こどちゃの舞台版を見に行きました
2015年夏。氷川が今まで見たアニメの中でナンバーワンに好きな作品である「こどものおもちゃ」の舞台版が公開されました。
アニメ版の監督の大地丙太郎氏がこの舞台で演出を務めるとの事で、これはこどちゃファンとして見に行かないわけにはいかなかった。
8月22日、会場のある銀座に向かう途中に杉並区を通ったので、ついでにアニメ版こどちゃの紗南ちゃん達の街のモデルである浜田山に立ち寄りました。
公園のベンチと東屋に立ち寄る。
東屋でハンバーガーを食べて、気分はすっかり羽山。
残念ながら、のわーっ!と紗南ちゃんは現れなかった。
銀座の博品館劇場に到着。
8Fの劇場に向かうエレベーターでは周りが全員女性で、アウェイ感が半端なかった。
チケットを渡して入場すると、やっぱり女性が多かったが、ちらほらと男性も発見し、中には50代、60代くらいの人も。
こどちゃファンなんだろうか?。
だとしたらこどちゃファンの幅広さは凄い。
パンフレットを1200円で購入しました。
中身はなかなか良いが、ページが少ないので割高に感じる。
席に座って開始を待っている間に、相模玲です!と玲くんからのアナウンスがある。
「ご飲食、乳繰り写真の撮影などはご遠慮くださいますようにお願いいたします」
笑った人が数人。
開始前からこどちゃのノリだった。
さらに数分後にまた玲くんからのアナウンスがある。
「ご飲食、リスの持ち込みなどはご遠慮いただきますようにお願いいたします」
後ろの席の人が吹き出していた。
開始の時間になると、辺りが暗くなり、キーンコーンカーンコーンと学校のチャイムが鳴る。
そして名BGM「SANA SAMBA 」が大音量で鳴り響く。
一瞬にして童心に返してくれました。
開始からして流石の演出力。
紗南ちゃんとチャックアップによる時代劇風のノリでスタートし、小学校の学級崩壊のエピソードへ。
この日のキャストは「まろちゃん組」なので紗南ちゃんを演じたのは奥田こころちゃん。
可愛くてちょっと生意気な雰囲気が凄い合っている。まさにリアル紗南ちゃん。
暴れる男子達にサランラップ(シャラップ)と、本人は間違いとは全く思わずに一喝する場面がウケる。
紗南ちゃんと対をなす羽山役は板垣李光人くん。
無口な羽山役を抑え目に演じている。
剛くんたちも登場。
この中では剛くんの動きが素晴らしい。紗南ちゃんの次くらいに活発に動き回っていて、愛の告白を無視されまくるシーンでは客席から笑い声が沸き起こっていました。
剛くん役の伊藤壮吾くんの演技も見事で、この辺りの剛くんは無口な羽山を完全に食っていました。
教師の乳繰り写真の話になると再びチャックアップが登場。
紗南ちゃんと一緒に乳繰りマンボを踊りまくります。
アニメ版ではほんの数秒の乳繰りマンボは、舞台版では大幅パワーアップし、この後にも別のシーンでも再び踊っていました。
羽山の恥ずかしい写真を撮るシーンでは、剛くんの動きが溜めがあって面白い。
原作ではパンツ写真、アニメ版ではスッポン写真だったこのシーン。
この舞台版ではアニメ版と同じようにパンツまでずり下がるスッポン写真でした。
羽山役の板垣くんはタイツのような物?を着用していたんだろうけど、肌色なので遠目には丸出しのように見えてしまう(笑)
原作ではパンツ写真なので、舞台でもそっちで良いような気がするけど。
大地監督、チャレンジャーです。
羽山が大人しくなり、誕生する五味新政権はアニメ版よりもさらに短命でわずか1分58秒。
殺してくれよ、と羽山が紗南ちゃんに言うシーン。
俺の気持ちはわかんねえよ!と感情をあらわにする羽山。
板垣くんの好演です。アニメキャラだとどうしてもリアリティが足りないけど、生身の人間だと迫力があります。
