5km14分、10km29分、20km60分と同価値のタイム
例1
1万mのベストタイムが29分10秒の選手が13.2kmを38分30秒で走った。これは力を出し切れたのだろうか?
例2
13.2kmを37分25秒で走るのと、14.0kmを39分24秒で走るのではどっちが凄いのか?
こんな疑問が浮かんだ時に役に立つ物を公開します。
学生長距離において、有力選手と呼ばれる基準は、5kmで14分を切る事が出来るか、または10kmで29分を切る事が出来るかで判断されるのは、多くの人が知る通りです。
もっと長い距離になると20kmで60分を切る事も含まれます。
最近ではハーフマラソンで63分を切る事に基準が移っているような気がしますが、少し昔の90年代頃は、上尾ハーフも話題に上がる事はなく、府中多摩川もハーフではなくて20kmでした。
箱根予選会は現在と同じ20kmで行われていたので、あの頃は明らかにハーフよりも20kmの60分切りが大台でした。
5km14分(1km平均タイム2分48秒)、
10km29分(1km平均タイム2分54秒)、
20km60分(1km平均タイム3分00秒)、
これらを同価値とすると、距離が倍になると1km平均タイムが6秒落ちるという法則が成り立っている事になります。
これを利用して2分48秒〜3分00秒の間を0.01秒刻みで同価値の距離やタイムを調べてみました。
Xの600乗=2
X=1.0011559128537(以降ずっと続くので13桁まで)
この数値を使うと0.01秒刻みでわかります。
長いので別枠に表を作りました。
興味のある方はどうぞ。
5km14分、10km29分、20km60分と同価値の距離とペース表
完全に正確にとは言えませんが、この表を使うと選手が力を出し切れたのかを判断したり、違う距離の区間タイムの価値を比べる事が出来ます。
例1の、29分10秒の選手が13.2kmを走ってその力を出し切ったタイムを計算するならば、まずは表の中の13.2kmに最も近い距離を探します。
表のNo.840の13.19507911kmが最も近いのでこの時の1kmの平均タイム176.40秒を使います。
このペースで13.2kmを走ったとします。するとタイムは2328秒48になります。
つまり38分48秒48です。
これが1万m29分00秒の選手が13.2kmを走った時にほぼ力を出し切れたタイムです。
1万m29分10秒ならば、距離が1万mの1.32倍なので、10秒を1.32倍して13.2秒を38分48秒48に足して、39分01秒68。
近似値を使った計算ですから小数までこだわっても仕方ないので、四捨五入して約39分02秒が1万m29分10秒の選手が13.2kmでほぼ力を出し切ったタイムと考えられます。
したがって38分30秒で走ったならば120点の走りと言えます。
例2の、13.2km37分25秒と14.0km39分24秒の比較のやり方は、まずは両方の距離で10km29分00秒と同価値のタイムを計算します。
13.2kmの方は、例1の解説でやった通り、10kmが29分00秒の選手ならば、13.2kmでほぼ同価値になるのは38分48秒48です。
14.0kmは表の中で最も近いNo.891の176.91秒を使い、そのペースで14.0kmを走れば41分16秒74秒です。
37分25秒は38分48秒48と比べて、13.2kmあたり83.48秒早いです。
ならば10kmあたりでは、1.32で割って63.24・・・秒早いという事になります。
これを29分00秒から引きます。
13.2km37分25秒は、10kmで言えば27分56秒ちょっとという事になります。
39分24秒は41分16秒74と比べて、14km当たり112.74秒早いです。
ならば10kmあたりでは、1.4で割って80.52・・・秒早いという事になります。
これを29分00秒から引いて、27分39秒ちょっとという事になります。
13.2kmを37分25秒で走る事と、14.0kmを39分24秒で走る事を比較すれば、14.0kmを39分24秒で走る方が凄いという事になります。
その凄さは具体的には10kmあたり17秒程度早いと言えます。
選手がこのHPを見ていることはないと思いますが、この表は区間タイムを設定する時にも使えます。
例えば1万mのベストが29分20秒の選手が8.5kmの区間を走るとします。
表の中で8.5kmに最も近いのはNo.459の172.59秒です。
このペースで8.5kmを走ると、タイムは24分27秒015になります。
これが10km29分00秒とほぼ同価値のタイムです。
1万m29分20秒の選手ならば、20秒を0.85倍して17秒。これを足して、約24分44秒が、1万m29分20秒の選手が8.5kmを走る時に設定すべきタイムという事になります。
