２０２５年大会感想２

２０２５年大会の感想　（２）

普通の感想です

目次

①　シューズ　更に進化？

②　青学大

 ③　駒大

 ④　１区

 ⑤　２区　創価大・吉田選手　青学大・黒田選手

 ⑥　吉田選手のラストラン

 ⑦　２区

 ⑧　３区　中大・本間選手　早大・山口選手

 ⑨　４区　青学大・太田選手

 ⑩　５区　青学大・若林選手　山の神との比較

 ⑪　５区　早大・工藤選手

 ⑫　６区　青学大・野村選手

 ⑬　７区　駒大・佐藤選手

 ⑭　１年生の走り

 ⑮　中大の４区～７区

 ⑯　最優秀選手について

 ・　シューズ　更に進化？

シードラインが１０時間５４分台まで伸びた今大会。

ヴェイパーフライネクスト％が普及した２０２０年大会で、シードライン最高タイムが１０分も短縮されて１０時間５９分台を記録して以降、２０２４年大会までは５８分台～１１時間００分台でシードが決まる事が多く、シードラインの目安は大体１１時間くらいでしたが、今大会では今までの標準より４～５分は早く、明らかに今までとはレベルが違う記録でした。

衝撃的な記録であり、いつかこのレベルでのシード争いを見てみたいと思っていましたが、実際に１０位で５４分台なんて記録が出てしまうと、またシューズが進化したのではないか？と感じてしまいました。

しかし詳しく調べてみるとシューズ効果でタイムが伸びたとも言い切れないような感じです。

現在最高のシューズはアディダスのアディゼロアディオスプロエヴォ１と言われており、前回大会では３人しか使っていませんが、今大会では公式参加２０チームの選手では３９人が着用。

エヴォ１が超高性能とは昨年から言われている事ですが、アディダスには他にもアディゼロアディオスプロ４という高性能シューズもあり、こちらも２８人が着用。

合計で２０チーム２００人の中でエヴォ１またはプロ４を履いた選手は６７人いるらしいです。

全体の割合では３３．５％。

チーム別　エヴォ１またはプロ４着用率

１位　青学大　９０％
２位　駒大０％
３位　國學院大　３０％
４位　早大　０％
５位　中大　２０％
６位　城西大　２０％
７位　創価大　４０％
８位　東京国際大　３０％
９位　東洋大　０％
１０位　帝京大　４０％
１１位　順大　５０％
１２位　日体大　５０％
１３位　立大　２０％
１４位　中央学大　０％
１５位　法大　２０％
１６位　神奈川大　６０％
１７位　専大　３０％
１８位　山梨学大　６０％
１９位　大東大　５０％
２０位　日大６０％

総合１位～総合１４位まではすべて順位別最高記録を更新していますが、着用率はバラバラ。

２０２０年大会では、多くの選手がヴェイパーフライネクスト％を履き、全順位で順位別最高記録が大幅に塗り替えられて、シューズで速くなったというのが明らかでしたが、今大会での好記録はエヴォ１やプロ４を履いたから速くなった、とは言い切れない感じです。

９区間でエヴォ１かプロ４を履いていた青学大が大会記録を更新しましたが、従来の大会記録よりも６秒早いだけに留まりました。

エヴォ１やプロ４がこれまでの高反発シューズよりも圧倒的に高性能ならば、１区がスローペースだったとはいえ、これだけ多くの選手が履いて６秒しか更新しないというのは不自然です。

逆に着用率０％の駒大は、総合２位最高記録を４分近くも更新。

また厚底シューズのパイオニア的な東洋大が、着用率０％。

ナイキがスポンサーのチームなのでその影響もありそうですが、他メーカーのシューズを履けないわけではないでしょう。

１秒を削りだすためなら貪欲に何でも取り入れそうなイメージの東洋大が、エヴォ１やプロ４を全く履いていないというのも不自然な感じです。

神奈川大、山梨学大、大東大、日大は５０％～６０％と平均よりもかなり高い着用率ですが、記録は伸び悩みました。

総合１６位神奈川大は、総合１６位歴代３傑にも入りませんでした。

アディダス以外のメーカーも含めて、去年よりも大きくシューズ性能を上げたと考えれば、エヴォ１やプロ４を履いていなくてもタイムは伸びるでしょうけど、そんな複数のメーカーでの急激な技術の向上が、２０２４年大会以降にたまたま同時に起きた、と考えるのも無理があります。

