26 | 2:09:17 | 3:11:16 | 4:13:06 | 5:25:49 | 6:25:51 | 7:32:13 | 8:37:55 | 9:46:02 | 10:57:10 |
11位ラインとの差 | -0:00:37 | -0:00:15 | -0:01:48 | -0:02:53 | -0:03:26 | -0:02:25 | -0:00:12 | -0:00:44 | -0:02:05 | -0:02:28 |
10位ラインとの差 | ||||||||||
9位帝京大 | 1:01:51 | 2:09:01 | 3:10:40 | 4:14:10 | 5:24:43 | 6:24:42 | 7:29:45 | 8:37:06 | 9:47:35 | 10:58:06 |
11位ラインとの差 | -0:00:12 | -0:00:31 | -0:02:24 | -0:01:49 | -0:04:32 | -0:03:34 | -0:02:40 | -0:01:33 | -0:00:32 | -0:01:32 |
10位ラインとの差 | ||||||||||
10位法大 | 1:01:58 | 2:09:09 | 3:12:29 | 4:15:03 | 5:29:36 | 6:28:16 | 7:32:25 | 8:38:45 | 9:48:07 | 10:58:46 |
11位ラインとの差 | -0:00:05 | -0:00:23 | -0:00:35 | -0:00:56 | -0:00:52 | |||||
10位ラインとの差 | 0:00:22 | 0:00:09 | 0:00:12 | 0:00:50 | 0:00:32 | |||||
11位東海大 | 1:01:24 | 2:11:25 | 3:15:11 | 4:18:30 | 5:29:14 | 6:28:07 | 7:31:16 | 8:37:09 | 9:46:45 | 10:59:38 |
11位ラインとの差 | -0:00:39 | -0:00:01 | -0:00:09 | -0:01:09 | -0:01:30 | -0:01:22 | ||||
10位ラインとの差 | 0:02:08 | 0:02:16 | 0:02:39 | 0:00:52 | ||||||
12位神奈川大 | 1:02:03 | 2:10:42 | 3:14:19 | 4:17:27 | 5:29:26 | 6:29:01 | 7:33:40 | 8:39:36 | 9:49:33 | 11:00:00 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:00:00 | 0:01:25 | 0:01:24 | 0:01:36 | 0:00:12 | 0:00:54 | 0:01:27 | 0:01:41 | 0:01:58 | 0:01:14 |
13位早大 | 1:02:23 | 2:11:08 | 3:13:31 | 4:15:51 | 5:29:15 | 6:29:28 | 7:33:16 | 8:38:39 | 9:49:21 | 11:00:03 |
11位ラインとの差 | -0:00:08 | |||||||||
10位ラインとの差 | 0:00:20 | 0:01:51 | 0:00:36 | 0:00:01 | 0:01:21 | 0:01:03 | 0:00:44 | 0:01:46 | 0:01:17 | |
14位明大 | 1:02:13 | 2:11:24 | 3:15:03 | 4:17:26 | 5:32:20 | 6:31:48 | 7:34:50 | 8:40:51 | 9:51:17 | 11:00:28 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:00:10 | 0:02:07 | 0:02:08 | 0:01:35 | 0:03:06 | 0:03:41 | 0:02:37 | 0:02:56 | 0:03:42 | 0:01:42 |
15位国士大 | 1:02:03 | 2:08:44 | 3:12:50 | 4:15:59 | 5:29:49 | 6:29:22 | 7:34:53 | 8:41:37 | 9:50:46 | 11:03:06 |
11位ラインとの差 | 0:00:00 | -0:00:48 | -0:00:14 | |||||||
10位ラインとの差 | 0:00:08 | 0:00:35 | 0:01:15 | 0:02:40 | 0:03:42 | 0:03:11 | 0:04:20 | |||
