1996年大会の中大について

今年の箱根駅伝。

中大のいない2017年大会には違和感がありました。

まさかあの中大が予選落ちする日が来るとは思いませんでした。

中大が最後に優勝した1996年大会をここで少し振り返ってみたいと思います。



中大が32年ぶりの総合優勝を達成した96年大会。

その大会を含めた95年〜96年シーズンは、私が駅伝の面白さに目覚めた年でした。

ここにも少し書いてありますが、全日本で逆転負けをした中大のエース・松田選手の区間タイム58分43秒が、実はかなり良い記録であると知った時に、駅伝の奥深さと面白さを感じたのです。

そして、全日本で負けた中大が、箱根では見事に優勝した事にも、スカッとした爽快感を感じて、より一層駅伝に興味を持つようになりました。

その後数年間は中大ファンとして、中大を応援していました。

中大で記録会があると聞けば八王子まで見に行き、国体チャンピオンの杉山選手が入学すると聞けば小躍りしたものです。
(余談ですが、私は杉山選手とため年世代なので思い入れは強かった)



中大の今のところ最後の栄光が96年大会ですが、一般的にこの年の箱根駅伝を語ると必ず話題に上るのが、4区で優勝候補の山梨学大と神奈川大が途中棄権したという話です。

そのせいで中大の優勝を棚ぼたのように思っている方も多いような気がします。

確かに、94年、95年を連覇した山梨学大と、97年、98年を連覇した神奈川大が棄権したのならば、そのどちらかが優勝していれば3連覇になるので、後の時代に駅伝ファンになった人が過去の記録表を見ると、そう感じてしまうのも無理はないかも知れません。


しかし、結論から言うと、あの年の中大は優勝候補筆頭と言っていい存在で、優勝は妥当な結果でした。



ここに月刊陸上競技96年1月号付録の箱根駅伝観戦ガイドがあります。




駅伝はデータで見ると面白いと教えてくれた1冊でした



この本には5000m、10000m、20kmの11月26日時点のチーム内上位10人の平均タイムが載っています。

96年大会は、3連覇を目指す山梨学大、全日本で優勝した早大、全日本でトップと僅差の2位に入った中大、このシーズンに急激に台頭してきた神奈川大。この4チームが優勝候補と言われていました。

その4強の各種目の平均タイムの全15チーム内の順位です。

山梨学大は5000m2位、10000m2位、20km3位。

早大は5000m3位、10000m8位、20km11位。

神奈川大は5000m8位、10000m12位、20km4位

そして中大は5000m
1位、10000m1位、20km1位



中大は全日本では早大に負けたとはいえ、その差はわずか13秒。

総合力で勝る中大にとって、箱根では早大はそれほど怖い存在ではなかったでしょう。

神奈川大も20kmの力はあっても総合力は中大に劣り、1万m28分台ランナーもゼロであり、エースの破壊力もありませんでした。

観戦ガイドによると、目標も5位以内と控えめでした。

神奈川大には前回5区区間賞の近藤選手がいましたが、中大にも前回区間3位の尾方選手がおり、対中大を想定した時には近藤選手は切り札にはなり得ませんでした。



消去法で中大最大のライバルは山梨学大と考えるべきだと思います。

総合力も高く、マヤカ選手と中村選手という、史上最強クラスのツートップの前には、中大のダブルエースである松田選手、榎木選手でも合計2分は負けてしまうでしょう。

中大は残る8区間でその2分を埋め合わせる事が出来るか?

山梨学大の視点で言えば、2分の貯金でどこまで逃げられるか?

96年大会最大のポイントはそこにあったと思います。



しかしその山梨学大も、本番の1区で区間最下位、2区の大黒柱のマヤカ選手も前年よりも2分以上遅い区間タイムを記録し挽回ならず。

マヤカ選手は本来ならば中大に対して貯金を作らなければいけないのに、1分程度の借金になってしまう誤算がありました。

結局4区の山梨学大の途中棄権がなくても、中大は山梨学大に勝っていた可能性が極めて高いでしょう。



今の私はもう中大ファンではなく、チームを問わず、良い選手の良い走りを見たいと思っていますが、今度こそ棚ぼた扱いされないで中大に勝って欲しいという気持ちも少しあります。

96年大会が終わってからもう21年以上が経ちました。

今年度の中大の最上級生は、あの96年大会の年度に生まれた人達です。

一度落選したチームは負の連鎖に苦しむ事が多いと聞きますが、今度こそ、今年度だからこそ中大の意地を見せて欲しいと思います。





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