今大会のハイレベルな記録は、今のところはシューズ効果ではないと考えますが、シードラインのタイムは昨年までと比べて明らかにレベルが高い。

シード争いが例年以上に激しかったので、互いに刺激しあった結果かも知れませんが、それで４分も５分も総合タイムが伸びるのかと言われると微妙ですが。

タイムの価値が判断しづらい今大会ですが、とりあえず、シューズ効果は前回までと同じで、非高反発シューズ時代と比べて１ｋｍ２秒と考えて、他の感想も書きました。

・　青学大

予想通り総合優勝を達成した青学大。

圧勝した翌年はあっさり負けてしまうと言うジンクスを跳ね返し、２位に３分弱の差をつけてしっかりと２連覇を達成。

ここ数年の青学大はなぜか連覇がありませんでしたが、実力的には勝ち続ける方が自然かと思います。

青学大はただ勝つだけではなく、とにかく記録が良い。

２区を走った３年生の黒田選手は、区間賞を取った前回よりも更にパワーアップして６５分４０秒台を記録。

まさかこんな記録が出るとは思いませんでした。

来年も序盤で主導権を握れるのはほぼ確実ですね。

４区太田選手、５区若林選手、６区野村選手で日本人最高記録、区間新記録を３連発。

この３区間のレベルの高さは圧巻でした。

ブレーキを起こしたわけでもないのに、詰められ、抜かれ、突き放された中大の３人が可哀想になる程でした。

山の２区間合計は２時間０５分５８秒

４区を加えて３区間合計だと３時間０６分２２秒

将来に塗り替えるチームなんて出てくるのでしょうかね。

更新する可能性が最も高いのはやっぱり青学大でしょうけど。

それと大会終了後しばらく経って驚かされたのは、フルマラソンで若林選手と黒田選手で学生記録２連発の大活躍をした事。

青学大は箱根は強くても、マラソンとなると、吉田祐也選手はともかく、それほど強豪選手は輩出していない印象だったのですが。

箱根で最強で、学生時代にマラソンでも爆走。

箱根で結果を出す事がそのままマラソンにも繋がるとなると、もう誰も青学大を止められないのではないでしょうか。

今後は更に有力選手が青学大に集まるのではないでしょうか。

２０１５年大会以降１０年間に渡って超強豪校の地位を保ち続ける青学大。

今でも衰えは全然感じられません。

どこまで勝ち続けられるか、どこまでこの勢いで黄金時代を続けられるのか、今後もどこまで記録を伸ばし続けるのか楽しみです。。

・　駒大

青学大１強と思っていた今大会ですが、駒大が予想以上に健闘し大会を盛り上げてくれました。

これまでの総合２位最高記録を１０時間４８分から１０時間４４分台にまで大きく更新。

前の総合２位最高記録も駒大のものなので、また史上最速の敗者になってしまいましたが、４４分台は凄い記録です。

現在の総合コースと近い距離になってから初めての１１時間切りは、２０１１年大会の早大が出した１０時間５９分台でしたが、その１年後に東洋大が大会記録を８分以上塗り替える１０時間５１分台を記録しました。

あまりに桁外れの大記録。

その東洋大の記録からシューズ性能の違いとして７分を引くと１０時間４４分台になります。

今大会の駒大はあの時の東洋大にも匹敵するか、あるいは超えるレベルだったと言えます。

このレベルの記録で勝つ事ができなかったのなら、不運としか言いようがないです。

陸上競技は、球技や格闘技とは違って基本的に相手をどうこうする事はできない競技なので、選手に出来るのは自分の記録を伸ばす事だけですから。

今大会は、ダブルエースの１人佐藤選手が万全ではなかった事もあってか、１年生に３区と４区を任せるなど、将来を見越しての経験の場でもあったでしょう。

来年はエースの篠原選手が抜けますが、佐藤選手も往路を走るでしょうし、真の勝負は次回ですね。

今年以上に記録を伸ばせるでしょうか。

・　１区

中大がエースの吉居選手を１区に起用し、ハイペースの叩き合いが予想されましたが、まさかの独走劇。

１区で逃げが決まるかどうかは選手の実力の高さも重要ですが、それと同じくらい大事なのがチーム力。

「あのチームならば逃がしてもいい」と判断される事が逃げが決まる大きな理由になります。

１区の選手は強いが、チームとしては優勝は狙えない、というのが一番逃げやすいシチュエーションです。

しかし今年の中大は、最近駅伝でこそ振るわないけど、１万ｍ平均タイムで１位のチーム。

そんな有力チームが逃げれるとは思いませんでした。

集団の選手達は、無理して中大に着くなという指示を受けているのだろうと思っていたのですが、後に放送されたもうひとつの箱根駅伝では、監督達の「逃がしちゃだめだよ」、「行かねえとダメだな」と追う集団のペースが上がらない事を嘆く声もありました。

吉居選手に完全に着かなくても、視界に見える範囲で数十秒差を保つ走りをしても良かったのではないかと思います。

吉居選手の最終的な区間タイムは６１分０７秒。

区間歴代４位の記録ですが、これは前回の駒大・篠原選手が６１分一桁で走った時にも思ったのですが、他を圧倒できるほどのレベルではないと思います。

２区で言えば６７分ちょっとくらいに相当する記録かと。

高反発シューズ普及後の２０２０年代は２区や３区で以前は考えられないレベルの大記録が生まれていますが、１区のタイムは意外と昔とあまり変わりません。

１区は攻めづらい区間なので、吉居駿恭選手や篠原選手、それに区間記録保持者の吉居大和選手も、なかなか全力を出し切る走りとは行かなかったのかも知れませんが、現在の学生長距離界のエース達が１区で力を出し切れば６０分切りの記録も十分可能でしょう。

少なくとも私は、２区日本人最高記録６５分４３秒や３区日本人最高記録５９分４７秒は、１区の６０分よりもレベルは上と考えています。

今年区間賞の吉居選手は、次に１区に出る時は５９分前後を狙うと言う記事を見ました。

流石に５９分前後を狙うとなると１万ｍで日本記録を超えるレベルの走力が求められると思うのでやや厳しい気がしますが、６０分切りは本当に期待したいですね。

１区が攻めづらいのは心理的な要因が大きいので、誰かが６０分の壁を壊せれば、後の１区の攻めやすさ、レース展開にも大きな影響を与えると思います。

それと、逃げる側が６１分くらいに落ち着くようなら、後ろの集団もペースアップして追い上げてもらいたいです。

集団内の駆け引きがあるので難しいかも知れませんが・・・。

箱根駅伝最大の特殊区間は間違いなく１区だと思っていますが、今大会でもそれを実感しました。

・　２区　創価大・吉田選手　青学大・黒田選手

６５分４３秒と６５分４４秒というこれまでの常識を超えるタイムをたたき出した２人。

これほどのタイムが出せた理由には、上りの適性を持っていた事が大きいと思います。

特に吉田選手は権太坂以降の７．９ｋｍを２２分２６秒で走り、シューズ効果を１ｋｍ２秒とすれば、ついに１９９９年大会で順大・三代選手が出した２２分４３秒の「終盤記録」を実質的に超えたと見ていいでしょう。