16位中央学大 | 1:04:47 | 2:15:00 | 3:18:10 | 4:22:47 | 5:36:04 | 6:34:51 | 7:40:06 | 8:46:14 | 9:57:07 | 11:07:33 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:02:44 | 0:05:43 | 0:05:15 | 0:06:56 | 0:06:50 | 0:06:44 | 0:07:53 | 0:08:19 | 0:09:32 | 0:08:47 |
17位日体大 | 1:03:58 | 2:11:19 | 3:14:06 | 4:17:37 | 5:32:07 | 6:33:43 | 7:39:57 | 8:48:46 | 10:00:31 | 11:11:11 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:01:55 | 0:02:02 | 0:01:11 | 0:01:46 | 0:02:53 | 0:05:36 | 0:07:44 | 0:10:51 | 0:12:56 | 0:12:25 |
18位山梨学大 | 1:02:14 | 2:09:03 | 3:13:10 | 4:16:53 | 5:31:42 | 6:31:07 | 7:36:36 | 8:45:52 | 10:00:36 | 11:11:21 |
11位ラインとの差 | -0:00:29 | |||||||||
10位ラインとの差 | 0:00:11 | 0:00:15 | 0:01:02 | 0:02:28 | 0:03:00 | 0:04:23 | 0:07:57 | 0:13:01 | 0:12:35 | |
19位駿河台大 | 1:03:20 | 2:13:39 | 3:17:14 | 4:24:12 | 5:41:11 | 6:39:58 | 7:45:24 | 8:52:20 | 10:03:31 | 11:13:42 |
11位ラインとの差 | ||||||||||
10位ラインとの差 | 0:01:17 | 0:04:22 | 0:04:19 | 0:08:21 | 0:11:57 | 0:11:51 | 0:13:11 | 0:14:25 | 0:15:56 | 0:14:56 |
20位専大 | 1:01:24 | 2:12:28 | 3:19:02 | 4:22:56 | 5:38:46 | 6:38:48 | 7:42:59 | 8:50:28 | 10:01:11 | 11:15:09 |
11位ラインとの差 | -0:00:39 | |||||||||
10位ラインとの差 | 0:03:11 | 0:06:07 | 0:07:05 | 0:09:32 | 0:10:41 | 0:10:46 | 0:12:33 | 0:13:36 | 0:16:23 |
上位では2位の順大の動きがすごいですね。
1区で大きく遅れ、2区では更に差を開かれ、3区の伊豫田選手が走り出した時は10位ラインの後方2分19秒という苦しい位置でしたが、一気に借金を完済して圏内に飛び込むと、4区と5区で1分半ずつ11位ラインを突き放して、安全圏となる11位ライン-3分の貯金をあっさり作ってしまいました。
5区はラインの動きが鈍かった影響もあるでしょうけど、3区、4区はタイムも優れていて、シードを争うレベルのチームとは力が違うといった感じでした。
6位中大は、当然1区ぶっちぎりの吉居選手の快走が素晴らしい。
差のつきにくいこの区間で、2位以下の集団もハイペースで進んだにも関わらず、11位ラインに対して1分23秒も稼いだのは大きいです。
山上りを担当した1年生の阿部選手も快走して、11位ラインが73分台だった事もあって1分18秒も稼いでいます。
2区では手島選手が大きくタイムを失い、順位も落としていますが、タイムのレベルは5区の阿部選手と同じくらいかと思います。
2区の68分台はシューズによる伸びを含めても悪いタイムではありません。怪物揃いのこの区間では遅く見えてしまうでしょうけど。
9位帝京大は、2区で留学生に競り勝つ走りでチームを波に乗せると、シード変動ラインの動きがやや鈍かった印象のある3区と5区でタイムを大きく稼いでシードを獲得しています。
4年連続3区の遠藤選手と山上り2年連続区間賞の細谷選手という、3区と5区のエキスパートが、他チームが見せた流れの隙を突きまくりました。
もっとも、往路の時点では帝京大はシード変動ラインの大きく前を走り、往路2位の好成績も残しており、本人達はシード争いをしている自覚はなかったかも知れませんが。
