東洋大・相澤選手
今大会の注目度ナンバーワンランナーと言えば、間違いなくこの相澤選手でしょう。
前々回の箱根デビュー戦でいきなり2区を区間3位で走り、タイムも67分18秒と言う凄さ。
前回は4区で区間新記録を出し、区間2位に1分43秒の差をつける強さを見せました。
今シーズンは更に走力に磨きがかかり、全日本の3区では桁外れの爆走を披露。
10人を抜き去り、抜いていった選手に全く背後に付かせない走りは、かつての山梨学大・モグス選手や、96年箱根2区の早大・渡辺選手を彷彿とさせるものでした。
11.9kmを33分01秒で走り切り、10kmに換算すると27分44秒になり、1万mの自己ベストを大きく超えるタイムですが、更にこちらの考え方で1.9kmの距離の差が与えるペースダウン分も考慮すると、10kmならば1万mの日本記録にも匹敵する約27分29秒相当の価値の記録と言う事になります。
日本人学生選手としては、全日本2013年大会の4区で駒大・村山選手が出した14km39分24秒(同様の考え方で10kmにすると約27分39秒)や、早大・大迫選手の持つ1万mの日本人学生最高記録27分38秒を超えるタイムとなります。
相澤選手は当然2区を走ると思いますが、期待出来るタイムはどれくらいでしょうか。
駅伝ファンとして、超えて欲しいタイムをいくつかあげてみました。
67分
日本人では過去4人しか達成していない67分切り。このタイムを切る事が出来れば、箱根駅伝の平地区間においては史上最強レベルの選手と言う事になります。
しかし、今の相澤選手の走力で66分59秒では物足りないという気がしてしまいます。
66分45秒
現日本人最高記録である66分45秒が一番現実的なターゲットでしょう。
更新できる可能性は極めて高いと思います。
日本人最高記録は66分48秒→66分46秒→66分45秒と小刻みに更新されてきている記録なので、相澤選手には大幅な更新を期待したいです。
先日雑記に書いた66分45秒の適正ペースだと以下のようになります。(過去の日本人69分切り96例の平均ペース配分)
横浜駅前 23分04秒020
横浜駅前〜権太坂 20分28秒674
権太坂〜戸塚中継所 23分12秒305
権太坂 43分32秒694
2区区間タイム 66分44秒999
最近流行りの中盤重視スタイルだとこんな感じです。(16年大会〜19年大会の日本人69分切り26例の平均ペース配分)
横浜駅前 23分05秒791
横浜駅前〜権太坂 20分24秒997
権太坂〜戸塚中継所 23分14秒210
権太坂 43分30秒788
2区区間タイム 66分44秒998
序盤を抑え気味な現日本人最高記録保持者の塩尻選手のペースです。
横浜駅前 23分17秒
横浜駅前〜権太坂 20分24秒
権太坂〜戸塚中継所 23分04秒
権太坂 43分41秒
2区区間タイム 66分45秒
66分40秒
半端なタイムに見えますが、実は66分40秒=4000秒。
そして、現在の2区日本人歴代トップ3は
順大・塩尻選手 4005秒(66分45秒) 2019年
順大・三代選手 4006秒(66分46秒) 1999年
早大・渡辺選手 4008秒(66分48秒) 1995年
となっています。
渡辺選手が2区初の67分切りを達成してから、今大会で四半世紀の時間が経ちますが、1995年大会〜2019年大会の25大会で、4000秒台が3例、4010秒台は2例出ていますが、4000秒を切る記録は留学生を除いて出せていません。
4000秒は単にキリが良いだけではなく、日本人選手にとって現実に壁となっています。
今の相澤選手のパワーならば、この壁もぶち破れそうな気がします。
66分前後
相澤選手の設定タイムは、陸上雑誌によると66分30秒だとか。
しかし、ポテンシャル的にはもっと上の記録も狙える気がします。
1999年発行の「箱根駅伝を知り尽くす」という本に、2区で2度の67分切りを達成した渡辺選手のインタビューがあり、そこで渡辺選手は、1万m28分前後の選手が自分自身を追い込んでいかないと6分台は出ないタイムだとコメントしています。