元々２区はスピードだけではなくスタミナや、上りの強さが大事と言われていましたが、９０年代に活躍した早大・渡辺選手はトラックを得意とするスピードランナーでした。

終盤が強かった三代選手も当時のトラックの王者です。上りの適性タイプの選手ではありませんでした。

００年代には山梨学大・モグス選手が爆走を連発しましたが、モグス選手もまた２区の適性はそれほどではなかったと思います。全日本８区の爆走より明らかにパフォーマンスは下がっていましたし。

上りの強さが大事と言われているものの、実際は２区の歴史に名を残す選手はスピードで押し切っているイメージが強かったです。

最近では区間記録保持者だった東京国際大・ヴィンセント選手や、２０２２年大会区間賞の駒大・田澤選手、前々回の２区で序盤からとんでもない勢いでぶっ飛ばして区間賞を取った中大・吉居大和選手もスピードタイプだったかと思います。

「適性には勝てない」

終盤の坂で黒田選手と吉田選手に抜かれた駒大・篠原選手が、レース後にそう口にしたそうですが、走力面ではあれほど優れていた篠原選手でも３０秒以上も上をいかれるのですから、もうこれはどうしようもないですよね。

エースだから２区を走る、という考えはもう通用しないのかも知れません。

「２区は特殊区間」とはこれも篠原選手のコメント。

５区ほどではなくても、２区もまた走力と適性の両方が揃わないと通用しなくなる時代になっていきそうです。

今大会で吉田選手と黒田選手を下したエティーリ選手はスピードタイプの選手。

しかしエティーリ選手の１万ｍのベストは２７分０６秒であり、日本記録（２７分０９秒）を超える男。

スピードタイプにも勝機はあるかも知れませんが、エティーリ選手並みの走力を身につけるのはなかなか厳しいでしょう。

前回大会で青学大・太田選手が３区で６０分切りを達成した時にも思いましたが、スピードに優れたエース選手はもう２区ではなく３区を走るべきではないかと思います。

タイプが合わなくても最激戦区にエースが挑むのは、仲間を鼓舞する意味もあるでしょうけど、これからの箱根駅伝では合理的な判断も必要になってくるのではないでしょうか。やや残念ではありますけど。

以前の２区には４０００秒の壁という物がありました。

１９９５年大会の早大・渡辺選手が６６分４８秒（４００８秒）を出し、１９９９年順大・三代選手が６６分４６秒、２０１９年順大・塩尻選手が６６分４５秒を出し、４０００秒切りに迫りました。

留学生はともかく、日本人選手にとっては長い間４０００秒が壁になっていました。

２０２０年大会で東洋大・相澤選手が６５分５７秒（３９５７秒）を出して壁を軽く破りましたが、高反発シューズ普及後の記録です。１ｋｍ２秒をシューズ効果として足すと４００３秒になり、まだ少し届きません。

今大会で出た吉田選手の６５分４３秒（３９４３秒）と黒田選手の６５分４４秒（３９４４秒）は、シューズ分を足しても余裕の４０００秒切りです。

ついに壁は破られました。

２人は「マラソンマン記録」も軽く上回りました。

３０年位前にマガジンでやっていた漫画マラソンマンには、日本人選手２人が箱根２区を６５分５５秒で走るシーンがあります。

現実の日本人が、しかも２人同時に漫画の記録を超えたのは感慨深いですね。

・　吉田選手のラストラン

山の神になりたいと、５区出走を切望していた創価大・吉田選手は、最後の箱根がまさかの２区でした。

吉田選手は東海大に所属していた１年生の時に５区で区間２位の快走。

それまで大きな実績はなく、下位からのスタートという悪条件のなかでも７０分台の好記録を出す上りの才能は見事でした。

しかし、山の神は高反発シューズもなかった時代に６９分そこそこの記録を叩き出した存在。

シューズ性能が高い現在では、７０分台後半の記録は、昔で言うところの７１分台の中盤くらいの価値かと思うので、吉田選手は有力選手には違いなくても神レベルとの差は大きいと感じました。

創価大に編入し、再び挑んだ箱根５区では、６８分４５秒を設定していたそうですが、力を発揮できず、７２分台のタイムで区間９位に終わってしまいます。

今回はついに最後の箱根であり、格段に伸びてきている平地の走力も生かして、山でどれだけの記録を出してくれるのか楽しみにしていたのですが。

平地の力を伸ばし過ぎてしまったのか、体の使い方や筋力が山の仕様じゃなくなってしまったとの事で、まさかの２区登場、そして日本人最高記録を塗り替えるラストラン。

エース区間に挑んだ最後の箱根。

走り終わった後に、俺の箱根駅伝終わっちゃった、と吐露する吉田選手。

チームスポーツである以上チームの為に走るのは当然とはいえ、他校に編入してまで求めた箱根の山。

割り切れない気持ちだって当然あるでしょう。

花の２区で史上最高レベルの爆走をした選手のレース後とは思えないあの表情は、箱根駅伝の歴史に残るシーンだったと思います。

吉田選手は今回の２区では６５分２０秒を目標にしていたそうです。

権太坂や戸塚の壁で、上りの適性を生かしてタイムを稼ぐ事を前提の目標だとは思いますが、２区でこのタイムを出せる力を持つ選手が５区を走れば６８分３０秒くらいはいけるのではないかと。

５区は２区以上に上りの適性が大事なのは言うまでもないので、適性効果で更に＋が望めるでしょう。

今年は山仕様の体ではないとの事ですが、それでも吉田選手ならば６８分前後まで伸ばせる可能性はあったと思います。

仮に高反発シューズを履いたとしても、山の神でも６８分は簡単に出せる記録ではありません。

本当に過去の神達を超える存在になれたかも知れません。

これからの２区は、走力と適性の両方が重要な特殊区間と化しそうなので、その二つを併せ持つ吉田選手は正に適任なのですが、駅伝ファンとしても何か割り切れず、５区で見てみたかったなと思ってしまいました。