往路では大きなリードを稼いだ帝京大ですが、復路では6区、7区、8区、9区と1区間ごとに約1分リードを減らしてしまい、シード落ちにまっしぐらという流れでしたが、最後にアンカーの西脇選手が区間10位の好走で、後ろから追ってくる法大をしっかりと押さえ込みました。
今大会の終盤で大きく動いたシード争いは、法大が勝利。
法大は最も良かった位置が11位ライン-56秒で、最も悪かったのが10位ライン+50秒。
全区間が秒差の末の勝利であり、坪田監督のハラハラ感がこちらにも伝わってくる動きでした。
アンカー区間では前を行く帝京大との差を詰める事はできませんでしたが、東海大のアクシデントに救われる形でシード最後の席に滑り込みました。
12位神奈川大は、粘りは見せたものの全区間でシード圏外。
13位早大も4区を終えて僅かに11位ラインの前に出るのが精一杯だったので、アンカーが特殊事情でブレーキを起こした11位東海大を除くと、シードを獲得したチームと逃したチームの差はタイム差以上に大きかった印象です。
早大は前回6区で好走した北村選手がいれば流れが変わったかも知れません。
15位国士大は、最終的には10位に4分以上及ばないタイムでしたが、むしろシードを逃したチームの中では一番印象的でした。
6区までとても良く健闘し、7区、8区で遅れてしまったものの、シード獲得が難しい状況で走り出した9区綱島選手が好走しています。
綱島選手が7区だったらもっと面白くなったと思います。
多くの圏外のチームがアンカーで「借金返済」していますが、これは10区の10位ラインの動きが鈍かったのが理由です。
しかしそれ以外の区間でも、下位に沈んだチームにも見せ場はありました。
17位日体大は3区で51秒も10位ラインとの差を詰め、18位山梨学大も2区で健闘。
19位駿河台大は6区でまさかの区間3位(58分47秒)の力走で、10位ラインとの差を6秒ですが詰めています。
16位中央学大も6区で58分47秒区間4位の走りを見せています。
最終的には最下位となった専大ですが、1区で11位ライン-39秒で走り切った木村選手の快走が目立ちます。
っていうか目立ち過ぎですね。最下位になるチームの1区とは思えない快走です。61分台前半のタイムも見事です。
・ 区間順位の謎
6区で駿河台大の小泉選手が58分47秒の区間3位の好成績を残しましたが、同じ58分47秒で走った中央学大・工藤選手が区間4位となっています。
この区間順位を見た時に一瞬、えっ?となりました。
一斉にスタートする1区以外では、基本的には区間タイムが同じ場合は区間順位も同じになるからです。
しかしこの2人が、8時10分一斉スタート組だと思い出して納得しました。
一斉スタートの場合は、明らかに同時にスタートしているため、1区と同じで同タイムでも区間順位は中継順になります。
昔の6区ではこのケースは結構あって、1997年大会、1998年大会、2003年大会でもありました。
今大会では記録表を見ると、ちょっと気になる疑問が浮かびました。
中大・若林選手が2人と1秒差の58分48秒区間5位で走っていますが、もしも若林選手があと1秒速かったらどうなっていたのだろうか、と。
おそらくその場合は、58分47秒の若林選手はもちろん区間3位で、一斉スタート組で58分47秒の2人は、前にいる小泉選手が区間3位、後ろの工藤選手が区間5位となるはずです。
これは全く問題はありませんが、もしも仮に小泉選手が存在しなかったら?
一斉スタートから58分47秒で走った工藤選手は、若林選手と同タイムなので区間3位になるはずです。
小泉選手がいる状態をケース1、いない状態をケース2とします。
ケース1では若林選手は工藤選手よりも上になり、ケース2では引き分けになります。
ケース1とケース2で、工藤選手の走速度や区間タイムが完璧に同じであってもこうなります。
A選手が存在するかしないかで、B選手とC選手の勝ち負け引き分けが変化するとしたら不思議ですね。
本当のところはどうなるかはわかりませんが。
ところで、6区の一斉スタートした選手が同タイムでも区間順位に違いが出る現象は、今回改めて過去のケースを調べてみたら、公式サイト、日テレのサイト、当時の陸上雑誌、箱根駅伝関係の書籍の記録表、でそれぞれ違いがありました。
結構微妙な問題のようです。
・ 順位別歴代タイム
現在と近い距離と参加チーム数になった03年大会以降
1位 歴代1位 10時間43分42秒(青学大) これまでは20年大会の10時間45分23秒(青学大)
2位 歴代2位 10時間54分33秒(順大) 歴代1位は20年大会の10時間48分25秒(東海大)
3位 歴代2位 10時間54分57秒(駒大) 歴代1位は20年大会の10時間54分20秒(國學院大)