ただしコースの高低差や気象条件は考慮する必要がありますが。
・3大駅伝の各区間のタイム
5km〜20kmの間に収まっている区間の5km14分、10km29分、20km60分と同価値のタイムを計算してみました。
出雲駅伝
1区 8.0km 約22分57秒 (22分56秒56)
2区 5.8km 約16分22秒 (16分21秒824)
3区 8.5km 約24分27秒 (24分27秒015)
4区 6.2km 約17分33秒 (17分33秒132)
5区 6.4km 約18分09秒 (18分08秒896)
6区 10.2km 約29分37秒 (29分36秒534)
全日本大学駅伝
1区 14.6km 約43分08秒 (43分08秒288)
2区 13.2km 約38分48秒 (38分48秒48)
3区 9.5km 約27分29秒 (27分28秒82)
4区 14.0km 約41分17秒 (41分16秒74)
5区 11.6km 約33分53秒 (33分53秒248)
6区 12.3km 約36分02秒 (36分02秒217)
7区 11.9km 約34分49秒 (34分48秒569)
8区 19.7km 約59分03秒 (59分03秒439)
箱根駅伝
4区 18.5km 約55分18秒 (55分17秒605)
高校駅伝の3区と4区も計算してみました。
3区 8.1075km
4区 8.0875km
10km29分00秒と同価値
3区 約23分16秒 (23分15秒94935)
4区 約23分12秒 (23分12秒344)
10km30分00秒と同価値
3区 約24分05秒 (24分04秒59435)
4区 約24分01秒 (24分00秒869)
全国大会、地区大会ともに1区の29分切りや30分切りには注目されますが、3区と4区だと上記のようになります。
このタイムを切っても大台突破という気がしないのが難点ですが。
・小難しい解説
この5km〜20kmの間で、距離が2倍になると1km平均タイムが6秒落ちるのは、これは以下の言い方が出来ます。
「X=2の時に距離がX倍になると6秒落ちる」
この場合Xは当然2です。
では次に10km(1km平均タイム2分54秒)を基準に、1km平均タイムを3秒落としつつも、同価値を維持する適正な距離を考えます。
何となく10kmの1.5倍のような気がしてしまうけど、答えは14.1kmちょっとです。
この数値をさらに1.41・・・倍すると、ほぼ20kmになるからです。
2分54秒 たす 〇 たす 〇 =3分00秒ならば、
10km かける △ かける △ =20kmにならないといけません。
(実際には細かい小数が入るのでぴったり20kmにはならないけど)
10km29分00秒からペースを1kmあたり3秒落としつつ同価値になるのは、14.1kmちょっとを41分43秒辺りで走る事、という事になります。
これは以下の言い方が出来ます。
「Xの2乗=2の時に距離がX倍になると3秒落ちる」
マイナスとマイナスをかけるとプラスになるという意見もあると思いますが、陸上競技でマイナス14kmを走るとかはありえないので、そこはツッコマないでいただきたいと思います。
指数の2はどこから来たのかというと、この場合は2回かけて2倍になるのでXの2乗=2です。
6の中に3は2つあります。3+3。これは2つの同じ数を足しています。だから2つの同じ数をかけて2倍になるわけです。
それでXの2乗=2になるわけです。
6の中に1は6つあります。1+1+1+1+1+1。
つまりこれはXの6乗=2が解ければ2分55秒、2分56秒等の1秒刻みがわかる事を意味しています。
Xの60乗=2が解ければ0.1秒刻みがわかります。
そしてXの600乗=2の計算が出来れば0.01秒刻みまでわかり、12秒間を1200段階にわける事が出来ます。
ここまで細かくわかれば、5kmから20kmの間に収まっている、出雲全区間、全日本全区間、箱根4区の区間タイムの価値を知るための目安として役に立つと思いました。
もちろん、レース展開や気象条件、コースのアップダウン等の影響もあるのであくまで目安ですが。
以前からこの10km29分と同価値のペースを求める理屈には気付いていたのですが、肝心の計算が出来ませんでした。
私は駅伝のタイム計算が好きなだけで、別に数学に強い訳ではないのです。
Xの2乗=2ならばルート2だとわかりますが、Xの3乗=2になるともう理解不能でした。 家庭用の計算機では出来ません。
600乗なんてとても無理。
最近、累乗根の計算が出来るサイトを見つけたので、そちらの力を借りてやっとXの数値がわかり、10年来の謎が急に解けたのでした。
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