・　２区

区間賞の東京国際大・エティーリ選手はこれまでの箱根予選会の走りを見ると、大事な場面で力を発揮できない印象でした。

２区より３区の方が向いていそうと思っていましたが、難区間の２区で良く走りました。

６５分３１秒の記録は、１万ｍの走力を考えるともう少し行けると思うので、次回は６４分台を狙って欲しいです。

区間賞候補だった駒大・篠原選手、國學院大・平林選手は区間４位と区間８位。

どちらも区間タイムは悪くはなかったので凡走という事はないでしょう。

６５分台を記録したエティーリ選手、創価大・吉田選手、青学大・黒田選手の驚異的な走りや、６６分３０秒前後で上位争いに絡んできた帝京大、中央学大、立大のレベルも高かった事であまり目立ちませんでしたが。

篠原選手と平林選手が６６分１０秒台～３０秒台くらいで走るというのは、多くの駅伝ファンの予想通りだったのではないかと思います。

６６分台が１１人もいた今大会の２区は異常レベルでした。

特に帝京大・山中選手、立大・馬場選手は力を隠していたのか、６７分３０秒くらいは予想していましたが、６６分３０秒前後が出るなんてまったく想定外でした。

今年の２区は上位のレベルの高さに隠れていましたが、下位の記録も凄くて、区間２０位で６８分５０秒。オープン参加で区間２１位相当でも６８分５８秒。オープンまで含めて全選手６９分切りの凄まじさ。

２区が現在のコースとなった１９８４年大会から、高反発シューズが本格的に普及する前の２０１９年大会までの３６大会で、日本人で４年連続６９分切りの達成者は０人。

一昔前までは６８分台で走るのは決して簡単な事ではなかったのですが、今では区間最下位の大ブレーキですらこのレベルです。

もちろんシューズ条件が違いますが、シューズ分を足しても６８分５０秒は６９分台中盤くらいに相当するはずです。

４年連続７０分切りですら、達成した日本人は、２００７年大会～２０１０年大会の駒大・宇賀地選手、２０１６年大会～２０１９年大会の順大・塩尻選手の２人だけなので、やはり今の選手のレベルが下位まで含めて高過ぎるのでしょう。

今年の２区で目立たなかった区間下位の選手達は、もしも走るのが復路だったら普通に区間上位で活躍できたでしょうね。

特に終始最下位を独走して６８分２９秒で走った神奈川大・宮本選手は、８区～１０区だったらレース展開次第では区間賞を狙う力があったと思います。

・　３区　中大・本間選手　早大・山口選手

また箱根に新たな才能が現れました。

箱根デビューの２年生、中大・本間選手。

１万ｍ２７分台ランナーですが、いきなりの区間賞、そしてタイムは日本人歴代３位の６０分１６秒。

トップ効果を受けながらの走りとはいえ、まさかここまでの走力を持っていたとは思いませんでした。

前回大会で、青学大・太田選手が出した日本人最高記録に２９秒差。

区間記録の東京国際大・ヴィンセント選手と比べても５１秒差。

日本人では区間記録から１分以内は難しいと思っていたのですが、前回では太田選手と駒大・佐藤選手が突破し、今大会で３例目の記録が出ました。

凄まじいレベルの高さでしたが、トップ独走のレース展開がやや地味だったのか、ハイライトでは飛ばされ気味なのが残念。

今大会のレベルの高さを象徴する走りの１つだったと思うのですが。

２区の創価大・吉田選手や青学大・黒田選手、７区の駒大・佐藤選手と比べても劣らない走りだったと思います。

中大・藤原監督のコメントによると、本間選手の１万ｍ２７分４６秒と言うタイムは練習の一環として参加したレースの記録だそうで、ピークを作れば２０秒台も出るんじゃないかとの事。

区間タイムから見ても２７分２０秒クラスは出てもおかしくないと思います。

早大１年生・山口竣平選手

こちらも６１分１５秒＝日本人１年生歴代２位の爆走。

青学大・太田選手の６１分００秒と、駒大・田澤選手の６１分２５秒というビッグネーム２人の間にランクインしました。

戸塚中継所で１１位でスタートした山口選手は、藤沢では順位は変わりませんでしたが、茅ヶ崎では前の４人をいつの間にか抜いて７位へ。

１年生の見事なごぼう抜き。

テレビではもっと盛り上げて欲しかったです。

終盤は同じ１年生の駒大・谷中選手との競り合いになりましたが、スタート時に５１秒の差があった相手。

谷中選手も日本人１年生歴代５位の６２分０５秒を出す好走でしたが、歴代上位の選手を相手に５０秒も差を詰めて、明確な力の違いを見せました。

３区の日本人最高記録＆日本人１年生最高記録保持者でもある太田選手は、箱根駅伝平地区間における史上最強の日本人選手だと思いますが、早くも太田選手に迫る男達が出てきました。