4位 歴代2位 10時間54分59秒(東洋大) 歴代1位は20年大会の10時間54分23秒(帝京大)
5位 歴代2位 10時間55分14秒(東京国際大) 歴代1位は20年大会の10時間54分27秒(東京国際大)
6位 歴代2位 10時間55分44秒(中大) 歴代1位は20年大会の10時間54分46秒(明大)
7位 歴代1位 10時間56分30秒(創価大) これまでは20年大会の10時間57分43秒(早大)
8位 歴代1位 10時間57分10秒(國學院大) これまでは20年大会の10時間57分44秒(駒大)
9位 歴代1位 10時間58分06秒(帝京大) これまでは20年大会の10時間58分17秒(創価大)
10位 歴代1位 10時間58分46秒(法大) これまでは20年大会の10時間59分11秒(東洋大)
11位 歴代1位 10時間59分38秒(東海大) これまでは20年大会の11時間01分10秒(中央学大)
12位 歴代1位 11時間00分00秒(神奈川大) これまでは20年大会の11時間03分39秒(中大)
13位 歴代1位 11時間00分03秒(早大) これまでは20年大会の11時間04分28秒(拓大)
14位 歴代1位 11時間00分28秒(明大) これまでは20年大会の11時間06分45秒(順大)
15位 歴代1位 11時間03分06秒(国士大) これまでは20年大会の11時間07分23秒(法大)
16位 歴代2位 11時間07分33秒(中央学大) 歴代1位は20年大会の11時間07分26秒(神奈川大)
17位 歴代2位 11時間11分11秒(日体大) 歴代1位は20年大会の11時間10分32秒(日体大)
18位 歴代2位 11時間11分21秒(山学大) 歴代1位は20年大会の11時間10分37秒(日大)
19位 歴代2位 11時間13分42秒(駿河台大) 歴代1位は20年大会の11時間13分33秒(国士大)
20位 歴代1位 11時間15分09秒(専大) これまでは20年大会の11時間16分13秒(筑波大)
こうして並べてみると12位~15位が異常なほど速くなっていますね。
高反発シューズが本格的に普及した2020年大会で1位~20位の順位別最高タイムがすべて大幅に更新されましたが、今大会の12位~15位はその2020年大会の最高タイムを更に大幅更新。
特に14位は6分以上速いという結果になりました。
戦前に評価の高かった明大は、14位という順位はともかく、走力はやはり良いものを持っていたのでしょう。
・ 平均区間順位
公式参加20チームの平均区間順位を調べました。
総合成績の順に並べました。()内は平均区間順位の順番です。
1位 青学大 3.3 (1)
2位 順大 7.5 (2)
3位 駒大 7.6 (3)
4位 東洋大 8.3 (6)
5位 東京国際大 7.6 (3)
6位 中大 8.0 (5)
7位 創価大 8.9 (7)
8位 國學院大 9.8 (10)
9位 帝京大 10.2 (11)
10位 法大 9.4 (8)
11位 東海大 9.5 (9)
12位 神奈川大 10.9 (13)
13位 早大 10.9 (13)
14位 明大 10.8 (12)
15位 国士大 12.2 (15)
16位 中央学大 13.2 (16)
17位 日体大 15.7 (19)
18位 山梨学大 15.1 (18)
19位 駿河台大 14.6 (17)
20位 専大 15.8 (20)
2位に10分以上の大差をつけた青学大が、平均区間順位3.3となっていて、意外と数値が悪いです。
青学大は10時間49分台を記録した2015年大会でも2位に10分以上の大差をつけていますが、その時は1.9でした。
青学大の2区は区間7位ですが、日本人では3位。2015年大会では2区に留学生は出ていなかったので、この影響もあるでしょう。
しかし留学生を除いても0.4伸びるだけなので、まだ平均で1足りません。
差のつきにくい1区と6区で、区間5位と区間8位。
1区は区間2位と6秒差で、6区は区間賞と41秒差。
順位差は大きいのに、タイム差は小さいので、この影響かも知れません。
青学大が総合2位チームにつけた平均区間順位の差は4.2。
2015年大会では2.3なので今大会の方が圧倒的に差が大きく、3.3という平均区間順位の数値はともかく、相対的には今大会の青学大の方が優秀だったと言えます。
青学大は2016年大会でもとてつもなく強く、2位に7分以上、3位に10分以上の大差をつけて圧勝し、総合タイムは10時間53分台を記録しています。厚底高反発シューズ登場以前の記録なので、現在でもかなり価値の高い優勝タイムかと思います。
この時は平均区間順位で2.0、総合2位につけた平均区間順位の差は前年と同じ2.3でした。