舞台向きのシーンだったんだと感じました。
アニメ版では羽山一家の為に紗南ちゃんがドラマの撮影を頑張る話でしたが、舞台版は大きく変わり、羽山一家の前で直接演じます。
アニメ版の羽山一家は視聴者には「テレビの中でテレビを見ている」状態だけど、舞台版の羽山一家は観客には「舞台の中で舞台を見ている」ような感じになります。
紗南ちゃんは参加せず、クラスメイトに演技を教えて、彼女達にドラマのストーリーをやってもらうという話でした。
ドラマの中のお母さん役は何故か剛くん(笑)
ちなみにドラマの台本を見るシーンで、台本の表紙のタイトルは「海に光る◯」と見えました。
私の席からは遠くて最後の一文字が確認出来なかった。
剛くんたちが熱演していた頃に、紗南ちゃんは羽山を見つける。アニメのように「のわー!」ではなかったけど。
そしてアニメの名シーンの1つのお母さんごっこのシーン。
ねんねんころりよ!と大声で歌い、寝れるか!と羽山に突っ込まれる紗南ちゃん。
アニメにはないシーンだけど、あっても違和感は全くなさそうな感じ。
「あーちゃんママはねあーちゃんを愛しているから頑張ってうんだのよ。だからママの分も頑張って生きてね」
このシーンは原作版やアニメ版の方に軍配が上がる気がする。
原作やアニメでは、紗南ちゃんの膝の上で羽山がそれまでの張り詰めていた物が和らぐような演出がされていて、それがまた感動を呼んでいた。
舞台ではそれはわからない。もしかして板垣くんもそういう演技をしていたのかも知れないけど、観客からは見えない。
「殺してくれよ」のシーンとは逆に、お母さんごっこのシーンはアニメ向きなんだと感じた。
羽山一家の話も終わり、次はついにこどちゃの肝である約束の夏・運命のシリーズの話に。
玲くんと麻子さんのエピソードは次回作でとの事。
全編を通じて、玲くんが事ある毎に、次回作の予感!と叫んでは、紗南ちゃんに、次があるとは限らないよ!と突っ込まれていました。
次回作はどう見てもネタでしょう。
ママがほら貝の笛で紗南ちゃんを呼ぶのはアニメ版と同じ。
でもこのシーン、私の記憶が確かなら、羽山一家のエピソードの途中に入っていた気がする。
ストーリーの順番がアニメとは違ったような気が。
エッセイ「娘と私」が発売され、大騒ぎになる世間。
押し寄せる報道陣(なぜかチャックアップがやっていた)、家の中では玲くんがママに「こんな残酷な事!」と詰め寄る。
アニメ版でも、それまでのこどちゃとはガラッと空気が変わるシリアスな修羅場。
舞台版では出演者の熱演もあり、息がつまりそうになる緊迫した雰囲気。
乱入する羽山。紗南ちゃんに帽子を被せるのは同じだけど、アニメ版とは違い走って逃げる。
安全な場所で帽子を外すと、「暗闇ジェットコースターみたい」とはしゃぐ紗南ちゃん。
すぐに本音を見せて羽山にもたれかかる。
アニメ版17話のラストシーンの再現。
グッと紗南ちゃんを抱く羽山。
アニメ版ではその目力の凄さに鳥肌が立ったシーンだった。
舞台では目で見せる演技は出来ないからか、板垣くんは奥田こころちゃんを抱きながら少し上を見ていた。
全身を使って紗南ちゃんを守ろうとする意思を見せていた気がする。
その後、羽山家に玲くんがやってくる話があった。
いつの間にか家の中にいる玲くん。
どこから入ってきたと突っ込まれる。
舞台上には、家とされている場所にもドア等はなく、出演者はドアを開けたふりをして家に入ったりする。
それを何もないから入ってこれたという、舞台劇を茶化したひねりの効いたギャグだった。
さらに帰りに、何もない所で頭をぶつける。帰りはドアがある設定らしい。
「ないって言ったのに!」と叫ぶ玲くん。山本一慶さんの好演でした。
倉田家で紗南ちゃんの生みの親である坂井佳子と会うママ。