今の学生長距離はレベル高過ぎませんかね。

・　４区　青学大・太田選手

４区で日本人最高記録の６０分２４秒を出して、トップとの差を大きく詰めて区間賞を獲得した太田選手。

今年も快走を見せて、これで１年生から快走４連発。

太田選手が４回の箱根駅伝で残した実績は、箱根駅伝の歴史の中でも史上最高レベル。

平地区間に限定すれば、太田選手よりも優れた日本人選手はいないでしょう。

ただ今回の区間タイムはやや予想外でした。

トップ中大との差を１分３９秒も詰めたものの、トップに追いつく事はできませんでした。

前回は３区を５９分４７秒で走った太田選手。

３区の６０分切りは４区の６０分切りよりも難しいと思うので、前回並みのレベルで走れるとすれば４区ならば５９分半は出ると見ていました。

仮に４５秒届かなかったトップに追いついていたら、区間タイムは５９分３９秒。

太田選手本来の力ならば先頭まで行けたと思います。

４年連続でトップ争いをする太田選手を見てみたかったです。

これまで箱根１本に絞る事の多かった太田選手は、今年は出雲、全日本にも出場しエース区間で力走していたので、箱根に合わせ切れなかったのかも知れません。

１年生の時は３区を６１分００秒、２年生で４区を６０分３５秒で走り、どちらも日本人最高記録まで後５秒に迫る日本人歴代２位の爆走。

そして３年生では、３区で日本人最高記録を１分８秒も更新する５９分４７秒のスーパーランを披露し、底知れないポテンシャルを感じさせた太田選手。

最後の箱根はやや予想外でしたが、４区を６０分２４秒で走って物足りなく感じる事自体が異常であり、こんなのは太田選手だけでしょう。

これまでの箱根の平地区間で、最高の日本人選手と言えば、やはり早大・渡辺選手。

１９９３年大会～１９９６年大会で２区、１区、２区、２区と走り、区間新記録２回を含めて区間賞を３回獲得。

渡辺選手卒業後には、１発の走りでは渡辺選手の上を行く選手は現れますが、４回の合計という点では、１９９０年代後半、２０００年代、２０１０年代のどの日本人エース達でも、渡辺選手の総合的な実績には及ばなかったと思います。

渡辺選手と甲乙つけがたい記録を残した日本人選手と言えば、２０２０年大会～２０２３年大会で活躍した駒大・田澤選手だけと感じました。

並ぶだけで２０と数年。

明確に渡辺越えを果たしたと感じた選手は、留学生と山の神を除けば、昨年までは１人もいなかったわけですが、今大会の太田選手のタイムを見て、ついに超えた選手が現れたと感じました。

太田選手が走ったのは３区、４区、３区、４区なので、渡辺選手とは１区間も被っていないのですが、山のような特殊区間ではないのである程度は予想ができます。

私は当時の渡辺選手が仮に３区、４区、３区、４区と走ったとして、区間タイムからシューズ効果として１ｋｍ２秒を引いたとしても、太田選手の合計タイムには及ばないだろうと考えています。

シューズ効果を１ｋｍ３秒としても、それでも太田選手の方が上だと思います。

渡辺選手が最後の箱根を走った１９９６年大会は、私が箱根の録画を始めて本格的にハマり出した年。

数えると今大会はちょうど３０回目の箱根駅伝ですが、自分的には切りの良い今大会で、留学生と山の神を除いて、ついに自分の中で「史上最強の選手」が更新されました。

２０００年代に活躍した山梨学大・モグス選手と比較しても、太田選手の方が記録のレベルは上だと思います。

モグス選手は２年生の時に走った２区終盤でブレーキを起こしているのが、４回の合計という点では足を引っ張っています。

モグス選手の場合は、失速した年の２区も２０ｋｍ地点までは速く、ラスト３ｋｍの坂できつくなっていたので、走った区間が３区や４区だったら、あの失速はなかったかも知れない、とここまで考えると難しい問題ですが。

モグス選手卒業から１６年も経つけど　日本人でモグス越えをしたかどうかと考える日が来るとは思わなかったです。

田澤選手や東京国際大・ヴィンセント選手にも思いましたが、高反発シューズの登場後の時代に、最強の選手が現れるのは本当に嬉しいです。

シューズの違いを考慮すると昔の選手の方が優秀だった、みたいに考えながら箱根を見るのはあまり気分が良くないですからね。

太田選手が箱根を走ってくれて本当に良かったです。

・　５区　青学大・若林選手　山の神との比較

逆転往路優勝で有終の美を飾った若林選手。

過去２回の５区も区間３位、区間２位の好走でしたが、最後の箱根で６９分１１秒の区間新記録で区間賞を獲得。

先頭の中大・園木選手も悪い走りではなかったのですが、一気に差を詰めてきて、軽く抜き去り、力の違いを見せました。

４５秒差をひっくり返して逆に１分４７秒のリードを稼ぐ走りには、「山の神」が誕生したと感じた人も多かったのではないでしょうか。

初代山の神が残した旧コースの記録６９分１２秒を１秒上回ったのも印象的です。

青学大・原監督は４代目山の神の称号を与えます、と冗談っぽく言っていましたが、これは２月のマラソン後の話なので、世間的には若林選手は新たな山の神とは認知されなかったようです。