2位に9分以上の差をつけて優勝した2012年大会の東洋大でも総合2位につけた差は2.8。
4以上という差は過去に圧勝したチームでもちょっと思いつかず、過去の記録を調べてみると、駒大が平均区間順位2.9で、総合2位チームに4.0の差をつけた2004年大会まで遡る必要がありました。
上位では総合4位の東洋大が平均区間順位の順番6番よりも総合順位の方が2つ上に来ています。
ラスト勝負でもしも駒大に勝っていたら3つ上がるところでした。
東洋大が勝ったチームには、平均区間順位の順番で3番タイの東京国際大も含まります。
1区の区間順位では5つ東京国際大に対して劣りますが、差がつきにくい区間なのでタイム差は19秒差です。
7区は区間6位~区間11位が64分06秒~64分13秒の7秒の間に収まっていますが、その区間6位が東京国際大で、区間11位が東洋大だったりします。
東洋大は区間順位はあまり良くなくても、しっかりと好タイムを刻んでいる印象でした。
9位帝京大は平均区間順位の順番で11番なので2つ上げています。
帝京大は唯一平均区間順位10オーバーでシードを獲得し、平均区間順位の順番で3つ上の法大にも勝ちました。
帝京大と法大の違いは山の成績が影響しているでしょう。
5区の区間順位で区間賞を取った帝京大が15の差をつけて法大に勝っていますが、区間タイムでは4分も差があり、差のつきやすい5区は他の区間と比べて区間順位の差以上のダメージになりやすいです。
差のつきにくい山下り6区では法大が区間順位で14勝ったものの、タイム差は1分37秒。
やはりタイム差のつきやすい山上りの5区をしっかり走る事が大事です。
他のチームでも総合順位が平均区間順位の順番よりも2つ上に来ているチームがあり、8位國學院大、17位日体大です。
8位國學院大は、平均区間順位で上の法大、東海大と比べて、6区で区間順位では11~15負けていますが、区間タイム差は1分09秒~1分22秒に抑えているので、その影響かも知れません。
17位日体大は、平均区間順位が上の駿河台大と山梨学大に勝っています。
駿河台大との比較は4区5区連続で、日体大区間15位VS駿河台大区間20位となっていて、区間下位同士ですが、タイム差は2区間で約6分もつきました。
8区では日体大区間19位VS駿河台大区間15位で、4つの順位差に対してタイム差は約2分もついていて、駿河台大が「お返し」をするわけですが、4区5区でついた差を挽回するまでにはいたらず。
日体大と山梨学大との比較は一見難しいです。
1区でついた順位差5つに対して、タイム差1分44秒というのは大きい気がしますが、これは勝ったのが山梨学大なので、むしろ日体大が区間順位差以上のダメージを受けてしまった、山梨学大と比べて平均区間順位の割りに総合成績が悪くなりやすいはずですが、最終的な結果は逆になります。
日体大は6区で区間19位に1分23秒も及ばない区間最下位(20位)があり、これも普通の区間20位以上のダメージをチームが受けてしまった事を意味しています。
なぜこの結果に?、と思いながら先の区間を見ていくと9区で納得できました。
日体大区間19位VS山梨学大区間20位、順位差1に対してタイム差2分59秒。
この9区のタイム差が何より影響しているようです。
平均区間順位の順番では9番で総合11位になってしまったのが東海大。
シード落ちしてしまいましたが、平均区間順位は9.5を記録しています。
最終的に10位に入ってシードを取った法大と比べると、5区で区間順位で14、タイムでは3分49秒勝っています。
順位差は14と大きいですが、4分近いタイム差はそれ以上に大きく、差のつきやすい区間でこれだけ東海大が勝ったという事は、法大にとっては「平均区間順位で勝ったけど総合順位で負ける」可能性が高くなったという事。
ちょうど帝京大と法大の関係と同じはずなのですが、現実に勝ったのは法大。
法大の平均区間順位は9.4であり、差はわずか0.1なのでそれほど不思議な事ではないかも知れませんが。
法大よりもさらに上を行った帝京大との比較では、大差のつきやすい5区の成績もほぼ互角ですが、東海大が勝った1区と6区では、1区では区間順位の差が5に対してタイム差が27秒、6区では区間順位の差が10に対してタイム差が1分6秒であり、順位の差に対してタイムはあまり稼げていなかったような気がします。
平均区間順位で10を切って、平均区間順位の順番は9番で総合11位というのは不思議というか気の毒でした。
2019年大会のように総合7位で平均区間順位10.0という年もありますし。
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