ケーコさんの歳が25と聞いて、僕も25歳と言う玲くん。
玲くんは20歳では?山本一慶さんの歳では?と観客に思わせて笑いを誘う。
緊迫した空気は一度ほぐれ、ママの怒りのビンタが炸裂してまた緊迫する。
こういう緊張と弛緩の切り返しこそこどちゃの真骨頂。
ついに生みの親と対面する紗南ちゃん。
ケーコさんの身の上話を聞く。
「なんで中絶しなかったんですか?」の発言に飲み物を持ってきた玲くんがひっくりこけてぶちまける。
この後、新しい飲み物を持ってきた玲くんは、紗南ちゃんの「トイレでうんこと間違えて?」発言にまたひっくりこける。
さらにもう一回同じパターンが繰り返されてました。
ハードな話題なのに、深刻にはならないのがこどちゃ。
紗南ちゃんが、3月6日だったら倉田サムじゃん、というシーン。
紗南ちゃんたちの後ろに、金髪で鼻の高い人がアメリカンな動きで登場して一言。
セリフを忘れてしまったが、サムでーす、だったか、マイネームイズサム、だったか。
とにかく客席の笑い声が一番大きかったのはこのシーンでした。
サムを演じたのは誰だったのだろうか。田中先生役の平井さん?
この後は約束の夏のクライマックスシーン。
ケーコさんにもう二度と会いませんと伝えるシーン。
そしてママにずっとここにいても良いんでしょ?と尋ねるシーン。
・・・書く事があまりない。
映像的にも音声的にも、アニメ版と比べて違和感が無さ過ぎて。
どっちが良いとか考えるのを忘れていた。
アニメじゃなくて実写。それも目の前で俳優達が演じているって事を忘れさせてくれました。
それだけそのシーンを見る事に没入してしまったというのもあるんだろうけど。
約束の夏が終わり、その後に都庁でのあのキスのエピソードに。
このエピソードの順番には流石に違和感を感じる。
羽山が高所恐怖症だということは舞台版では語られていないが、見に来ている人達はこどちゃファンばかりだからまあ問題ないかと。
紗南ちゃんが羽山に飲み物のめんつゆを持ってくる。
多分ウーロン茶とかをそう呼んだのだろうけど。
羽山にぶっかかるめんつゆ。そしてキス。
時代劇風にチャックアップのメンバーをピコピコハンマーで倒す紗南ちゃんのシーンがあり、その後はエンディングの歌に。
おそらくパンフレットに載っていた「ぶたこちゃソング」。
かなりいい曲だったのでCD化して欲しいです。
この辺では、後ちょっとでこどちゃの世界に浸れる時間が終わるという、かなり寂しい気持ちだったので、明るいぶたこちゃソングには癒される感じでした。
最後に出演者全員が集まり、観客に礼をして去っていった。
と思ったら、また出演者全員が集合しまた礼をする。
終わったと思ったらまだ続くのは、何かアニメ版の最終話を思い出しました。
今度こそ去っていって、こどちゃ舞台版の90分間が終了したのでした。
全体の感想としては、「まさにこどちゃ!」。
舞台でアニメのこどちゃのノリがここまで再現されるとは思わなかった。
前半はストーリーや、舞台版とアニメ版の違いを憶えようと思いながら見ていたけど、後半はもうただひたすら、生で見るこどちゃの世界に浸っていました。
出演者は紗南ちゃんとクラスメイト達は皆、熱演、好演していましたが唯一、伊丹役の西田くんだけはミスキャストですね。
伊丹は髪を立てているキャラなので、外見の特徴が違い過ぎました。
どうせなら西田くんはそのままに、役の方を伊丹から他のクラスメイトにしてしまえば何の問題もなかったと思うけど。
羽山の手下というと伊丹のイメージは確かに強いけど。
玲くん役の山本一慶さん。
アニメ版玲くんの内藤玲さんに声まで似ていて合っていました。
この舞台版のキャストで一番驚いたのが、実紗子ママ役の三石琴乃さん。