ベスト記録６９分１１秒とセカンドベスト６９分３２秒は、非常にレベルが高い記録です。

これだけのタイムを出した実績があり、逆転往路優勝という派手なレース展開もあったのに、これでも神に認定されないのでしたら、４代目はいつ誕生するのでしょうかね。

でも、あまり大した実績のない選手が、マスコミとかが騒いだ結果４代目として世間に認知されてしまうよりは、厳しい方がずっと良いかも知れませんが。

若林選手と初代山の神・順大の今井選手はどちらも５区を３回走っていますので、両者を比較してみました。

３回の内１回は冷たい雨の中のレースだったというのも共通していますね。

今井選手の３つの記録は

６９分１２秒

７８分０５秒

７８分３０秒

コースや距離が違いますが、公式発表による距離の違いは以下の通りです。

６９分１２秒は、現在より約２０ｍ短いコース。

７８分０５秒と７８分３０秒は、約２０ｍ延長されて新コースへ。

更にその後２．４ｋｍまたは２．５ｋｍ短縮されて現在のコースになる。

２０ｍはタイムだと３秒～４秒。

４秒の方が近いので今回は４秒とします。

距離が大きく違うコースの記録はわかりづらいですが、２．４ｋｍまたは２．５ｋｍの距離の違いがあるとして換算します。

どちらの数値も公式発表されたものであり、２．５ｋｍとして計算した方が速くなりますが、世間的には２．４ｋｍの方が浸透しているようです。

今回は２．４ｋｍ説を使って計算してみます。

６９分１２秒は約２０ｍ短いコースの記録なので、現在のコースでは４秒を足して６９分１６秒になります。

７８分０５秒は４秒を足して新しいコースへ。

７８分０９秒÷２３．２×２０．８で現在のコースへ換算すると、７０分０３秒９３、小数を四捨五入して７０分０４秒。

同様に７８分３０秒も現在のコースだと７０分２６秒になります。

今井選手の３つの記録は現在のコースならば

６９分１６秒

７０分０４秒

７０分２６秒

シューズの性能が違う時代の記録ですので、２０秒～３０秒を引くと

６８分４６秒～６８分５６秒

６９分３４秒～６９分４４秒

６９分５６秒～７０分０６秒

若林選手の３つの記録は

６９分１１秒

６９分３２秒

７０分４６秒

シューズの違いを度外視すれば、若林選手のタイムは初代山の神を超えるほどの凄さ。

しかし現実的にはシューズ性能の差は補整して比較するべきでしょう。

そうすると山の神の方が少し上になりそうです。

若林選手が３つの記録の合計タイムをもう１分伸ばす事ができていたら、本当に今井選手並だったと思えるのですが。

神の領域には少し届きませんでしたが、しかし若林選手がかつてないほどに神に迫った選手なのは間違いないです。

・　５区　早大・工藤選手

５区で神に迫った青学大・若林選手が最後の箱根を終えましたが、もうすでに新しい波はやってきていました。

早大２年生・工藤選手。

前回も５区を走り１年生ながら区間６位の好走をした選手ですが、今大会では前回の７２分台から、７１分台と７０分台をまとめて飛び越えて６９分３１秒の爆走。

駒大の実力者・山川選手をあっさりと抜いていく走りは衝撃的でした。

早大は伝統的に山区間を苦手とするケースが多いですが、突然５区で爆走するのも特徴です。

１９９６年大会では３年生の小林選手が当時の区間新記録である７０分２７秒をマーク。

現在よりも約２４ｍ短いコースの記録なので現在ならば７０分３１秒くらいになります。

シューズの性能差として２０秒～３０秒を引くと、現在ならば７０分～７０分１０秒ちょっとくらいでしょうか。

２００８年大会では２３ｋｍ超の５区で４年生の駒野選手が７８分１２秒を記録して逆転往路優勝。

その後に約２０ｍ延長と、２．４ｋｍの短縮があって現在のコースになりますので、計算すると現在のコースならば７０分１０秒ほど。

シューズの分を引いて６９分４０秒～５０秒くらいでしょうか。

他にも、早大の５区の名選手と言えば、小林選手と同じコースで７１分５９秒の木下選手（金哲彦選手）、駒野選手と同じコースで７９分５２秒の山本選手も、距離や条件が現在と同じならば７１分ちょっと～７１分台中盤くらいに相当する好記録かと思います。

前回の７２分１２秒から６９分３１秒に記録を伸ばして３人抜きを見せた工藤選手は、早大の過去の名ランナー達もまとめてごぼう抜きしていました。

まだ２年生でこのレベル。

山の名探偵の名がはまり過ぎているので、今後更に活躍しても山の神とは呼ばれないかも知れませんが、工藤選手ならば神レベルまで行けるのではないかと思います。

工藤選手については大会終了後に、５区に適したカスタムシューズを履いていた事がわかり、今回の圧倒的な記録もシューズの影響かと思ってしまったのですが、２月に入り日本学生ハーフマラソンで６０分０６秒とこちらでも爆走を見せました。

５区で６９分台が出るのも納得の走力。実力で出したのは間違いないでしょう。

しかし平地でこれだけ強いとなると、山の神レベルの実績を残す上で最大の問題は、創価大・吉田選手と同じように２区にコンバートされる事かも知れませんね。

・　６区　青学大・野村選手

史上初の５７分切りを達成した野村選手。

２０１９年大会で５８分切りの区間記録が出た時には、５７分切りが出るのは３０年～４０年後かと思ったのですが、たったの６年で達成。

もちろんシューズによる記録の伸びがあってのものだとは思いますが、それにしても早いですね。

５６分４７秒の大記録は、シューズ分を考慮してもこれまでの山下りの名選手たちを大きく超えるものです。

山下りの歴史に残る大記録としては、８０年代の日体大・谷口選手が出した５７分４７秒という記録がありますが、その後に距離が延長されているので、現在の距離ならば５８分は切れていません。

９０年代の神奈川大・中澤選手、２０１０年代の日体大・秋山選手、青学大・小野田選手、２０２０年大会の東海大・館澤選手等が山下り最速ランナーとして名を残して来ましたが、谷口選手から非高反発シューズ時代の最後の名選手である小野田選手まで、それほど大きく記録は伸びてはいません。

１９８３年大会の谷口選手が記録を出した後に、１９８６年に公式に０．１ｋｍの延長がありました。

ただしネット上には２００ｍ説もあったりと、時代が時代なので、詳しい情報は残されていないようです。

陸上専門誌にも厳密には不明と書かれています。

公式通りに１９８６年大会の延長が１００ｍだった場合は、その後の細々とした延長２回（４ｍと２０ｍ）を含めると現在の距離ならば５８分０９秒くらいになります。

１９９９年大会の神奈川大・中澤選手の記録は、現在よりも約２４ｍ短いコースで出した５８分０６秒。現在ならば５８分１０秒くらいになります。

０．１ｋｍ短いコースで出た谷口選手の記録よりも劣りますが、タイム差は僅かで、公式の距離の差０．１ｋｍも１００ｍちょうどという事はないでしょうし、厳密にはどちらが最速なのかわからない状態が続いていました。