渡辺選手は3年時の1万mは28分07秒、箱根2区は66分48秒。
4年時は1万m27分48秒、箱根2区は66分54秒。
確かに67分を切る為には、28分前後の力が必要になるようです。
三代選手が4年時の1999年大会で、66分46秒を出した時の1万mのベストタイムは28分30秒ですが、翌年の2000年には27分59秒を出しており、箱根を走っていた当時は数字に表れていなかっただけで、学生時代から事実上はこれくらいの走力を持っていたのでしょう。
2011年大会で当時2年生の東海大・村澤選手が66分52秒を出した時の1万mのベストは28分44秒ですが、在学中に28分00秒、27分50秒とどんどん記録を伸ばしており、こちらも2区で66分台を出した時期には、すでに事実上の1万mの走力は28分前後に達していたと見るべきでしょう。
2019年大会で塩尻選手が66分45秒を出した時の1万mのベストタイムは27分47秒。
過去の2区66分台ランナーと1万mのタイムの関係を見ると、やはり渡辺選手のコメントは的を得ていると思います。
そして、1万mで28分を少し切るくらいの走力を持つ選手がその力を出し切れば、2区で67分を少し切るくらいのタイムを狙えるとすると、27分30秒クラスの選手が力を出し切れば66分を切る事すら可能になる計算です。
相澤選手には是非とも区間記録を狙って欲しいですね。
モグス選手が残した66分04秒と言う記録は、日本人学生には更新は難しいと思っていましたが、ついに挑めるレベルの選手が出てきたのは嬉しいです。
2区の区間記録を留学生から奪い返す事が出来たら、それは箱根駅伝史上に残る名シーンとなるでしょう。
相澤選手には、史上最強と言われたモグス選手の記録に真っ向勝負で挑んで欲しいです。
66分04秒の適正ペースは以下のようになります。(過去の日本人69分切り96例の平均ペース配分)
横浜駅前 22分49秒851
横浜駅前〜権太坂 20分16秒096
権太坂〜戸塚中継所 22分58秒051
権太坂 43分05秒947
2区区間タイム 66分03秒998
中盤重視スタイル。(16年大会〜19年大会の日本人69分切り26例の平均ペース配分)
横浜駅前 22分51秒604
横浜駅前〜権太坂 20分12秒456
権太坂〜戸塚中継所 22分59秒937
権太坂 43分04秒060
2区区間タイム 66分03秒997
終盤重視のモグス選手の現区間記録ペースです。
横浜駅前 22分56秒
横浜駅前〜権太坂 20分22秒
権太坂〜戸塚中継所 22分46秒
権太坂 43分18秒
2区区間タイム 66分04秒
66分前後には他にも、66分08秒=日本人オールスター記録もあります。
これは2区66分台ランナーである、渡辺選手の序盤(鶴見中継所〜横浜駅前)23分01秒、塩尻選手の中盤(横浜駅前〜権太坂)20分24秒、三代選手の終盤(権太坂〜戸塚中継所)22分43秒を合計したタイムです。
66分台を記録したレジェンドたちはペース配分が結構個性的です。
3人の最高タイムを合わせると66分08秒になりますが、1人のケニア人が残した区間記録には4秒届いていません。
もちろん区間新記録を出すのがベストな結果ですが、相澤選手には最低でも序盤中盤終盤の内のどれか1つを5秒以上更新して欲しい所です。
66分04秒の区間記録を上回る事が出来れば、夢の65分台も目前。
ついでに65分55秒を切れるかにも注目したいです。
これは90年代にマガジンでやっていた漫画「マラソンマン」の記録です。
作中で日本人選手が箱根2区を65分55秒で走るシーンがありました。
現実の90年代の箱根駅伝の常識では、まず無理な記録でした。
そんな記録出るか!
お前はギタヒか?
多くの駅伝ファンが漫画に向かって突っ込んだ事でしょう(多分)。
現実が漫画を超える瞬間を見てみたいですね。
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