三石琴乃さんと言えば声優のイメージがあまりに強く、月野うさぎや葛城ミサトが有名でしょうけど、私としては「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」の菅生あすか役と、「無責任艦長タイラー」のキョンファ・キム役が印象的です。
サイバーとタイラーはこどちゃに次いで好きなアニメなので、そこで声を当てていた三石琴乃さんがこどちゃに関わってくれたのは嬉しいです。
舞台では最初は声を聴くとどうしても他のキャラが浮かんでしまったけど、約束の夏の後半では完全にママでしたね。
舞台版では三屋先生とケーコさん、田中先生と恩田さんを同じ俳優が演じていて、羽山父役の俳優もタモリ風の芸能人と二役やっていました。
アニメ版こどちゃでは、えっこのキャラって同じ声優なの?ってパターンが何度もあったけど、それに近い感覚でした。
チャックアップは、不思議なキャラを出してるなーと思ったら、実在の芸能人だったと後で知りました。
ノリはこどちゃと合っていましたね。
劇中でチャックアップが、アニメ版の小六隊のビタミンラブの男の子バージョンを歌うシーンが印象的でした。
確か歌詞は、女の子の部分が男の子に、最後のキャーがヒューに変わっていました。
他にもマイクールトーイボーイズの部分がマイクールトーイジャンと歌っていたけど、ジャンって何なんだろうか。
他にも歌詞が変わっている場所がありそうだけど、1回聴いただけでは細かい部分はわからず。
久しぶりに聴くビタミンラブは新鮮でした。血迷って自分で男の子バージョンを歌ってYouTubeに公開しようかと思ってしまったけど、歌詞が完全にはわからないので止めておきます。
他の感想として、恩田さんが出てくれたのは嬉しかった。
こどちゃのアニメ版が傑作である理由には、ストーリーに全く関わらないキャラが生き生きしているのも理由だと思う。
個人的には編集の恩田さん、家政婦の志村さん、直澄のマネージャーの前田さんの3人で、こどちゃ3大ストーリーに関わらない名キャラクターだと思っています。
恩田さんとは逆に残念だったのは加村直澄の不在。
直澄くんはこどちゃ全体を語る上では絶対に欠かせない深いキャラだけど、確かに約束の夏のエピソードだと、紗南ちゃんと羽山とママで重要キャラは手いっぱいかも知れませんが。
でもアニメ版でも約束の夏からの登場だし、チョイ役でも出て欲しかった。
1999年に大地監督の講演会を見に行った時に、確か監督は作品作りのテーマは「笑いと命」だと言っていました。
大地監督の根底にある物と、こどちゃの根底にある物は同じような気がすると、その時に思いました。
今回の舞台を見ても、こどちゃという作品と監督の相性の良さは素晴らしく、こどちゃと大地監督の出会いは奇跡的だと感じました。
パンフレットにはこどちゃのアニメ監督を依頼された時に一度断っていたという衝撃的な話も載っていたけど。
こどちゃ放送開始から19年以上。
約束の夏のエピソードに衝撃を受けた当時16歳だった奴は35歳のおっさんになり(俺)、当時は生まれてすらいない人達が紗南ちゃん達を演じている。
それにあの当時こどちゃが大好きだった人で、もうこの世にいない人だって多分いる。
別にオチはないんだけど、何となくそんな事を考えながら劇場を後にしました。
舞台版こどちゃから、人生を楽しく生きていく活力のような物は間違いなくもらえました。
やっぱりこどちゃは大傑作だと改めて感じました。
原作の罪と罰編や人形病編を大地監督の手でアニメにして欲しかったと、以前熱烈に思っていたけど、その思いが再燃しそうになってしまいました。
もう一度こどちゃをアニメ化してくれないかな・・・。
今回の舞台を見ると、大地監督ならばあの当時のノリや雰囲気を残しながら、新しいこどちゃを作れると思うのですけど。
「アニメの話」に戻る