２０００年代に入ってコース変更の影響で、６区には新しい区間記録が誕生しましたが、谷口選手、中澤選手よりは少し遅れる記録です。

２０１８年大会で日体大・秋山選手が現行のコースを５８分０１秒で走り、ついに最速が誰なのかという問題が解決しました。

翌年２０１９年大会で青学大・小野田選手が５８分の壁を破る５７分５７秒を叩き出して、秋山選手を更に明確に上回りました。

２０２０年大会、東海大・館澤選手が５７分１７秒というこれまでの６区の常識を覆す記録を出します。

凄まじい記録ですが、この年から本格的に高反発シューズが普及したので、シューズ効果は間違いなくあったと思います。

シューズ効果を１ｋｍで約２秒とすると、館澤選手と小野田選手の記録は同等くらいかと思います。

６区の記録は確かに伸びてきてはいますが、シューズ条件がガラッと変わった２０２０年大会を除けば、大幅な更新はありませんでした。

しかし、今大会で野村選手が区間記録を３０秒も塗り替えた事で、ついに他を圧倒する記録が誕生しました。

５６分４７秒は、シューズ効果を１ｋｍ２秒としても、非高反発シューズ時代の５７分３０秒切りに相当しますから、駅伝ファンにとっては夢の記録です。

野村選手はもう卒業ですが、後に続く新しい時代の山下りの選手には、野村選手よりも更に３０秒上の記録を狙って欲しいですね。

できれば１０年～２０年くらいでそのレベルの記録が出て欲しいです。

山下りは、６０分を切れば一流、５９分台は好記録の証、とされていた時代が長く、テレビでも、１時間を切ってきました！など記録をクローズアップして放送される事が多かったです。

そういった影響で、６区の記録に注目する駅伝ファンは多かったのではないかと思います。

その反面、６区はコース変更が多く、記録の比較がしづらいという問題もありました。

山下りで圧倒的な最高記録を出し、明確な最速ランナーが現れるのは、他の区間以上に嬉しいものがあります。

・　７区　駒大・佐藤選手

１０ヶ月ぶりのレースとなった佐藤選手。

７区区間記録を１分近くも更新して、トップとの差を２分半近くも詰める圧巻の走りでした。

とても復路の選手のスピードではありませんでした。

完全復活のように見えて、これで状態は７０％の仕上がりだったそうです。

往路の激戦区を避けてマイペースで走れる復路起用となったそうですが、ここまで復活しているのなら往路を走れたのではないかと思います。

前回と同じ３区ならば、前回並みのタイムも狙えたでしょう。

４区を走っていたら、青学大・太田選手にリベンジできた可能性は高かったと思います。

今回で１年生の谷中選手と桑田選手に往路の経験を積ませる事もできましたし、次回は３人とも往路を走る姿が見たいですね。

７区は往路の延長のような区間ではありますが、ここで攻めるのは流石に遅過ぎるかと。

ライバルの青学大が往路重視の作戦を取る事が多いので尚更です。

大器と言われた佐藤選手も来年が最後の箱根。見れるのはあと１回。

最後は３区か、思い切って１区で独走する所も見てみたいですね。

１区の６０分切りの記録は、前回大会の３区６０分１３秒や、今大会の７区６０分４３秒のタイムを見ると、佐藤選手ならば普通に出せると思います。

・　１年生の走り

日本人１年生で好記録を出したと感じた選手です

１区

大東大・大濱選手　６２分４９秒

２区

順大・玉目選手　６８分２２秒

３区

早大・山口選手　６１分１５秒

駒大・谷中選手　６２分０５秒

東洋大・迎選手　６２分４０秒

４区

駒大・桑田選手　６１分２４秒

６区

城西大・小林選手　５８分０６秒

神奈川大・上田選手　５８分４９秒

７区

中大・岡田選手　６３分０７秒

８区

山梨学大・阿部選手　６４分２５秒

１０区

青学大・小河原選手　６８分２７秒

２区で６８分台の玉目選手、良い記録だと思うのですが、レベルの高いこの区間ではどうしても埋もれてしまいます。

周囲が化け物だらけの区間で大崩れしない良い走りだったと思います。

３区は山口選手が凄過ぎる。

他の２人もかなり良いタイムだと思うのですが、明らかに格の違う速さでした。

最優秀新人賞が公式にあったら受賞したと思うほど、他のルーキーとはレベルが違いました。

４区桑田選手は６１分２４秒を記録し、それまでの中大・吉居選手の持つ６１分４９秒の１年生最高記録を更新しました。

４区の１年生最高記録は複雑で、高反発シューズ普及前の時代には東洋大・吉川選手が６２分２２秒という１年生最高記録を残しましたが、高反発シューズの本格普及前の時代ではあっても初期の高反発シューズを履いて出た記録、というのが逆に吉居選手との記録の比較を難しくしていました。

今回の桑田選手は１分近くも吉川選手よりも上を行ったので、文句のつけようのない１年生最高記録の更新だと思います。

３区の山口選手のタイムのレベルが高過ぎたけど、桑田選手のタイムもかなりのものですね。

６区の小林選手の出した５８分０６秒も１年生最高記録。

これまでの記録を９秒塗り替えました。

しかしこの区間には青学大・小野田選手が高反発シューズ普及前に５８分３１秒という記録を残しているので、まだ少し届いていないかなと思います。

８区、阿部選手が１年生歴代２位の６４分２５秒を記録。

１年生歴代１位は山梨学大の先輩古田選手の６４分０５秒ですが、あちらは強い追い風が吹いた１９９７年大会で、「追い風参考記録」と当時の山梨学大・上田監督が言っていた記録です。

風の影響とシューズの性能差というプラスマイナスを考慮すると、良い勝負のような気がします。

１０区は小河原選手が６８分台前半の好記録で走破。

１年生最高記録を更新しただけではなく、４８秒遅れていた大会記録を追い抜いて、チームを逆転大会新記録に導いてのゴール。

自身は区間賞を獲得。

波に乗っているレース展開ではありましたが、いきなり完璧な戦績を残しました。

・　中大の４区～７区

元中大ファンだからというわけではありませんが、あまり良い所がなかったこの４区間を見て思う事は多かったです。

私はスーパーエース級がエース級の選手を圧倒するというようなシーンが好きです。

ブレーキを起こした選手を抜いていくのは当たり前ですが、実力を発揮して好タイムを出している選手をスーパーエースが力でねじ伏せるというようなシーンに燃えてきます。

爆走するスーパーエース側の選手にももちろん興味がありますが、良いタイムなのに負けてしまう側の選手もとても気になります。

これは駅伝ファンになったきっかけが、９５年全日本の早大・渡辺選手と中大・松田選手のトップ争いを見た事だったので、駅伝に興味をもった初期の頃の原体験的なものが影響しているのかも知れません。

今大会の中大の４区～７区の４人ですが。

４区白川選手　６２分０３秒

５区園木選手　７１分４３秒

６区浦田選手　５８分４９秒

７区岡田選手　６３分０７秒

４区間合計４時間１５分４２秒

４人ともタイムが良い。

高反発シューズによる伸びの分を考慮しても、好タイムと呼べるレベルの記録です。

２区ならば６８分台相当の価値はあるでしょう。特に白川選手は６７分台も狙えたかも知れません。

そんな好走レベルの４人ですが、実際のレース展開はご存知の通り。

４区は２分２４秒後ろからスタートした青学大の猛追を受けるところから始まります。

４区白川選手は青学大・太田選手（６０分２４秒）に大きく差を詰められ、５区園木選手は青学大・若林選手（６９分１１秒）にトップを奪われ、６区浦田選手は青学大・野村選手（５６分４７秒）に２分以上も差を広げられて優勝争いにおけるトドメを刺されました。

７区岡田選手は青学大とはほぼ互角ですが、駒大・佐藤選手（６０分４３秒）に抜かれて３位に転落。区間タイムも格の違いを見せ付けられてしまいました。

良い所が感じられないレース展開ですが、タイムは良くて、４区～７区の４区間を４時間０９分台～１０分台で走った今大会の青学大と駒大が異常過ぎただけでした。

前回は総合優勝チームが４時間１１分台、総合２位チームが４時間１６分台。

前々回だと総合優勝チームが４時間１３分台、総合２位チームが４時間１４分台。

青学大と駒大に２～３分の差をつけた状態で始まり、４時間１５分台で走ってあんなに一方的に抜かれていく展開になったのは相手が悪かったとしか言いようがないかと。

加えて思ったのはトップ独走の青学大の復路平地タイム。

青学大の７区～１０区のタイムはそれぞれ、６３分１０秒、６４分１４秒、６８分４０秒、６８分２７秒。

７区だけは駒大の大怪物の追撃を受けて、貯金を４分０７秒→１分４０秒に減らしましたが、８区以降は危なげない走りで、ゴール地点ではリードを２分４８秒まで回復して総合優勝を達成。

７区も区間タイムは良くて、青学大の復路平地４区間は２区で言えば６８分～６８分３０秒クラスの４人を配置して全員がしっかりと力を発揮した走りと感じました。

中大の４区～７区の４人と走りのレベルはそれほど変わらない気がするのですよね。

どの区間を走るかで印象がガラッと変わるものだなと思いました。

もちろんそれは当たり前なのだけど、今大会は極端だった気がします。

もう一つ思ったのは、年々レベルが上がる近年の箱根では、特に序盤、中盤区間は異常なほど高速化していますが、８区からの終盤３区間はまだそれほどではないかなと。

２区の区間中位レベルの選手が終盤３区間で力を出し切れば、８区ならば６２分台、９区と１０区ならば６６分台だって出るでしょう。

今後総合タイムを大きく伸ばす鍵はこの終盤３区間にありそうです。

・　最優秀選手について

今大会から、大会全体の最優秀選手に与えられる金栗杯の他に、優勝チームの中から選ばれる最優秀選手賞のＭＶＰが新設されました。

このＨＰではこれまで金栗杯の事をＭＶＰと呼んでいたので、非常にわかりづらくなってしまいますが、金栗杯とＭＶＰが別々の賞として出来たのはとても嬉しいです。

最も優秀な選手に与えられるとする金栗杯ですが、最優秀の定義が、個人の走りのレベルの高さなのか、優勝やチームに貢献した事なのかが曖昧でした。

金栗杯のほかに、優勝チーム内の最優秀選手賞があれば、納得しやすいと思っていました。

また、金栗杯、ＭＶＰともに各校の監督達も含めた投票制で決まるというシステムも歓迎します。

以前はどうしても密室で決まっているという印象でしたからね。

今大会では青学大・野村選手がダブル受賞。

青学大内には他にも大活躍した選手はいますし、他校の選手で大記録を出した選手もいるので、ＭＶＰ、金栗杯の受賞に全駅伝ファンが納得できる事はないと思いますが、各チームの監督達を含めた投票性で決まったと思うと理解も得られやすいかと。

個人的にはＭＶＰについては、その後の７区で追撃を受けたとはいえ、６区野村選手の走りが優勝の決定打だったと思うので、野村選手で良いと思います。

金栗杯の方は、２区の６５分台、３区の６０分台前半、７区の６０分台といった手強いライバル達の記録もありますが、監督達の投票もあって決まったわけで、指導者達はこういう評価をされているのかと勉強になる気持ちです。

２００４年大会に金栗杯が出来てから納得できない選出も少なからずある賞ですが、今大会からは少し好きになれそうです。

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